マル激 TALK ON DEMAND
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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第63回

東京電力は法で裁かれるのか?原発訴訟に見る司法の責任【後編】

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3・11以降、原発訴訟はどのように変わるのか?

神保 続いて、福島第一原発事故を予見するかのような議論が交わされた、浜岡原発訴訟について伺いたいと思います。あらためて争点を簡単に教えてください。

海渡 浜岡原発は静岡県の御前崎市にあります。原子炉が震源とされるプレート境界面の真上にあり、少なくともM8以上の「東海地震」に見舞われる危険性が認められていた。そんな場所で、僕らが訴訟を起こした03年当時は4基、現在は5基の原発が稼働しています。そこで、静岡県とその近隣都道府県に居住する住民が人格権に基づき、運転差し止めを求めた事案です。

 大きな争点としては、どの程度の地震が起きる可能性があるか。そして、M9クラスの"超東海地震"など、想定を超える地震が発生する可能性があるかなどです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第63回

東京電力は法で裁かれるのか?原発訴訟に見る司法の責任【中編】

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原発訴訟で障壁となる専門技術的裁量とは?

神保 元裁判官の立場から、井戸さんは「伊方原発訴訟」をどう捉えていますか?

井戸 伊方原発訴訟では設置許可処分が「裁量処分」かどうか、ということが大きな争点になりました。行政は法律に基づいて行われなければなりませんが、すべてのケースを想定して「こういう場合は許可していい」と決めることはできない。それゆえに、行政側には裁量があります。この訴訟では、安全というものを行政の裁量で判断できるのか、それとも安全とは事実認定の問題であり、裁量で判断できるものではないのか、ということが大きく争われたのです。

 結果として、専門技術的な部分については裁判官が判断できないため、最高裁は専門家を立てている行政の判断を尊重すべきだとして、裁量を認めた格好です。裁量処分であれば、裁量の逸脱、乱用を原告側が立証しない限り、取り消すことはできない。この判断がその後に与えた影響は大きいですね。

海渡 確かに、過去の原発訴訟ではこの「専門技術的裁量」が壁になってきました。原発の耐震性や多重事故の可能性などが争点に上がっても、裁判所は常にこの専門技術的裁量を盾に、判断を"専門家"に委ねることで、原発の本当の危険性を直視することから逃れてきたのです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第63回

東京電力は法で裁かれるのか?原発訴訟に見る司法の責任【前編】

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ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

今月のゲスト
海渡雄一[弁護士]・井戸謙一[弁護士]

──東日本大震災に伴い発生した福島第一原発事故を受け、東京電力の動向に注目が集まっている。1月12日には、原発停止や廃炉に向けた費用負担が東電の経営を圧迫することから、政府は公的資金注入による実質的な国有化の検討に入ったと報じられた。こうした動きに対し、「やむを得ない」という論調が多く見られたが、東電に対する責任追及の声は多い。だが、これまでも地域住民らが安全性を問題視し、司法に問うた"原発訴訟"については問題点も山積みだという―。

神保 今回は、長く原発関連の訴訟にかかわってこられた弁護士の海渡雄一さん、同じく弁護士で元裁判官の井戸謙一さんをゲストに迎え、原発問題における司法、とりわけ裁判所の責任について議論していきます。

宮台 原発の問題に限らず、日本の司法が三権分立という意味で本当に独立しているのかどうかが疑われ続けてきました。日本は起訴有罪率が99・9%で、事実上検察が有罪/無罪を決めています。そもそも最高裁の判事が処理する事件の数から考えて、とてもじゃないがすべてを処理できず、実務の大半が事務局に丸投げの状態にあります。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第62回

新聞・テレビの崩壊が生むソーシャルメディアの情報格差【後編】

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職業ジャーナリストは消え去る運命なのか?

