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雨宮純の「現代怪事廻説」【5】

〈怪事No-05〉陰謀論とも急接近 「スピリチュアル商売」

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インターネットに蔓延り、人々を惑わす幾多の陰謀論の正体を、怪事解明ライターが紐解く――。

2020年……4月21日、安倍晋三首相(当時)が新型コロナへの注意を呼びかけた翌日、昭恵夫人が約50人の団体で大分県へ旅行していたことが物議を醸す。ツアーを主催していたのは「88次元」を自称する「ドクタードルフィン」。

2021年……12月28日、ジョウスター、イチベイ、佐野美代子らが出席するスピリチュアルに関するイベント「CBIマッシヴアウェインクニング2021 in TOKYO」を開催。

2023年……1月19日、岐阜県知事選に出馬予定の今井瑠々氏の、スピリチュアルセミナーへの政治資金拠出が問題視される。
1月27日、「大大大大大出世」の動画が話題になり、ツイッターでトレンド入りする。

1月中旬のことだ。はちきれんばかりの笑顔で「大大大大大出世!」と集団で叫ぶ40~50代女性の集団がTikTokなどのSNSで紹介され、ツイッターでは一時トレンド入りするなど注目を集めた。かつての法の華三法行の「最高ですかー!」「最高でーす!」を彷彿とさせる異様な集団は人々の度肝を抜いたが、一体これは何なのだろうか?

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(絵/沖真秀)

この集団は「エリコエフダイヤ会」というグループで、主宰のK氏とマルチ商法でつながった人たちである。K氏は健康食品系マルチ商法のトップクラスディストリビューターとして有名であり、マルチ商法の会報では、ある年のグループ規模ナンバーワンとして掲載されていた。K氏は少なくとも2冊の自己啓発本を発行しているが、そのうちの1冊を見たところ、2010年時点でグループは3万人規模と記載されている。

また、同じくK氏が主導し会員が重複しているであろうNPO、「サクラF奉仕団」の総会も1万人規模と記載されている。「大大大大大出世」の動画の人数に映っているのは数十人だったものの、総勢としてはかなりの人数になるようだ。

そんなK氏は著書に「マイナスの気を出さなければ、幸運が取り込める」と書いていたり、「歩くパワースポット」を自称し「開運メッセージ」を「月刊ザ・フナイ」(ビジネス社)に連載しているスピリチュアルな人物でもある。氏が特に信奉しているのは姫野公明という修験者で、姫野が開いたとされる長野県の戸隠公明院を訪れるバスツアーをたびたび開催している。「大大大大大出世」と共に拡散された、女性たちが集団でほら貝を吹く動画も、おそらくそうしたツアーで撮影されたものだろう。

このように、マルチ商法の世界で暗躍する人物が、スピリチュアルや自己啓発に傾倒しているのは珍しくない。マルチ商法のグループが成長するには会員に活発に勧誘活動を行ってもらう必要があり、そのモチベーションアップのために自己啓発やスピリチュアルが使われるのだ。自己啓発を媒介にしてスピリチュアルとビジネス、さらには保守思想を結びつけた存在として知られるのが「オカルトのドン」と呼ばれた舩井幸雄氏であり、氏が創刊した「ザ・フナイ」で連載していることからもわかる通り、K氏も保守寄りの人物である。先にも挙げたサクラF奉仕団はたびたび靖国神社を参拝しており、また「第二次大戦時の日本はアジアの独立を助けたいと思っており、侵略のような利己的な考えはなかった」旨をフェイスブックに投稿している。

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