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第1特集
"真実"を書いたタブー破りの歴史書

学会のオキテなど完全無視!? "真実"を書いたタブー破りの歴史書

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──歴史料を丹念に読み込んでいくイメージの強い歴史学の世界にも、おカタい学界のルールをぶち破り、それまでの定説を打ち破って書かれたタブー破りの歴史書があった!大河ドラマ『平清盛』で歴史考証を担当した本郷和人、ベストセラー『中国化する日本』の與那覇潤らが推挙する、「本当の歴史」を浮き彫りにする歴史書とは?

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本郷和人氏の著書『謎とき平清盛』

 歴史学界の本流といえば、文字史料や考古学上の遺物などを厳密に検証し、歴史の客観的事実を把握しようとする実証史学であろう。それに対して歴史学者の網野善彦は1970年代、有形の史料のみならず、風俗や習慣、口頭伝承といった無形の民俗資料をも研究対象とする民俗学的な手法を取り入れて反旗を翻した。その著書『無縁・公界・楽─日本中世の自由と平和』(平凡社、78年)は、歴史書としては異例のベストセラーとなり、学界のみならず一般の歴史認識にも大きな影響を及ぼした。

 それから40年余り。網野ほどのインパクトを学界や社会に与える者こそ現れていないものの、あまたの歴史学者たちが、日々の研究の成果を書籍という形にまとめ、自説の是非を世に問い続けている。『出版年鑑』(出版ニュース社)によると、歴史に関する新刊書籍の出版点数は年間約5000点。本稿では、その中からさまざまな意味において“タブーを打ち破った偉大な歴史書”を紹介していくとしよう。

 ところで、そもそも歴史学者たちはなぜ一般向けの書籍を上梓するのだろうか? そして、その行為は学界内でどのように認識されているのだろうか? 東京大学史料編纂所教授として実証史学の総本山に身を置きつつも、『戦いの日本史 武士の時代を読み直す』【1】など多数の一般向け歴史書を世に送り出している本郷和人は、その問いに対してこう語る。

「やはり、最先端の研究成果を伝えることで、少しでも多くの人に“歴史好き”になってもらいたいからです。今、日本史はセンター試験の必修科目ではありません。このままでは、五輪の正式種目から外されようとしているレスリングと同じく、日本史が学問として先細りしていくのは目に見えている。自国の歴史がなおざりにされることは、日本人にとって大きな損失だと思うのです」(本郷)

 だが、学者としての評価の対象となるのは、あくまで論文と専門書。歴史学者が一般書を書くという行為は、たとえそれが歴史学の現状に対する危機感の表れであっても、学界内での評価にはつながらない。それどころか、むしろ世間に迎合する学者として同僚からさえ冷たい視線を向けられ、学界内での立場を危うくすることのほうが多い、というのが歴史学者の共通認識のようだ。その意味においては、本郷のような立場にある歴史学者が、一般書を次々に執筆すること自体が“タブー破り”とさえいえるのである。

 歴史学者が一般書を敬遠する背景について、本郷と同じく多数の一般向け著書を持つ、埼玉大学教養学部准教授の一ノ瀬俊也はこう説明する。

「普通の人にもわかりやすい、ある程度時代的に幅のある大きな話を一般書としてまとめたいという欲求は、多くの歴史学者が抱いていると思います。しかし、日本史研究はどんどん専門分化が進み、どの研究者も非常に範囲の狭い自分の研究テーマだけを追いかけています。学者として職を得るためにはそうせざるを得ない。そういう状況において、自分の専門分野外にまで踏み込んで通史を語るのは難しい。各分野の専門家から、『この部分は実証されていない、こういう反例がある』といった細かな突っ込みが必ず入りますから、特に若手の研究者が尻込みしてしまうのも無理はないと思います」(一ノ瀬)

 そういう学界の風潮に果敢に挑んだ歴史書として一ノ瀬が高く評価するのが、愛知県立大学日本文化学部准教授の與那覇潤が32歳の時に著し、発売3カ月で2万部を売り上げた『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』【2】だ。日本近現代史を専攻する與那覇は、同書において、10世紀の時点で近代化を成し遂げた中国社会は、後に世界を覆った「西洋化」の必要がなかったため、結果的に一時西欧に逆転されたと分析。「中国化」と「江戸時代化」という対立する一組の概念を用いて、日本のみならず世界の通史を叙述した。研究テーマを絞って学問的な裏付けを固めた上で、まずは論文なり専門書なりにまとめ、しかるのちに一般書を出す、という“学界の掟”に真正面からぶつかった本であるといえよう。

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