――実写映画の興行リスクが跳ね上がり、世界的なエンタメの主戦場は「IP(知的財産)ビジネス」へと移行する中で、アニメーション映画は大きな稼ぎ頭となっている。ディズニー、ユニバーサル、ソニー、パラマウント&ワーナーという〝世界4大映画スタジオ〟の今を、それぞれのアニメ戦略から読み解く。
(イラスト/Yo Ueda)
大衆を盛り上げるエンタメ特化型ユニバーサル(イルミネーション)
●[設立年]1912年(ユニバーサル・ピクチャーズ)、2007年(イルミネーション)
●[主なIP]「怪盗グルー/ミニオンズ」シリーズ、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」シリーズ、『SING』、『ジュラシック・ワールド』
●制作拠点をフランスに置くなど徹底した予算管理を行い、説教くささを排したアトラクション的娯楽作に特化。任天堂など外部IPの取り込みに柔軟で、テーマパークとの相互補完で快進撃を続ける。
ポテンシャルだけは抜群◉パラマウント&ワーナー
●[設立年]1912年(パラマウント・ピクチャーズ)、1923年(ワーナー・ブラザース) ●[主なIP]『バットマン』、『スーパーマン』(DCブランド)、『ハリー・ポッター』、『トランスフォーマー』、『スポンジ・ボブ』 ●スタジオ統合による再編の最中。強力な自社IPを多数保有しながらも、劇場大作アニメとしての有効活用や新たな戦略構築はこれからの段階。今後の思い切った方針転換もあり得るか?
“オタク”の力で世界を獲る!◉ソニー
●[設立年]1989年(コロンビア・ピクチャーズを買収)
●[主なIP]『スパイダーマン』、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』、『鬼滅の刃』、『チェンソーマン』(海外配給)
●クランチロールを武器に日本アニメのグローバル配給を強化。独自の革新的映像表現やアジア系カルチャーの水平展開で差別化し、王道メジャーとは一線を画す「巨大なニッチ戦略」で急成長を遂げる。
膨れ上がった予算で疲弊気味!?◉ディズニー・ピクサー
●[設立年]1923年(2006年にピクサー・アニメーション・スタジオを買収)
●[主なIP]「マーベル(MCU)」シリーズ、『スター・ウォーズ』、『トイ・ストーリー』、『ズートピア』、『アナと雪の女王』
●巨額のバジェットを投じ、確立された自社IPの続編や実写化で手堅く利益を回収。メッセージ性と大衆性のバランスを模索する中、ウェブトゥーン提携など新たなIP確保の動きも見せる絶対王者。
かつてハリウッドのドル箱といえば、巨額の制作費を投じた実写のアクション大作やヒーロー映画だった。しかし現在、世界の映画ビジネスを分析する上で、最も注視すべきは「アニメーション戦略」だろう。世界で約13億ドルの興行収入を叩き出した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や、中国国内の売り上げだけで驚異的な記録を打ち立てた『ナタ2』など、映画興行収入ランキングの上位にアニメーション作品が並ぶのは今や日常の光景だ。
そして、今夏もユニバーサル(イルミネーション)の『ミニオンズ&モンスターズ』や、ディズニー(ピクサー)の『トイ・ストーリー5』といった世界的な超大作の公開が控えており、映画ビジネスの行く末はアニメが握っていると言っても過言ではない。
映像業界向けのビジネスメディア「Branc」の編集長・杉本穂高氏は「IPの重要性はもはや言うまでもなく、今年5月にカンヌ国際映画祭で行われた講演において、ソニー・ピクチャーズのプレジデントは『今、IPではない作品を劇場展開するのは極めて困難である』という趣旨の発言をしていました。IPを育て、複層的に展開していくという点では、実写よりもアニメーションのほうが有利だと思われるため、各映画スタジオがアニメーション作品に注力せざるを得なくなっています」と話す。
現代の映画興行において、ゼロからオリジナルの実写映画をヒットさせるハードルは絶望的なまでに高い。一方で、アニメーションはキャラクターグッズやゲーム、テーマパーク展開など、多角的なメディアミックスへの水平展開が比較的容易で、一度確立したIPは長年にわたり複層的な収益を生み出し続ける。
こうした中で、ハリウッドを中心とする映画界は従来のメジャーから、実質的な「4大映画スタジオ」による覇権争いが起こっている。アニメ界の絶対王者として君臨するディズニー・ピクサー、「ミニオンズ」シリーズやマリオ映画で快進撃を続けるユニバーサル、日本産アニメを世界へと送り出すソニー・ピクチャーズ、そして、今年パラマウントが電撃買収を果たしたワーナー・ブラザースだ。
本稿では、これら4大映画スタジオのアニメーション戦略を俯瞰し、映画産業の行方を見通していく。