
上半期映像コンテンツを振り返る
関連タグ : 201008 | ブルーオーシャン | 宇野常寛 | 批評

気がつけば7月になってしまった。2010年も前半戦が早くも終了してしまったのだ。ということで、備忘録も兼ねて今回は上半期のカルチャー総決算、というか中間報告を行おうと思う。
まず映画だが、日本映画では圧倒的に『告白』(中島哲也監督)が良かった。前号の「カルチャー時評」でも触れたが、原作小説(自意識系ブロガーの垂れ流しのようなもの=セカイ系的独白)への批評的介入によって、そんなプレイヤーたちの自己目的化したコミュニケーションの無限連鎖する(バトルロワイヤル的)状況を、つかず離れずの絶妙な距離感で描き出した傑作だ。プロデューサーの川村元気氏は僕とほぼ同年の31歳。同作の成功は個人的にも大きく勇気づけられる「事件」だった。
ドラマでは、NHKの単発作『その街のこども』が群を抜いていた。これも前号で取り上げたが、フェイク・ドキュメンタリー的手法と、(『神話が考える』の福嶋亮大いうところの)偽史的想像力の合わせ技で、震災という大きなものにアプローチするコンセプトが素晴らしい。渡辺あやによる二者間のダイアローグも非常に完成度が高く、どこまでがアドリブなのかわからない空間を成立させ、フェイク・ドキュメンタリー的手法の魅力を最大限に引き出している。
カルチャー時評、始めます
関連タグ : 201007 | ブルーオーシャン | 宇野常寛 | 批評

和重氏の『ピストルズ』
今回は少し番外編的な内容にしよう。実は本誌で僕が編集者として預かった連載コーナーが始まったので、その背景と内部ルールの説明をしておこうと思ったのだ。
ということで、本誌で、今月からカルチャー時評ページをプロデュースすることになった。サイゾー編集部と、僕が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」のコラボ企画になる。
初回ということで、まだまだ手探りだが、ぜひ読んでいただきたい。体裁としては【今月の一本】【クロスレビュー】【コラム】の3パートに分かれている。【今月の一本】では、毎月1作品題材を選び、鼎談形式でレビューを行う。【クロスレビュー】は「ファミ通」(エンターブレイン)のそれを意識して、毎月、映画・マンガ・小説・音楽・ドラマ・アニメの各ジャンルのソフトを、文字通りクロスレビューするコーナー。今回は初回ということで全ジャンルを載せたが、小説/音楽、ドラマ/アニメは隔月で掲載される予定だ。【コラム】は毎月1〜2本、ノンジャンルで時評的な内容を掲載する。
オールド・メディアとどう付き合うか
関連タグ : 201006 | ブルーオーシャン | 宇野常寛 | 批評
インディーズで雑誌をやっていたりするせいか、電子書籍について意見を求められることが多い。そのたびに微妙な気分になる。そりゃあ紙の本は早晩大きくその存在理由を問われることになるだろうし、iPadあたりの登場はもしかしたら新しい文学を生むかもしれない。パソコンの普及がノベルゲームの進化をもたらし、ケータイサイトの充実がケータイ小説を生んだように、環境の変化はときに人間の想像力それ自体を変化させる。

だが、僕がちょっとうんざりしているのは、多くの業界人がこの電子書籍化みたいな「大きな問題」をある種のイイワケにしていることだ。そりゃあ、週刊少年誌の部数が落ちているのは若者の「本離れ」の一環で、その背景にはインターネットと携帯電話、つまりコミュニケーションに時間とお金を取られてコンテンツ(本やCD)にこれまで割かれていたコストを侵食している、くらいの分析もすぐにできる。これはとても重要な問題で、1冊本が書けるくらいだし、その結果、現代文化が大きく変わりつつあるのも確かだ。と、いうか僕の仕事はその変化を世に知らしめることがかなりの割合を占めている(気になる人は「思想地図」vol.4を読んでほしい)。しかし、批評家としてではなく編集者としての僕が考えているのは、もう少し別のことだ。つまり、確かに週刊誌やマンガ雑誌が売れなくなったり、広告モデルそのものが成立しなくなったのは「社会の大きな変化」だろう。しかし、5000部出れば採算が取れるような高い本(たとえば純文学のハードカバーや、サブカル本)が売れなくて赤字で愚痴をこぼすのは、「出版不況」のせいでもなければ「ネットワーク化」のせいでもない。それを「大きな問題」のせいにするのは、目の前のリアルな問題から目をそらす行為だ。そういうのって、単に送り手の努力と能力不足だと思う。
『曲げられない女』と「再保守化」するニッポン?
関連タグ : 201005 | ブルーオーシャン | 宇野常寛 | 批評

テレビドラマ『曲げられない女』(日本テレビ/3月放映終了)は、とにかくイライラさせてくれる作品だった。司法試験浪人を9年間続けているヒロイン(菅野美穂)の苦労話なのだが、このヒロインがタイトルの通りとにかく融通が利かない。(自分の基準での)不正義を目にするとまったく無関係であるにもかかわらず介入し、他愛ない言い間違いすら許さない。目標に向かってとにかく一直線で、周囲が半分善意で提示する妥協ポイント(有利な条件での結婚、就職など)にも一切応じない。誤解しないでほしいが、僕はヒロインのこんな性格にイラついているわけじゃない。じゃあ、どこにイライラしていたのかというと、彼女の前に立ちはだかる「敵」の弱さ、アナクロさだ。













