
『ラブプラス』人気の今こそ立ち上がれ! 「ゲーム批評」の再起動のために
関連タグ : 201009 | ゲーム | ラブプラス | 中川大地 | 月刊カルチャー時評
──6ジャンルに渡ってカルチャー批評を行う本連載だが、唯一取りこぼしているジャンルがある。それは、ゲームだ。おおよそ現代カルチャーに興味があれば無視はできないはずのこの領域は、なぜ"批評不毛地帯"のまま進展してきたのだろうか?

ゲームと現実の相似形を見いだせる『ラブ
プラス』。その続編『ラブプラス+』もヒットを
記録している。
数あるエンターテインメント表現のうちでも最後発のジャンル、コンピュータ・ゲーム。それは、およそ1970年代以降に生まれた世代にとって、マンガやアニメと同等以上に身近で重要な存在である。
特に、『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』をはじめとする物語RPGがシーンを牽引していた90年代中盤くらいから00年代初頭にかけては、ゲームの批評を確立しようという気運が、ユーザーたちの間にはかなり高まっていた。これはちょうど、玩具の延長としてのスーパーファミコンから、音楽CDのような形状のソフト供給を実現したプレイステーションに主流ハードが移行する時期で、ゲームが映画や文学と遜色のない文化コンテンツとして語れるのではないかという素朴な期待がなされたからである。
『ペンギン・ハイウェイ』で展開される森見登美彦の新しい強さ
関連タグ : 201009 | ペンギン・ハイウェイ | 乙女の密告 | 小さいおうち | 小説 | 月刊カルチャー時評
──"ベストセラー"のハードルが下がる小説界に残された小さな希望......そんな良質な小説だからこそ! ここでは愛ある批評を捧げます。
2010年9月号 NOVELクロスレビュー
■第143回芥川賞受賞作
『乙女の密告』
作/赤染晶子
発行/新潮社
価格/1260円
発売日/7月26日
京都の大学でドイツ語を学ぶ"乙女"みか子。彼女は風変わりなドイツ人教授のゼミで、幼少期より大好きだった『アンネの日記』を題材に、スピーチコンテストを目指している。周囲の乙女たちと日々取り組んでいたが、ある日、教授とある乙女の間の"不適切な関係"にまつわる噂が流れ出す。それはみか子を苛み始め......。
【ライター・江南評】
★★★★★★★★☆☆
重苦しさの演出は一読の価値有り
スピーチコンテスト出場のために、女子学生たちが『アンネの日記』の一節を繰り返し練習する。主人公が暗唱の失敗に恐怖するそのフレーズこそアンネの、そして自己の存在理由の根幹だった──という物語において、小説の語りにもリフレインは効果的に使われる。誰が「乙女」的かそうでないかの噂が、いわば呪術的に濃度を高めていく。この重苦しさの演出方法は一読の価値あり。ただし芥川賞レースでは、一票差の鹿島田真希と同時受賞もありだったろう。
オタク的創造力が生みだす最高の喜劇『ドリフターズ』
関連タグ : 201009 | となりの怪物くん | ドリフターズ | マンガ | 屍鬼 | 月刊カルチャー時評
──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!
2010年9月号 COMICクロスレビュー
■ヒラコー新作は偉人バトルロワイヤル!?
