サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > 荒木経惟#MeToo騒動の論点【2】/【小原真史】私写真という怪物について
第1特集
荒木経惟#MeToo騒動の論点【2】

【小原真史】関係性を日記のように撮る“私写真”という怪物【論点1/写真】

+お気に入りに追加

――エロティックな女性ヌードなどで知られ、世界的な評価も高い写真家・荒木経惟。長年、彼のモデルを務めてきたKaoRiさんによる告発が、「#MeToo」のひとつとして世間をざわつかせた。ただ、この騒動をめぐる議論は錯綜している。そこで、本当に語るべき論点を整理し、問題の本質に迫りたい。

小原真史(映像作家・キュレーター)

こはら・まさし 本誌で「写真時評」を連載。監督作品に『カメラになった男―写真家中平卓馬』。著書に『富士幻景―近代日本と富士の病』がある。IZU PHOTO MUSEUM研究員として荒木経惟展、宮崎学展、小島一郎展、増山たづ子展などを担当した。


1806_03-2_520.jpg
新婚旅行での妻・陽子さんとの愛の記録と、妻の死の軌跡を追った写真日記からなる『センチメンタルな旅・冬の旅』(新潮社/1991年)。

 今回の騒動について、後出しジャンケン的に荒木批判を展開するのも、被害者としてのKaoRiさんを擁護するのも、どちらも違和感が拭えず、今の段階で積極的に発言したいことは、特にないというのが正直なところです。

 この件と同根だと思いますが、日本の出版業界にかんして言えば、仕事を受ける際に最初に原稿料を提示してくれる編集者はあまりいません。日本的な共同体の中では、そうした金銭のことは言わない、聞かないというのが美徳のようになってしまっており、大抵は自分の仕事の値段を後から知ることになります。KaoRiさんが荒木さんの最初の撮影の際に、ヘアメイク担当者に言われたように契約書を交わさないのは、「日本ではそれが普通」なのです。こうした日本的共同体の中でなんとなく始まった、撮る/撮られるという関係において、KaoRiさんのほうからモデル料を提示しなかったり、契約書が作られなかったりしたのは、ごく“自然”な流れだったのかもしれません。しかしその流れに抗するのは、時間が経てば経つほど難しくなってしまうでしょう。その意味で、KaoRiさんの抗議は、荒木さん本人だけではなく、日本的な忖度共同体に向けられてもいるでしょう。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2021年2月号

“男性学”のススメ

“男性学”のススメ
    • 【男らしさ】イメージの変遷
    • 男性学(基)【ブックガイド】
    • 【キリスト教】の男性優位主義
    • 女子が萌える【ラップ男子】
    • コロナ禍で始動【Zoomgals】
    • サンドウィッチマン【男同士のケア】
    • 【青柳翔】が語る“男らしさ”
    • オトコが乗る【軽自動車】
    • 【マンガ・アニメ】の軽自動車
    • 【ジャニーズ】男性アイドル像
    • 時代錯誤な【ジェンダー観】
    • 【サザエさん】は有害か?
    • 『サザエさん』の【初回】
    • 【井田裕隆】に聞くAV男優像
    • ポルノ視聴と【男性性の劣化】の関係
    • おじさんの【フェイスブック】
    • 【フェイスブック運営】側とのズレ
    • 育児特化の【ベビーテック】
    • 5秒でわかる【ベビーテック】
    • 【自民党】に根付く男尊女卑

「篠崎こころ」ラグジュアリーに魅せた麗しさ

「篠崎こころ」ラグジュアリーに魅せた麗しさ
    • 【篠崎こころ】召しませ #金髪ショー党

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 【岡田結実】バラエティの人気者はエゴサで成果を感じる
    • 【STUTS】人気トラックメイカーがラップに初挑戦!
    • 【土井裕泰】TBSのエースディレクターの問題作に迫る

連載

    • 【あまつまりな】流れに身を任せちゃうんです。
    • 【グレイテスト・ラウンドガール】に新メンバー!
    • あの素晴らしい【恵美】をもう一度
    • 【コロナと不況】21年に生き残る術
    • 【萱野稔人】ソロ社会化とコミュニティの変化
    • ありがとう、【小松の親分さん】
    • ワクチンがつくる【コロナ後の世界】
    • 【丸屋九兵衛】ショーン・コネリーを語る
    • 【町山智浩】「ストレンジ・フィーリング」カトリックの洗脳とオナニー
    • 【コロナ対策論議】の根本的欠如
    • 「謎」と「静」で振り返る【2020年】
    • 【小原真史】の「写真時評」
    • 【笹 公人】「念力事報」鬼狩りの時代
    • 【稲田豊史】「妻が口をきいてくれません」圧巻の“胸クソ”読後感
    • 【辛酸なめ子】の「佳子様偏愛採取録」
    • 【本場仕込み】のビールが飲める“リビングルーム”
    • 【更科修一郎】幽霊、批評家は文化的背教者なのか。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』