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第1特集
ヒップホップのイメージをマイナスに落とさぬ粋な計らい

幼児の要事はラップバトル!? 教育番組が採用するラップの力

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――本誌でも幾度となく特集してきた日本におけるフリースタイルバトルの隆盛。以後、テレビ番組やCMでラップが“間違いのない”形で採用されるようになった昨今だが、NHK Eテレの子ども向け番組で繰り広げられているラップの内情とは!

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『チキップダンサーズ』(NHK Eテレ)
毎週月曜日 午前8時45分から放送中
「ほねチキン」をはじめ、「スキップガエル先生」や「りんごあめ」「ぎゅうにゅうアイス」など、サンエックス社がデザインするキャラクターを題材にしたテレビアニメ。アニメの制作はファンワークス社が手がけ、子どものみならず親世代の心も躍る群像劇。

ある朝、いつも通り息子の保育園登園支度をしているときに耳を疑う出来事があった。NHK Eテレで放送されている「チキップダンサーズ」という5分間のアニメ番組からラップが流れてきたからだ。そのストーリーでは、番組内に登場する「つむぎちゃん」がラップに挑戦するという前置きがあり、キャラクターたちが“褒めラップ”のかけ合いをしているうち、初登場のキャラクター、「ラッパーねずみ」(声優はかねてからヒップホップ好きを公言している芸人のやす子が担当)がラップでディスを仕掛けてくるという衝撃的な展開であった(「チキップダンサーズ(3期)」#11 ラップでブンバッ!)。

ラッパーねずみはその後も「#16 ラップでブンブン」にも登場し、ほかのキャラクターたちへ果敢にフリースタイルバトルを仕掛けていく。なぜ、この短期間でこんなにも教育番組にラップが登場するのか? しかも、キャラクターによって異なる味わいを持つラップの数々は謎の中毒性があり、一体どんなプロセスを経て放送に至ったのか気になってしまう。ラップを色濃くフィーチャーしている背景が気になりすぎて、かくして筆者は「チキップダンサーズ」を制作している株式会社ファンワークス社の門を叩いたのだった──。

今回、取材に対応してくれたのは、アニメの監督と脚本を担当するラレコ氏。『やわらか戦車』や『アグレッシブ烈子』といった代表作で知られ、「日本のメディア芸術100選」のエンターテインメント部門1位を獲得した経歴を持つ。そもそも「チキップダンサーズ」は「リラックマ」や「すみっコぐらし」といった人気キャラクターを輩出してきたサンエックス社が生み出したもの。番組のタイトル通り、ダンスの要素は外せない。普段のストーリー制作については「ダンスありきで物語を作り、ダンスで何を表現するか、(ストーリーが)盛り上がるときに踊れるような話の組み立て方を意識している」とラレコ氏が説明してくれた。そうした中、新キャラクターとしてラッパーねずみが登場した経緯とはどのようなものだったのか。サンエックス社からの回答によると「DJがかける音楽に合わせてダンスバトルをする企画があり、キッズダンサーや観客のお子様たちがとても楽しそうにしているのを見て、リズムに乗ってパフォーマンスするラップは、ダンスとの親和性があると感じたこと。そして、既存のメインキャラクターたちとは違う新しい要素を取り入れたいと思ったからです」といったきっかけがあったそうだ。その案を踏襲したラレコ氏は「フリースタイルバトルをしなきゃいけないだろうなと感じました」と受け止め、より綿密なストーリー構築へと取りかかる。

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