『ドリフターズ』(1巻)
作/平野耕太
掲載/「ヤングキングアワーズ」(少年画報社)
価格/590円 発売日/7月7日
関ヶ原の戦いの最中、重傷を負って森をさまよっていた島津豊久は、突如異空間へと飛ばされる。そこは、中世ヨーロッパ風でありながら、信長やジャンヌ・ダルクら古今東西の武人や偉人たちが戦いを繰り広げる異世界だった──。『ヘルシング』(少年画報社)を完結させた平野耕太が新たに描く、戦闘ファンタジー。
【批評家・宇野評】
★★★★★☆☆☆☆☆
過不足なく練り込まれてはいるが
この作者の芸は達者で、ネタとベタの間を往復する80年代的撹乱を前提に軸足は後者に置き、大ゴマで見得を切って逆切れ的にロマン主義への回帰を叫ぶ。正しく90年代/オタク第二世代的な回路で、保険のように仕掛けられたオマケマンガまで含めいい塩梅。この新連載もこの回路が過不足なく機能しているが、同時にそれはタイトルとは裏腹にやや退屈な安定感だけが存在していることを意味する。固定読者には期待通りの予定調和なのだろうが。
ヤマカンの『私の優しくない先輩』に見るハイブリッドな身体性
関連タグ : 201009 | ちょんまげぷりん | トイレット | 映画 | 月刊カルチャー時評 | 私の優しくない先輩
MOVIE編【2】はこちら
2010年9月号 MOVIEクロスレビュー
■『かもめ食堂』『めがね』の次は?

『トイレット』
監督・脚本/荻上直子
出演/もたいまさこ、タチアナ・マズラニーほか
配給/ショウゲート、スールキートス 公開/8月28日
引きこもりでピアニストのモーリー(長兄)、ロボットオタクのレイ(次兄)、勝ち気な女子大生リサ(末妹)の家に、母親の死をきっかけとして祖母"ばーちゃん"が住むようになる。言葉が通じない彼女との交流を通じて、ほどけていた家族のつながりが戻りだす。『かもめ食堂』『めがね』の監督が、全編北米撮影に挑戦した意欲作。
【ライター・松谷評】
★★★★★★★★☆☆
安定しているが物足りなくもある
『かもめ食堂』同様、異文化コミュニケーションをテーマとしているが、それと視点を逆にすることで差異化している。概ねそれは成功しており、荻上の演出と脚本もこれまで同様に非常に安定している。三兄妹それぞれの悩みの描き込みをはじめ、ピアノ、詩の朗読、ギョーザ、トイレといった要素の挟み込みもバランスがいい。ただ、荻上文脈としての三番煎じの感はどうしても否めず、『バーバー吉野』という引き出しを知っている者には物足りなく感じてしまう。
「ファスト風土」の負の側面を異様な迫力で描く『悪人』!
関連タグ : 201009 | インセプション | トイ・ストーリー3 | 悪人 | 映画 | 月刊カルチャー時評
2010年9月号 MOVIEクロスレビュー
■『ダークナイト』監督最新作

『インセプション』
監督・脚本/クリストファー・ノーラン
出演/レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙ほか
配給/ワーナー・ブラザース 公開/7月23日
人の睡眠中に夢に侵入し、その人間のアイディアを盗む産業スパイ・コブ(レオナルド・ディカプリオ)。妻殺しの嫌疑をかけられて指名手配犯となった彼は、さる企業のトップ(渡辺謙)から、ライバル企業の社長子息への洗脳の依頼を受ける。『ダークナイト』の監督が描くSFアクション。
【批評家・宇野評】
★★★★★★★★★☆
進化するノーランの世界
『メメント』以降ノーランが執拗に描き続けてきた「無限のメタゲームの臨界点に、一切の価値が並列になるフラットな世界が出現する」という感覚を、徹底的にコントロールされた脚本と画面設計でSF風のアクション劇として構築した傑作。『ダークナイト』が現代社会の直接的な縮図なら、本作は、その背景の個人の記憶(トラウマ)が生を支える根拠として機能しなくなる構造を、身体感覚として徹底追求することでほとんど想像力の臨界点に肉薄している。
7年ぶりの新作で見えたシリーズ刷新努力の痕跡とその限界
関連タグ : 201009 | 宇野常寛 | 映画 | 月刊カルチャー時評 | 松谷創一郎 | 踊る大捜査線 | 速水健朗
「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?
本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!
──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!
今月の1本
『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』

『踊る大捜査線3』公式HPより。
速水健朗[ライター]×松谷創一郎[ライター/リサーチャー]×宇野常寛[批評家]
"国民的シリーズ"『踊る大捜査線』の7年ぶり3作目の劇場版が公開されている。テレビドラマの放映開始から13年、2度の映画化に度重なるスピンオフ作品の製作と、プロジェクトとして肥大化の一途をたどってきたシリーズの最新作を、観る者はどう受け止めるべきなのか?
