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磯部涼の「川崎」【第十三回】

【磯部涼/川崎】困窮した子を救う多国籍地区の避難所

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日本有数の工業都市・川崎はさまざまな顔を持っている。ギラつく繁華街、多文化コミュニティ、ラップ・シーン――。俊鋭の音楽ライター・磯部涼が、その地の知られざる風景をレポートし、ひいては現代ニッポンのダークサイドとその中の光を描出するルポルタージュ。

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〈ふれあい館〉の職員・鈴木健さんは、音楽祭「桜本フェス」の主催者でもある。

 サンタクロースは誰のところにもやってくるわけではない。家々で歓声が上がるクリスマスの朝、ある種の子どもたちは疎外感を味わうことになる。例えば、戦前、川崎臨海部の湿地帯に朝鮮人労働者が建てたバラック群が基になったため、今でもまるで迷路のように入り組んだ池上町。その路地を遊び場として育った、川崎を代表するラップ・グループ=BAD HOPのメンバー、BARKは、幼少期を以下のように振り返る。「家は貧乏でした。クリスマス・プレゼントとかもらったことないですもん。親に『サンタなんていないよ』って、はっきり言われてましたから」

 2016年12月20日夜。BARKも通い、今も彼のような子どもたちが通う、池上町の隣町・桜本のコミュニティ・センター〈ふれあい館〉では、だからこそ、クリスマス・パーティの準備が進められていた。日本語、韓国語、中国語、ポルトガル語、さまざまな言葉で「ようこそ」と書かれた階段を上がって調理室を覗けば、中学生たちがサンドウィッチや唐揚げといったクリスマス・ディナーの制作に挑戦中だ。それを見守るのは職員の鈴木健。「うるせぇなぁ。わかってるよ、健ちゃん」。心配そうな鈴木に対する子どもたちの口調はきつい。ただ、取材には敬語を崩さないことから考えると、それは彼らが心を開いている証拠なのだとわかる。あるいは、彼らは鈴木がかつて自分たちと同じような子どもだったと、“匂い”で感じているのかもしれない。

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