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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第89回

アメリカ政府の大罪を暴いたもう1人の功労者

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『シティズンフォー』

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ドキュメンタリー映画作家のポイトラスは、13年1月、ある人物からアメリカ政府が個人情報を監視しているという内部告発を受ける。その人物こそが、NSAの実態を暴露したエドワード・スノーデンだった。当初は彼の告発を信用しなかったポイトラスだが、USBに保存された監視システムのデータを見て、確信する……。

監督:ローラ・ポイトラス/主演:エドワード・スノーデンほか/日本公開未定。


 2013年、NSA(米国国家安全保障局)の外注スタッフだったエドワード・スノーデンが、アメリカ政府が国民の電話やネット活動を監視している事実を暴露し、国際的な大事件となった。それを報道した英国人ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドはピュリッツァー賞を受賞したが、そのスクープの陰にローラ・ポイトラスというドキュメンタリー映画作家がいたことはあまり知られていなかった。

 彼女がその時に撮影していた映像は14年に『シティズンフォー』という長編映画にまとめられ、15年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した。

 13年1月、「私」=ポイトラスに届いた「シティズンフォー」と名乗るメールから始まる。極秘の情報を暗号で送るのでキーを受け取ってくれという。送られてきたものは、アメリカ政府が電話やネットを監視している実態の内部告発だった。ポイトラスが選ばれたのは、彼女自身が監視されていたからだ。06年、ポイトラスはイラクで戦時下の人々を記録したドキュメンタリー『マイ・カントリー、マイ・カントリー』を撮影していた。現地の人といる彼女を目撃したアメリカ軍は、反米勢力のスパイだと疑った。それ以来、彼女は、どこの空港に行っても別室で取り調べを受けるようになった。ノートはすべてコピーを取られ、パソコンは押収、何週間も戻ってこない。係官は言った。「あんたは政府のリストに載ってるんだ」。

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