サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > タブーな映画・ドラマガイド【5】/隠蔽された民主化の歴史を問う作品たち

――近年『新感染』『神と共に』など、国内でもメガヒット作を連発している韓国映画。そして、『冬のソナタ』ブームから15年近く経った現在も根強いファンをつけている韓流ドラマ。傑作揃いの韓国エンタメ作品群から、韓流の目利き達が独特の視点で映画・ドラマの深奥を語る。

■キム・ソンフン(記者/助監督)

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韓国映画専門メディア「CINE21」の記者。2008年から現在まで同メディアにて取材記者活動をする。映画『境界』(監督:チャン・リュル、07年)、『サラン』(監督:クァク・キョンテ、07年)で助監督も務めている。

 韓国国内で「タブー破りの映画」といえば、政治や社会問題を取り扱ったものが特に、人気作となっています。

 今も“戦時中”である韓国は、1987年にノ・テウ元大統領が“民主化宣言”を行うまで、軍事政権下にありました。80年代から民主化運動が起こり、現在の政治体制に移行するのですが90年代中頃まで、民主化運動の実態や政治体制への批判などを取り扱った作品はタブーでした。その中で最近では80年に光州市で起きた韓国の民主化運動を扱った『タクシー運転手』(17年)は日本でも話題となりましたが、『キム君』【13】は同じく光州事件をテーマにした作品。物語は、80年5月に写された、軍用トラックの上で鋭くカメラをにらむひとりの男の写真から始まります。韓国の保守論客であるチ・マノンが、この写真に映る男性を北朝鮮特殊軍「第1狂秀」と名付けた後、北朝鮮が5・18光州民主化運動に介入した証拠だと主張。カン・サンウ監督と制作陣が、その「キム君」を知る人に順番に会っていくといった作品です。当時の光州市民は、5月18日から10日間、無防備状態のまま、弾圧を受けてしまった。それは光州市民にとって忘れることができないトラウマとして、今も残っていて、同作はその5・18の現在を追うドキュメンタリーなんです。市場が小さいインディーズ系映画としては珍しく、観客は1万人を突破。18年には、釜山国際映画祭ワイドアングル部門に招聘され、ソウル独立映画祭でも大賞を受賞しました。

 また17年公開の『1987、ある闘いの真実』【14】では、87年6月に起こった『6月民主抗争』に直接影響を与えた、「パク・ジョンチョル拷問致死事件」をテーマにした群像劇。さまざまな登場人物たちがリレーをするように、6月民主抗争を盛り上げていくという作りがユニーク。普通の人の小さな努力が、民主化に大きな影響を与えたということがよくわかる作品です。

 最後に、民主化以降の韓国政治を取り扱った作品としてヤン・ウソク監督の『弁護人』【15】もおすすめの作品です。同作は、日本でもよく知られているノ・ムヒョン前大統領が、人権弁護士として生まれ変わるきっかけとなった「釜林事件」(81年、第5共和国の軍事独裁政権が執権初期に国政を掌握するために起こした釜山地域最大の国家保安法違反事件。令状なしに一般市民、学生を不法に拘禁・拷問してスパイ事件として操作した)をテーマにした映画です。

 ノ・ムヒョン元大統領がこの世を去った後に公開されたこの映画は、観客動員数が1000万人を突破するほどの勢いを見せました。しかし、韓国の既得権勢力には好まれていない釜林事件とノ・ムヒョン元大統領という題材のため、製作前から公開後に至るまでその過程は順調ではありませんでした。公開直前には、国家情報院と情報警察がこの映画を政治的問題と絡めようとしたり、世論を“悪化”させる作品としてマークしていた事実が最近になって続々と明らかになっています。また同作は、文化体育観光部が投資を行っており、キム・ギチュン前青瓦台秘書室長が、そのクレジットを見て「国家予算を、政府を批判する映画に投資するのは誤ったことだ」として、青瓦台教育文化首席を非難した逸話も明らかになっているんです。

 このほかにも権力の腐敗や詳細が隠蔽された事件を暴いたもの、歴史的な事実に疑義を呈する作品は数多く、それらはエンタメ作品を超える観客を動員するケースもあります。日本でも公開され、時には賛否両論となることもありますが、歴史を踏まえた上で眺めてみると違った視点が見えてくるかもしれません。

(翻訳/河鐘基 構成/編集部)

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【13】『キム君』
監督:カン・サンウ/公開:18年

軍用トラックの上で鋭くカメラをにらむひとりの男の写真――彼は、北朝鮮が5・18光州民主化運動に介入させた工作員だという主張があがった。本作制作陣が、その人物「キム君」を知る人たちを訪ねて回るドキュメンタリー。

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【14】『1987、ある闘いの真実』
監督:チャン・ジュナン/主演:キム・ユンソク/公開:17年/発売:株式会社ツイン

1987年1月、大統領の直接選挙制度を要求するデモを行っていた大学生が、警察の取り調べを受け拷問の末に死亡。報道記者が事件の真相を報じ、学生たちも真相究明デモに参加する。

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【15】『弁護人』
監督:ヤン・ウソク/主演:ソン・ガンホ/公開:13年/発売:TCエンタテインメント

1970年代末、独学で司法試験に合格した裁判官(判事)は、食堂のオーナーが、国家保安法違反事件で刑務所に入れられ、不法に拷問を受けたという事実を知り、弁護を引き受けることにするのだが……。

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