速水 映画『踊る大捜査線3』(以下『3』)が7月3日に公開されました。98年『踊る1』も03年『2』も超満員でしたが、今回は苦しいですよね。ファンとして言い訳すると、このシリーズ、初めから大作志向ではなかったんです。97年のテレビシリーズは視聴率も平均18%程度で、当時のドラマの中では地味だった。それが、放送後に口コミで火がついた。なので、映画ありきの企画ではなかったんですよ。でも映画が大ヒットしたので、ファンと一般大衆の両方にウケるものを作らなければならなくなる。そもそも『踊る』シリーズの良いところは、「引用」です。プロデューサーの亀山千広さんや脚本の君塚良一さんも刑事ドラママニアで、例えばテレビシリーズの冒頭は『太陽にほえろ!』のパロディで、青島がポイ捨てした煙草を拾っている。引用の作法は『3』でも踏襲されていて、引っ越し作業のシーンで、ドラマ『24』でお馴染みのマルチ画面のやりすぎ版として、200画面くらいに分割して収拾がつかなくなるっていうギャグとかをやってる。ただ、それを読み解いて満足するファンは1万人であって、1000万人の大半に届くものは作れていないのは、反響を見てもわかります。
子供すら騙せない凡作!? 大人の慰みものに過ぎない『宇宙ショーへようこそ』
関連タグ : 201008 | アニメ | 宇野常寛 | 月刊カルチャー時評 | 黒瀬陽平
2010年8月号 ANIMATIONクロスレビュー
■『かみちゅ!』監督の最新作
『宇宙ショーへようこそ』
監督/舛成孝ニ
脚本/倉田英之
制作/A-1 Pictures
配給/アニプレックス
6月26日より新宿バルト9ほか全国公開中
田舎の村で、夏合宿のため小学校に集まった5人の子どもたち。偶然見つけた犬の手当てをしたところ、犬がしゃべりだし、「2100万光年離れた惑星から植物の研究にやってきた宇宙人・ポチ」を名乗る。お礼に月へ連れていってもらった5人だが、トラブルで地球に帰れなくなり......。『かみちゅ!』の舛成監督初の劇場版。
【批評家・宇野評】
★★★☆☆☆☆☆☆☆
空回り感が否めないファンタジィ
気合が空回りしているのかとにかく冗長。この程度の内容で2時間超えはないだろう。そのへんからして「子どものための」「良心的な」作品という皮をかぶった大人の慰みものの匂いもしなくはない。テンプレ通りの「田舎の夏休み」「ピュアな子どもたち」もアレだが、特に脚本には問題が多く、中盤のダレはもちろん、終盤の安っぽい説教も完全に足を引っ張っている。背伸びして児童文学気取る前に、アニメで非日常を構築することの意味を考え直すべき。
無名の生活者たちへ贈る鎮魂歌──堤幸彦演出の後を継ぐ『新参者』!!
