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第1特集
時代の“今”を切り取る対談集――THE NEWSMAKER DIALOGUE

そこに“正義”はあるのか――元「週刊文春」記者が語るスクープ量産への疑義と進化

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――権力者、著名人のスキャンダルを次々と報じる「週刊文春」。今や泣く子も黙る「文春砲」と呼ばれるようになっているが、なぜここまで突出してスクープを連発できるのか。元週刊文春記者で、現在はYouTubeで「元文春記者チャンネル」を配信している赤石、甚野氏の2人に、「週刊文春」について語ってもらった。

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甚野博則氏(写真右)と赤石晋一郎氏(写真左)。(写真/宇佐美 亮)

独走を支える優秀な特派記者

――現在のニュースメディア状況を見ると、まさに「週刊文春」(以下、文春)のひとり勝ちです。昨年になってようやくハジけたジャニー喜多川の性加害問題も、元はといえば文春の追及キャンペーンで確定した判決があったからですし、昨年の宝塚歌劇団セクハラ、パワハラ追及キャンペーン、そして現在の松本人志の性加害疑惑と、文春がスクープで切り込んだスキャンダルは数えきれません。

赤石 やっぱりこれまで積み重ねてきた歴史の強みがあるんだと思います。それこそジャニーズ問題なんかは99年からいろんな記者がやっていて、裁判の後もSMAPの解散・独立騒動、滝沢秀明の独立等と継続して報じてきました。誰かひとりの記者だけの力ではなく、編集部内で受け継がれ、取材を続けてきた強みがあるからでしょう。

――これだけスクープを連発できるのは、政財界や芸能プロの圧力に負けない編集姿勢もありますが、それを支えているのは、やはり優秀な記者が揃っているということでしょうか。以前の文春は他誌のエース級記者が移籍してくることで有名でしたよね。

赤石 僕は今の編集部が最強だと思っているんです。確かに文春は他メディアから優秀な記者が来るし、今はもういませんが僕たちが入った頃だと西岡研介さん、中村竜太郎さん、藤吉雅春さんといった、それぞれキャラクターも得意分野も違うすごい先輩記者がいました。でもその頃の文春はまだ寄せ集め軍団という感じで記者の能力に頼る部分も多かったんです。でも今の文春は、その優秀な先輩の下で学んだ記者たちが花開いていて、僕たちがいた頃より一歩も二歩も先に進んでいると感じます。

甚野 僕もそういう優秀な先輩たちのアシ(アシスタント)について取材をする中で学んだ部分は大きかったですね。

赤石 いろんなメディアからいい記者が集まることで取材のノウハウが蓄積されていった面もあるでしょうね。

たとえば僕は「FRIDAY」から文春に移ったんですが、当時の文春は張り込みのノウハウがほとんどなかったんです。FRIDAYだと車やカメラマンが使えたのに文春では基本、記者の「立ち張り」でめちゃめちゃキツかった。そのうちほかにもFRIDAYのエース記者が来たりして張り込みの方法が確立していったんです。今の文春砲の写真スクープはほとんどFRIDAYのやり方で撮られているはずです。

――それは文春編集部が意図的に引き抜いていたんでしょうか。今は新聞社から移ってくる若い記者さんも多いようですが。

赤石 引き抜いたというより、自然に集まってきた感じです。文春はいろんなタイプの記者がいることを許容していましたからね。僕自身のことで言えば文春に移籍した理由はひとつしかなくて、それは自分で記事を書きたかったから。他誌だとアンカー制のところが多くて、最終的な記事になるとカットされたりちょっと違うなとモヤモヤすることがあって、やっぱり自分で書きたいと思ったんです。

アンカー制にもいいところはあるんですが、どうしても責任感が薄くなって編集部も記者も「ここまででいいかな」となりがちですからね。でも自分で書くとなればミスは絶対したくないし、取材もギリギリまで粘るじゃないですか。編集部も待ってくれるだけのコストをかけてくれますし。

甚野 編集部が人、金、時間と必要な取材コストをちゃんとかけてくれるのもデカいですよね。「ウラを取るまで帰ってくるな」みたいなことも本当にあって、僕は最長で半年、潜っていたことがありました。それがドカンとしたスクープになる。もちろんムダになることも平気であるんですが、投資してくれるからリターンも大きくなるんです。

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