CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評
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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【COMIC編2】

誠実さが胸を打つ! ネオ・ニューウェイブの旗手・西村ツチカが描く『かわいそうな真弓さん』

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2011年12月号 COMICクロスレビュー

■BLライクな脱力系男子高校生青春

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『君と僕。』(10巻)
作/堀田きいち
掲載/「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)
価格/440円 発行日/9月17日
5人の男子高校生を中心にした、脱力系青春グラフィティ。イケメンでモテるのに無表情でヒネくれている双子・悠太&祐希兄弟と、ボンボンで秀才のツッコミ&いじられ役・要、ふんわりした春、日独ハーフで騒がしい千鶴の5人の、ユルっとした日常が描かれる。本巻では修学旅行編が完結。10月よりアニメがテレビ東京系にて放映中。

【ライター・高野評】
★★★★★★★☆☆☆
意外なドラマティックさに驚き
堀田きいちは(「ジャンプ」の大石浩二と共に)カラーの構図とセンスがいい、というのが私の認識で、長い間その印象は変わらなかった。だから、最近の巻を一気読みして驚いた――ドラマティックだったから。よくある修学旅行エピソードにここまで膨らみを持たせられるのは、日常をじれったいほど丁寧に描いてきた作者だからこそと感慨深い。饒舌ではないがゆえに大切なモノローグが、すっと心に入ってきた。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【COMIC編1】

「出落ち」から安定した人気を誇りながらも、すっかりマンネリ化した『聖☆おにいさん』

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──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!

2011年12月号 COMICクロスレビュー

■ブッダ&イエスの共同生活も7巻目

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『聖☆おにいさん』(7巻)
作/中村光
掲載/「モーニング・ツー」(講談社)
価格/590円 発行日/10月21日
天界で有給を取って外界バカンスを楽しむブッダとイエスの、風呂なしアパート(@立川)での共同生活を、宗教ネタをふんだんに盛り込んで描いたギャグマンガ。08年の1巻発売時から話題を呼んできたが、巻数を重ねるごとに天界の弟子やほかの神たちもやたらと外界に下りてくるようになり、本巻ではゼウスやブッダの最初の師まで登場。

【脚本/演出家・麻草評】
★★★★☆☆☆☆☆☆
もっとユルくてよかったはずだ!
マンネリズムは日常マンガの華。「兄さん、それ前にもやったネタです」なんてのがちょうどいい。でも今回のはちょっと違う。ネタの詰め込みは変わらないのだが、帰省をあっさり諦めたり、PVの完成形を見せないなど、最後まで踏み込まない淡白な印象がマンネリ感を気づかせてしまう。さらに同窓会から疎外されるのも、謀殺のたとえ話も被害妄想じみているし、ヤクザの回など登場人物すべてが狂人のよう。作者は休んだほうがいいのでは?

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第18回──【MOVIE編】

『映画 怪物くん』の迷走 無難すぎる展開で子どもだましにもなっていない!?

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──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!

2011年12月号 MOVIEクロスレビュー

■予想外の出来だったドラマから今度は映画へ

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『映画 怪物くん』
監督/中村義洋
原作/藤子不二雄(A) 脚本/西田征史
出演/大野智、松岡昌宏、八嶋智人、川島海荷ほか
配給/東宝 公開/11月26日

日頃のワガママが原因で、怪物ランドの王位継承を反対された怪物くん。怒ってランドを飛び出し、日本へ向かったつもりが着いたのは"カレーの王国"。そこで権力者から、反乱軍にさらわれた王子と姫の救出を頼まれる。10年に放映されたドラマの続編。脚本の西田征史は今年、アニメ『TIGER&BUNNY』で注目を浴びた。
(c) 藤子スタジオ、小学館/2011「映画 怪物くん」製作委員会

【映画文筆業・那須評】
★★★★☆☆☆☆☆☆
CGがかえってスケールを狭めた
本作のキーワードであり、世界を動かすモチベーションとして肯定されているところの「ワガママ」が上手く機能していないように思える。大勢の登場人物を的確にさばく中村監督のクレバーな人事手腕はさすがだが、CGがかえってファンタジーのスケールを狭めているきらいも。そんな中、悪魔を演じた松岡昌宏の力量は光っており、彼が登場した途端に空気が一気に本気モードに変わって、画面がビシッと引き締まったのにはびっくりした。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第18回──【MOVIE】

「また川村元気か!」邦画界を騒がす東宝敏腕Pの手で20億ヒットに至った理由

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「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?

本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!

【今月の1本】
『映画 モテキ』

松谷創一郎[ライター/リサーチャー]×森直人[映画評論家]×宇野常寛[批評家]

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──原作マンガに2010年のドラマ版と、「サブカルと自意識」問題をめぐる議論を呼んできた『モテキ』が映画化された。監督・主演はドラマ版同様、大根仁と森山未來のコンビである。ここに、『告白』『悪人』と近年の邦画話題作を手がける東宝の川村元気プロデューサーが加わり、なかなかのヒットに至っているが、本連載執筆陣はこの映画をどう見たのだろうか?