関連タグ : 201008 | ドラマ | 宇野常寛 | 成馬零一 | 月刊カルチャー時評 | 木俣 冬
──ついに"ドラマの帝王"木村拓哉ですら視聴率の取れなくなったドラマ大恐慌時代。そんなテレビ離れ世代にこそ見て欲しい、テレビマンたちの力とは? ドラマの見方が変わる新目線批評。
2010年8月号 DRAMAクロスレビュー
■いろんな意味で話題性抜群

『月の恋人』
脚本/浅野妙子ほか
出演/木村拓哉、篠原涼子、リン・チーリンほか
フジテレビにて、今年5月より毎週月曜21:00(7月5日終了)
「もはや神通力も限界か」と囁かれるキムタクの、ゴリゴリのラブストーリーとしては10年ぶりとなる主演作。放映前から「彼との共演を人気女優が拒否」だの「リン・チーリンのほうが背が高い」だの、さまざまな話題が飛び交った。脚本は、先月当欄で取り上げた『八日目の蝉』と同じ浅野妙子。
【批評家・宇野評】
★★★★☆☆☆☆☆☆
コンセプトに実践が伴わない
キムタクにいつもの「キムタク演技」をさせたまま、複雑な内面を持つキャラクターを演じさせようという志は立派だが、見事に失敗。どう考えてもキムタク社長のキャラをじっくり描くしかなかったはずなのに、尺的にも書き込み的にもまったく足りてない。企業ドラマとしての展開も極めて安直で「ドラマだからこんなものでいいだろう」という甘えは許しがたい。コンセプトは明確なのに実践が伴わない、作りの粗さが目立つ。恋愛描写自体は悪くなかったのだが。
『シュアリー・サムデイ』を見て分かった!? 小栗旬の本性は「童貞男子」
関連タグ : 201008 | 小栗旬 | 映画 | 月刊カルチャー時評
──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!
2010年8月号 MOVIEクロスレビュー
■邦画好きなら今夏注目必須

『SR サイタマノラッパー2』
監督・脚本/入江悠
出演/山田真歩、安藤サクラ、桜井ふみほか
配給/T・ジョイ 6月26日より新宿バルト9ほかにて公開中
監督が自腹で制作したインディ系映画『SR サイタマノラッパー』。昨年公開され、映画好きの間で話題をさらった同作の続編となる本作の舞台は、埼玉よりさらに奥地の群馬。ラッパーを夢見ながらグズグズの日常に埋もれた5人の地元女子は、ラッパーユニット再結成を目指して奮闘するが......。
【映画系文筆業・那須評】
★★★★★★☆☆☆☆
気持ちよい恥ずかしげのなさ
群馬の田舎で人生に行き詰まった女子の映画だから、肝心のラップもぐだぐだなのかと思いきや、これがかなりうまい。好きなラップを恥ずかしげもなく(いい意味で!)熱唱する姿は気持ちよく、娯楽映画としてとても魅力的だが、20代後半の彼女たちのリアルな痛みやラップをしなければならない理由は、よくも悪くも前作を踏襲した物語の枠組みの中に省略されている気がしたので、できればもう少し具体的なエピソードで観たかった。
『1Q84』をめぐる考察は続く──なぜ"1984"であったのか?
関連タグ : 1Q84 | 201008 | 大見崇晴 | 小説 | 月刊カルチャー時評 | 村上春樹
──"ベストセラー"のハードルが下がる小説界に残された小さな希望......そんな良質な小説だからこそ! ここでは愛ある批評を捧げます。
先月号の本連載冒頭において、市川真人氏・森田真功氏・宇野常寛氏による 『1Q84 BOOK3』(新潮社)をめぐる座談会を掲載した。その中で三者三様の 評価が下された同作だが、まだ語り尽くされていない部分が残っていた──。 『1Q84』は、おおむね3種類の読者に向けて書かれている。
第一には、小説を読んだことがない読者だ。本作は現在3巻まで刊行されているが、1巻目ですでに主人公2人が両思いであることが暗示されているから、そういった読者にも物語が追いやすい。このタイプは、2人が結ばれるか否かが気になって寝食を忘れて読む。もっとも、普通の恋愛小説は男女の思いが通じ合っていることが、後半までわからないものだが。
第二には、ベストセラーが好きな読者だ。このタイプは小説自体には関心がない。売れている小説にまつわる噂に関心がある。彼らに村上春樹は噂の火種を用意している。それはタイトルだ。これまで1巻ごとに「4月──6月」「7月──9月」「10月──12月」とサブタイトルが付されていることを踏まえれば、3カ月ごとに1冊が割り当てられているから、1984年についての小説である『1Q84』は全4巻になるように思えてくるのである。だが、どの巻も、物語が完結しているのかどうか判断がつかないように書かれており、それゆえ、何巻で完結するかが話題になっている。だから、このタイプはそれが気になって読む。

















