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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第66回

軍隊内で広がるレイプ 黙殺され続けたその実態

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雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『The Invisible War 見えない戦争』

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アメリカの軍隊に蔓延している性的暴行の実態に迫ったドキュメンタリー。レイプ被害に遭った元米軍の女性らを中心に、男性被害者や識者たちのインタビューと報道映像を交えて構成されている。2012年サンダンス映画祭で観客賞を授賞。13年のアカデミー賞ノミネート作。

監督/カービー・ディック 出演/コリー・チオカ、アリアーナ・クレイほか 日本での公開は未定。


 2005年、ミシガン州ベイシティの沿岸警備隊基地。アメリカの沿岸警備隊は、陸軍、海軍、空軍、海兵隊に次ぐ5番目の軍隊と呼ばれ、海外出兵もある。入隊して間もない19歳の女性隊員コリー・チオカは、夜中の3時に上官の部屋に呼び出された。上官はチオカをベッドに誘った。チオカが拒否すると上官は彼女の顔を殴打し、無理やりレイプした。

 13年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『The Invisible War 見えない戦争』は、アメリカ軍内に密かに広がるレイプの実態を暴く。

 10年、一年間に米軍内で報告された性的暴行の数は3198件。報告されなかった数は推定1万9000件といわれる。調査によると、報告しなかった理由の33%は「犯人が同じ部隊の同僚だから」。25%が「報告すべき上司自身が犯人だから」。

 事件のほとんどは宿舎で起こる。アリアーナ・クレイはイラクでも戦った優秀な海兵隊員で、首都ワシントンの兵舎に赴任した。大統領就任式などの国家的式典でマー チをするエリート隊員が集まる場所だ。栄誉に胸を膨らませたクレイは、赴任早々、上官から「女性がここにいることは、セックスの対象になることだ」と警告される。それはすぐに現実になる。

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