『モテキ』が随分ヒットしていて、興行収入は20億円を突破しそうな勢いです。僕は正直、試写を観た時点では15億円くらいだと予想していたんですが、このヒットの背景を考える上でカギを握るのは、ドラマ版と映画版の間で何が起こったのかという点になるでしょうね。ドラマ版はノーギャラの捨て身で監督を務めた大根仁さんの熱量が圧倒的だったし、恋愛修行ドラマとしても非常に精度が高いんですが、その分、例えばサブカルアイテムの詰め込み方に「臭み」を感じた人も多いかもしれない。映画版はある種、ドラマ版で全身全霊の「作家」になった大根さんが、川村元気プロデュースのもとで「職人」に戻っている。結果、シネコン作品としてちょうどいい具合に薄まったのかなと。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【DRAMA編2】

時代考証が不十分!? 中途半端なファンタジーだったNHK朝ドラ『おひさま』

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■原作もドラマも人気のテッパンシリーズ

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『チーム・バチスタ3 アリアドネの弾丸』
脚本/後藤法子ほか 演出/今井和久ほか プロデューサー/豊福陽子ほか
原作/海堂尊 出演/伊藤淳史、仲村トオルほか
CX系にて、毎週火曜22:00〜22:54放映(9月20日終了)

大学附属病院を舞台に、外来講師・田口(伊藤)と、厚労省役人・白鳥(仲村)の活躍を描く、『チーム・バチスタ』シリーズ3作目。検死手法「死亡時画像病理診断(Ai)」をめぐる警察と医療技術者側の攻防をベースに、冤罪事件の暗い影を描く。

【批評家・宇野評】
★★★★★★☆☆☆☆
仲村トオルの白鳥が圧倒的
マンネリではあるが、さすがの安定感と呼ぶべきだろう。膨大な原作シリーズの中からここで『アリアドネの弾丸』を選ぶという取捨選択も正解だし、テレビドラマ向けの脚色と再構成も巧い。ミステリというよりはライトな医療薀蓄ものとしてきちんと成立させつつ、物語展開自体はひたすらキャラを立たせてゆくことに奉仕させる手腕は見事。特に仲村トオルの白鳥は原作版、映画版(阿部寛)を圧倒する存在感で、既にひとり歩きすらしている。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【DRAMA編1】

ジャニタレにも華はなく......『美男ですね』はバンド版『花より男子』に過ぎない!

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■韓流人気作、ジャニーズリメイクの出来は?

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『美男ですね』
脚本/高橋麻紀ほか 演出/坪井敏雄ほか プロデューサー/高橋正尚
出演/瀧本美織、玉森裕太、藤ヶ谷太輔、八乙女光、小嶋陽菜ほか
TBSにて毎週金曜22:00~22:54放映(9月23日終了)

女子であることを隠してロックバンドで活躍する美子(美男/瀧本)と、バンドメンバー・廉(玉森)を中心にしたラブコメ作品。チャン・グンソクの日本人気を決定づけた韓流ドラマを、ジャニーズ陣でリメイク。8話では、グンソクが本人役で登場した。

【批評家・宇野評】
★★★★★☆☆☆☆☆
男装少女についてはピカイチ
ジャニーズ軍団に華はないが、主役の男装少女については今作の瀧本美織が今期の「イケメンもの」の中で一番だろう。小嶋陽菜のライバル役も(巧くはないが)ハマっている。「原作」韓流ドラマの再構成も悪くない。しかし「原作」の二次創作でいいという開き直りは両刃の剣で、原作ファンはなんだかんだでうれしいグンソクのゲスト出演などフットワークの良さをもたらす一方、楽しんごの出演が象徴するテレビドラマらしい安易さも生んでいる。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【COMIC編2】

『ストロボ・エッジ』の作者が描く『アオハライド』 もっとときめきを!

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2011年11月号 COMICクロスレビュー

■ほんわか宇宙SFマンガ、完結

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『土星マンション』(7巻)
作/岩岡ヒサエ
掲載/「IKKI」(小学館) 価格/680円 発売/8月30日

地球の3万5000メートル上空に浮かぶリング上のマンションで人類が暮らす時代。主人公のミツは、亡父と同じコロニーの窓拭き職人となった。コロニーは上層・中層・下層の階層社会になっている。層間の対立が起きる中で、ミツを地上に送り届けるという下層住人の宇宙船プロジェクトは成功に終わるのか? 作者初の長編作品完結巻。

【ライター・高野評】
★★★★★★★★☆☆
「ふんわり」で終わらなかった驚き
完結の余韻は大きい。等身の低いイラストのような絵柄もあいまって「わずかなさざめきはあるけれど、やっぱりすばらしい僕らの共同体」を淡々と描くかのように思えたこの作品が、少しずつガンダム的「国家と少年」の物語として盛り上がり、見事に着地を見せたのには驚いた。人物も吸引力がある。作者の構成力と愛情の賜物だと思う。人間の悪意の処理がきれいすぎるのは少し気になったが、SF的想像力はより美しく、ドラマティック。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【COMIC編1】

オタクの自虐ネタにはもううんざり! 短絡思考が垣間見える『中国嫁日記』

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──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!

