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第1特集
1990年代の“鬼畜系”からSNS時代の“新・残酷系”へ

過熱する過激表現かマンガ不況の救世主か「残酷表現」の現在地

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近年、残酷表現が含まれるマンガが増えたと感じることはないだろうか? 飛び散る血しぶき、切断面がむき出しの腕、引きずり出される内臓。いつから残酷表現は「どこにでもあるもの」になり、当たり前に受容されるようになったのか。コラムニスト、物語評論家らが解説する。

劇画→スプラッター→鬼畜系…「過激表現」の変遷

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中国でも公開され、話題となった『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。(写真/Liu Junfeng/VCG via Getty Images)

厳密なレーティングがある映像作品と異なり、マンガや雑誌は「18禁」以外誰でも購入できるため、出版側の自主規制による部分が大きいのだが、いまや少年少女をターゲットにした作品にも過激な描写が満載だ。

たとえば「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、累計発行部数2億2000万部(2025年7月現在)を突破した『鬼滅の刃』(2016~20)。多くのキャラクターが容赦なく痛々しいけがを負うか、苛烈な殺し合いの末に命を落とす。大人でも目を背けたくなるグロテスクな描写が繰り返し登場するが、小学生の間にも大フィーバーを巻き起こした。

とはいえ近年の少年マンガが突出して過激化しているわけではない。サブカルチャーに詳しいコラムニストの更科修一郎氏は「直近20年間、残酷表現自体は大きく変わっていない」と語る。「むしろ、残酷表現は昔のほうが過激でした。今はそれだけでは売れませんから」(更科氏)

さかのぼれば1960~70年代、「劇画ブーム」があった。性や暴力、裏社会などシリアスなテーマを扱う写実的な劇画が大人の娯楽として大流行。「ビッグコミック」(小学館)、「週刊漫画アクション」(双葉社)などの青年向けマンガ誌が続々と創刊され、さいとう・たかを『ゴルゴ13』(1968~現在)や小池一夫・小島剛夕『子連れ狼』(1970~76)といった数々のヒット作が誕生した。

リアリズム重視で暴力・性描写を正面から描く劇画は学生運動やベトナム戦争など当時のすさんだ世相を反映し、実録ヤクザ映画やロマンポルノが人気だった映画界と並行して過激な作品が量産される。

1980年前後はビデオレンタルの普及から、『悪魔のいけにえ』(1974)や『13日の金曜日』(1980)などのスプラッター・ホラーブームが到来。日本のマンガ界でも日野日出志や伊藤潤二らホラー作家が人気を得る中で、「週刊少年ジャンプ」のような少年マンガでも人体破壊描写を積極的に取り入れたアクションものが現れた。さらにその後1990年代には「猟奇殺人」や「シリアルキラー」を題材にしたサスペンスやホラーが流行する。

「残酷表現のピークは1980~90年代です。残酷表現自体が作品の魅力と見なされ、ストーリーは二の次でバイオレンス描写が延々と続くマンガでも売れました」(更科氏)

特筆すべきは、1990年代に流行した“鬼畜系”ジャンルだ。“鬼畜系”とは反社会的な行動や凌辱、残虐ともいえる描写が含まれる作品のこと。1995~1999年までに全4巻が発行された鬼畜系ムック『危ない1号』(データハウス)は「妄想にタブーなし」を謳い、題材はドラッグ・強姦・死体・殺人など〝なんでもあり〟。モラルもへったくれもなかったが、第1巻は発行部数約15万部のベストセラーとなり、その露悪的なコンテンツは一定の需要があることを示した。

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