サイゾーpremium  > 連載  > 町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第178回

――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。


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『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』

トップモデルから世界的な報道カメラマンへと転身した実在の女性の人生を映画化。

監督:エレン・クラス、出演:ケイト・ウィンスレットほか。5月9日劇場公開予定。


大統領がFBIを解体し、任期を3期目に延長したことで、反大統領派が武装蜂起し、アメリカが内戦に突入する……。

アレックス・ガーランド監督の映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が現実になりそうな第2期トランプ政権だが、あの映画でキルステン・ダンストが演じるリーという名の戦場カメラマンは実在の人物リー・ミラーをモデルにしている。

本名エリザベス・ミラー。ファッション誌「ヴォーグ」のモデルで、シュールレアリスムのミューズで、ホロコーストを最初に暴いた従軍記者だった。その波乱万丈の生涯をケイト・ウィンスレットが演じた伝記映画が『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』だ。

1907年、ニューヨーク郊外に生まれたリーは学校を次々と退学になるような問題児だった。 19歳のとき、マンハッタンの車道に飛び出して車に轢かれそうになった。その寸前で彼女を助けた紳士はコンデ・ナスト。「ザ・ニューヨーカー」や「ヴォーグ」「ヴァニティ・フェア」などニューヨークのハイクオリティ・マガジンの発行人だ。

ナストはリーをモデルにしてイラストレーターに『ヴォーグ』の1927年3月15日号の表紙を描かせた。彼女の鋭い眼差しは、エプロン姿でパイを持って微笑むアメリカの伝統的な良妻賢母とはまったく異なる、自立し、行動する「モダン・ガール」としてナストが求めていたものだった。

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