サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 角川春樹×中森明夫 対談
第1特集
時代の“今”を切り取る対談集――THE NEWSMAKER DIALOGUE

角川春樹82歳 やはり本日も健在なり Interview by 中森明夫

+お気に入りに追加

――永遠の風雲児が語る「角川三人娘の真実」「スターを見出す力」「原作改変問題」「六度目の結婚」、そして「自らの不思議な力」「引退と死」。やはりこの男の話は面白い……。

2405_Z8A0230_bl_520.jpg
(写真/石田 寛)

作家でアイドル評論家の中森明夫氏から、旧知の仲であるサイゾーの代表に連絡が入った。

「角川春樹さんにインタビューさせてよ。自分も還暦を過ぎて、自身の活動の総括をしたくなって、昨年末に『推す力 人生をかけたアイドル論』(集英社新書)という本を出した。そこでも書いたけど、自分の青春時代における、角川映画と角川三人娘の存在は特別。特に薬師丸ひろ子と原田知世という、神がかったアイドル女優を生み出したことについては、 “青春の答え合わせ”として、角川さんに聞きたいことがあるんだ」

至極私的な動機である。だけど、確かに今、角川春樹氏に会いに行くのは面白そうだ。

松本零士、篠山紀信、小澤征爾……ここにきて、一時代を築き、時代を変えたクリエイター、パイオニアたちが傘寿を超えて次々この世を去っていく中、現在82歳の角川氏は、どうしているのだろうか。

周知の通り、角川氏は角川書店時代の70年代中期から『犬神家の一族』『人間の証明』『セーラー服と機関銃』『時をかける少女』『天と地と』……小説と映画のメディアミックスであまたのヒット作を世に送り出し、時代の寵児となった。また、映画を通して、多くのスターを輩出してきた。私生活では6度の結婚、1993年には逮捕もされ、角川書店社長の座を追われているが、どんな状況に置かれても、後ろを向かずラディカルな言動を貫いてきた。「ワルと無垢が同居している」。故・堤清ニがこう評したのも納得の異端児だ。

そんな角川氏は、今でも日々オフィスに出社し、自社の出版物のゲラを読み、赤字を入れているという。取材当日も、生気に満ちた角川氏が鋭い眼光で出迎えてくれた。

「最近は取材を断っているんだけど、今日は特別。中森くんが相手だというから」

角川氏は柔和な表情になると、ゆっくり近況を語りだした。

命の危機を乗り越え 現在、内臓は65歳

2405_Z8A0179_bl_320.jpg
中森明夫(なかもり・あきお)
アイドル評論家/作家。1980年代からアイドルほか、サブカルチャー全般を批評対象として執筆。「おたく」という言葉の生みの親。『東京トンガリキッズ』(角川文庫)『アイドルにっぽん』(新潮社)『午前32時の能年玲奈』(河出書房新社)『アイドルになりたい!』(ちくまプリマー新書)など著書多数。昨年11月には、アイドル評論40年の総決算として『推す力 人生をかけたアイドル論』(集英社新書)を上梓した。
(写真/石田 寛)

角川春樹(以下、角川) 実は昨年、入院して、死にかけていたんです。医者に「あと1週間治療が遅かったら手遅れだった」と。アミロイドーシスという厄介な病気と感染性大動脈瘤、ここに心不全が重なったら余命半年だったと。

中森明夫(以下、中森) そんなふうには見えませんね。

角川 自分でも驚いています。初めCT検査したときは、内臓のあちこちに異常があったけど、1カ月ほどたつとすべてが消えているわけ。内臓の状態は65歳レベルで逆に若返った。すべてがパーフェクト、主治医も「角川さんは不思議な体だ」と。ただ、自分ならあり得るかもしれないなという思いはありました。

中森 過去、地震を止めたり、宇宙人とコンタクトしたりと数々の神秘体験をされていますが、やはり驚くべきドラマが、こうやって現在進行形で起こっている。そんな春樹さんに、私はアイドル評論家として、確認したいことがあるんです。

角川 なんでも聞いてください。

中森 まず角川映画において、1976年の『犬神家の一族』があって、そのあと『人間の証明』(77年)、『復活の日』(80年)と、ミステリーやSFの大作で一大ムーブメントを起こしたわけですが、そこから80年代に入ると「角川三人娘」に代表されるアイドル路線に転じたのは、どういうことだったんですか?

角川 理想論で言えば、そのまま大作主義でいきたかった。だけど現実として、『戦国自衛隊』(79年)や『復活の日』は膨大なお金がかかり、利益を圧縮した。その元を取るために、経営者としての判断が必要となった。お金をかけずに、それまでの日本映画では定番だった2本立てのものにしようと。

中森 そんな中で、薬師丸ひろ子主演の『ねらわれた学園』や『セーラー服と機関銃』(ともに81年)がヒットし、アイドル映画の先駆けになった。アイドルを主演にして映画を作ろうという発想は、どこから来たんですか?

角川 いい女優を選んだだけなんです。薬師丸の場合は、うちですでに実績があったし、アイドル化したのは結果論ですね。

中森 スーパーアイドルでしたからね。当時の彼女の人気を表すエピソードとして、『セーラー服と機関銃』の舞台挨拶を大阪・梅田の劇場でやろうとしたとき、パニックになって、機動隊も出動して、舞台挨拶どころか上映も中止になったという出来事がありますよね。大阪府警からも「薬師丸さんは許可なく大阪に来ないでくれ」と言われたと。そんな彼女は、『野性の証明』のオーディションで13歳のときに選ばれたわけですが、選考理由はなんだったんですか。

角川 ひろ子の写真を見たときのあの異様な目の光、強さ、そこに引きつけられたんです。本人を呼んでみたら写真と違って、ごく普通の中学生。そのとき、きっとこの子は、実物よりもフィルムになったほうがインパクトがある子だという直感が働いた。フィルムの持つ不思議さなんだけども、普通の子が独特のきれいさを放つことがあるんですよ。その逆もあるし。

中森 確かに、あれだけの人気だったのに、テレビにはあまり出しませんでした。普通の状態を見せないようにということだったんですかね。

角川 普通だけに、見ている側との距離感が近い。距離感がない分、スター性を保つために、垣根を作ってあげる必要があったんです。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