2011年11月号 COMICクロスレビュー

■アニメ化で人気爆発!「ジャンプSQ」連載作

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『青の祓魔師(エクソシスト)』(7巻)
 作/加藤和恵
掲載/「ジャンプスクエア」(集英社) 価格/460円 発売/9月2日

ある日、自身が魔神(サタン)の子だと知った15歳の少年・奥村燐。サタンから彼を守るために、養父であり祓魔師の獅郎が命を落としたことから、サタンを倒すべく祓魔師を目指すことを決意する。双子の弟・雪男らと共に、祓魔師の学校・正十字学園で鍛錬を積むが、先にはさまざまな困難が待ち受けていた。

【脚本/演出家・麻草評】
★★★★★★☆☆☆☆
冗長になってきた展開が残念
丁寧なプロットと、柔軟だがラフに過ぎない描線は好感度大。ただし「親は大切にしろ」とか「友達を敬え」などの説教節を、普遍的ととらえるかテンプレと見るかで楽しみ方は分かれる。また、テンポが良くハッタリが効いていた初期に比べ、7巻では説明セリフの長さと回想の要約感が増えて残念だ。主題の「少年の挫折と成長」に、アベルとカインのモチーフを重ねるところには、フェティッシュな欲望を刺激される人も多そう。続刊に期待。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【DRAMA】

社会派+『東京ラブストーリー』!?テレビドラマ本流の逆襲が始まった!

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「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?

本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!

【今月の1本】
『それでも、生きてゆく』

古崎康成[テレビドラマ研究家]×成馬零一[ドラマ評論家]×宇野常寛[批評家]

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──『美男ですね』や『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』などが何かと話題を振りまいた夏クールにおいて、ディープなテレビドラマファンの間で放映前から期待を寄せられていたのが、『それでも、生きてゆく』だ。脚本は『Mother』の坂元裕二、そして瑛太に満島ひかり、柄本明、安藤サクラ、大竹しのぶら、邦画好きなら見逃せない役者陣で、少年による幼女殺人事件の加害者家族と被害者家族を描くという、近年珍しいような重たいテーマに挑戦した同作、果たしてその仕上がりのほどはいかに──?


古崎 今年の前半はテレビドラマが全体的に低調な印象でした。良い作品を作ってきた人たちが次から次へと活躍の場を映画に移してしまい、テレビドラマとしての新しい方向性を見つけあぐねていた気がします。そんな中、夏ドラマは往年のドラマ関係者が精彩を帯びた作品を打ち出してきました。『それでも、生きてゆく』も、坂元裕二(脚本)さんと永山耕三(演出)さんという『東京ラブストーリー』(91年、フジ)の頃からやっているコンビ。さらにかつて単発で坂元作品を演出し、その後『風のガーデン』(08年、同)などの演出で注目されたベテラン・宮本理江子さんが加わり、テレビにこだわって作品を作っている方々の底力を見た気がします。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第17回──【MOVIE編】

B級感を再現した"真面目に不真面目"な映画『電人ザボーガー』

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──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!

2011年11月号 MOVIEクロスレビュー

■お蔵入りにはなりませんでした

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© 2011映画「一命」製作委員

『一命』
監督/三池崇史
原作/滝口康彦 脚本/山岸きくみ
音楽/坂本龍一 プロデューサー/中沢敏明、ジェレミー・トーマス
出演/市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司ほか
配給/松竹 公開/10月15日

浪人による「狂言切腹」がはやる江戸時代初頭。井伊家の門前に現れた侍(市川海老蔵)に家老(役所)は、以前現れた若い浪人(瑛太)の顛末を語る。1962年公開の映画『切腹』と同じ原作小説をベースにした、三池監督による時代劇。海老蔵事件の際に、「お蔵入りか」と騒がれたのは本作。

【映画文筆業・那須評】
★★★★★☆☆☆☆☆
コスプレのコスプレたるメタ時代劇
三池崇史が監督な時点で、『切腹』のリメイクという概念は取り払っていい。若い役者陣は顔が小さくスタイルがよくてかっこいいが、江戸時代のそれとは違う。そもそも当時の再現や武士道精神の考察、肉体感覚の痛みは、よくも悪くも無難なエンタメに昇華されている。一種のコスプレであった時代劇が一ジャンルとなった今、これはコスプレのコスプレといったメタ時代劇の試みとも言え、二重否定的にオリジナルに言及する。その意味で3Dの導入は正しい。

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マル激 TALK ON DEMAND
神保哲生×宮台真司の
マル激 TALK ON DEMAND
『ゲストと共に“ワンテーマ”を掘下げるネット発の時事鼎談。』

おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。
花くまゆうさくの
カストリ漫報
『おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。』

“超”現代哲学講座
哲学者・萱野稔人の
“超”現代哲学講座
『国家、権力、そして暴力とは何か?知的実践による解説。』


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