サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > グラビア写真家を批評する【1】/【篠山紀信】は本当にスゴいのか?

――篠山紀信、渡辺達生、野村誠一……。グラビア写真界にはそのような大御所カメラマンがいるが、やはり一般的には被写体であるアイドルやタレントのほうに目を向けられることが多いだろう。では、その世界で活躍する写真家の“仕事”は、実際のところ“写真”としてどう評価できるものなのか──。グラビアカメラマンの真価をマジメに問う!

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誰もが知るグラビアカメラマンといえば、やはり篠山紀信だろう。現在、76歳である。

 グラビア写真には、当然ながらそれを撮るカメラマンがいる。だが、グラビア写真の主役は言うまでもなく被写体であり、例えば篠山紀信のような大御所でなければカメラマンの名前が前面に出ることは少ないし、その作風が批評的に論じられることもまれだ。それは、グラビア写真というものが、いわゆる芸術写真と比べて一段劣る、商業写真とみなされていることも関係していよう。本稿では、そんな評価されづらいグラビアカメラマンに焦点を当てたい。

 まず、そもそもグラビア写真というジャンルはどのように出来上がったのか?写真や現代アートに詳しいライターの山内宏泰氏によれば、「グラビア写真は日本の雑誌文化とともに、日本だけで特異な発展をしたガラパゴス・カルチャー」であり、それは「篠山紀信によって“発明”された写真のジャンル」だという。

「グラビア写真の発表の場は、最初は男性向け週刊誌でした。その嚆矢が1964年創刊の『平凡パンチ』(平凡出版、現・マガジンハウス)や66年創刊の『週刊プレイボーイ』(集英社)で、74年には『GORO』(小学館)などが続き一気に市場が拡大。さらに80年代以降は、『週刊ヤングジャンプ』(集英社)や『週刊ヤングマガジン』(講談社)といったマンガ誌もグラビア掲載の場として名乗りを上げます。このように毎週膨大な数の雑誌が発刊されるのは日本くらいですから、グラビア写真は日本でしか成立し得なかったジャンルといえます」(山内氏)

 そして、60年代後半~70年代にそれらの雑誌で女性の写真を大量に撮影していたのが篠山紀信であり、彼の撮り方がそのまま現在に至るまで、グラビア写真のフォーマットとして脈々と継承されているという。では、篠山のグラビア写真の何が画期的だったのか? ひとつは、被写体と読者の距離を縮めたことだという。

「篠山さんは『GORO』連載の『激写』シリーズを撮り始めたときに、『“隣のミヨちゃん”を脱がすような感覚で写真を撮っている』という物言いをしていました。要は、以前からグラビア的な写真は当然あったのですが、それはキメキメの女性をフレームに収めただけのものだった。でも、自分の近所に住んでいる女の子と仲良くなって、その子をちょっと脱がしてみるような感覚に読者が浸れる写真を、篠山さんは志向したのです」(同)

 また、篠山の凄みは、“旬”の女性を撮っていることにもある。つまり、被写体選びの嗅覚が異常に鋭いのだ。

「篠山さんはよく『僕は50年間、時代の先頭の一番いい席に座って物事を眺めてきた。ただそれだけだ』と言っています。写真とはそういうものだと思うし、事実、彼は山口百恵、松田聖子、宮沢りえ、最近ではAKB48など“時の人”を誰よりも早く撮っています」(同)

 さらに、被写体を撮る際、篠山は自分の“色”を一切出さない。自身の強烈なキャラクターとは裏腹に、その写真にはさほど特徴がないのだ。強いていえば、画面がクリアでフラットであることくらい。例えば、いずれも91年に発売され、日本でのヘアヌード解禁の契機となった樋口可南子の写真集『water fruit』(朝日出版社)と、宮沢りえの写真集『Santa Fe』(同)を見比べてみよう。前者がモノクロ写真で成熟した女性の魅力を醸しているのに対し、後者は自然光の下で輝く18歳のトップアイドルを活写。どちらが篠山の作風かと問われても、どちらともいえないし、どちらもそうともいえる。

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