神保 では、ここからは、マスメディアの今後を考えていきたいと思います。媒体別の広告費を見ると、テレビは相変わらず高い広告費を維持していますが、最近の動向では、新聞の広告費がインターネットに抜かれたことがしばしば特筆されます。もっとも、日本の場合は新聞の数が少なく、それに対してネットには無数のサイトがありますから、この数字が単純に影響力を反映しているとはいえませんが。

佐々木 広告を考えると、インターネットのメリットは、効果測定が可能で、ショッピングサイトへの導線を引くことができること。一方、ネット広告に足りないのは、最初のアテンションです。そこは相変わらず、テレビが強い。テレビCMが持つ力は大きく、視聴者にパッションが生まれます。インターネットでは、何かを買おうと決めてからの勝負になる。そこで今、最もはやっているモデルは、テレビCMの最後に「○○で検索」という言葉をつけて、ネットに導線を引くやり方です。ネット広告が最初のパッションを取るところまで至れば、テレビCMは激減するでしょうね。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第62回

新聞・テレビの崩壊が生むソーシャルメディアの情報格差【中編】

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テクノロジーが変えるメディアとネットの将来

神保 原発事故とその報道といった多くの問題は善悪に切り分けられるほど単純じゃないし、単純化することで場合によっては命にかかわるような問題が生じる、ということもわかりました。特に今回のような事故が起きると、報道がエンターテインメントでは済まされないということに、気付いてしまったということですね。話を善悪二元論に単純化し、面白おかしく報じているうちはよかったが、生き死ににもかかわる重大で複雑な問題を、冷静かつ中立的な立場から正確に報じようとすると、話を単純化したり面白おかしく報じることは難しくなります。しかも、普段からそういう姿勢で取材し、報道していないと、いざというときに急にできるものでもありません。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第62回

新聞・テレビの崩壊が生むソーシャルメディアの情報格差【前編】

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ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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今月のゲスト
佐々木俊尚[ジャーナリスト]

──当連載でもたびたび指摘してきたが、3・11以降、テレビや新聞といったマスメディアへの不信感は増大する一方だ。そんな中、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、自著において「2011年、新聞社やテレビ局はマスメディアとしての機能を失う」ことを予測し、それは現実となった。だが、それに代わるネットメディアの中で台頭する、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアでは、情報を得ることに"格差"が生じることも危惧している。旧来型マスメディアが崩壊することで、どのように我々は「正しい情報」を得るべきか、ジャーナリズムの将来と共に考えたい。

神保 今回は主に震災以降のマスメディア、ジャーナリズムについて議論したいと思います。ゲストは、09年に『2011年 新聞・テレビ消滅』(文藝春秋)という衝撃的なタイトルの本を出されたジャーナリストの佐々木俊尚さんです。2011年に入って「新聞もテレビも消滅していないじゃないか」と言われるのでは?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第61回

北海道警裏金問題から見える記者クラブの監視能力と疲弊【後編】

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メディア本来の役割は報道なのか伝達なのか?

神保 メディアの問題について議論を進めましょう。繰り返しますが、記者クラブ問題は日本のメディアが抱える深刻な構造問題ですが、その制度の中にはメディアが失ってはいけない財産もあります。それは日本のメディアが政府各省庁のど真ん中に「記者クラブ」という取材拠点を持っているため、統治権力に対する監視が容易になっていることがひとつ。そして記者会見の主催権がメディア側にあるというのがもうひとつの財産です。いずれも先人たちが苦労して勝ち取った権益で、本来はメディアにとって、すなわち市民社会にとっても大きな財産となるべきものです。しかし、現在では一部のメディアの既得権益として濫用されているため、2つともメリットよりもむしろでメリットの方が大きくなってしまっているのが残念でなりません。相手の懐深く飛び込んでいるというのは、攻める場合にとても有効な拠点です。一方で、その権利が攻めの心を持っていない人たちの手に渡ると、単なる癒着と堕落の温床となります。今の日本の記者クラブは残念ながら後者です。高田さんにとって記者クラブという拠点があることは、警察取材をしていく上でどの程度重要なものだったのでしょうか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第61回

北海道警裏金問題から見える記者クラブの監視能力と疲弊【中編】

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新聞と警察で交わされた不健全すぎる手打ちとは?

神保 後々になって高田さんを冷遇した北海道新聞の幹部たちが、その時は"宣戦布告"をよく許しましたね。

高田 少なくとも当時は「警察とケンカするつもりか?」とたしなめるような人はいなかったし、社内の雰囲気も「やってやろう」という感じでした。きちんとした取材をして、裏付けが取れて、ニュースの確度も文章もしっかりしていれば、紙面に載っていましたね。

神保 そして04年12月、道警が職員3000人以上の処分を発表。北海道新聞の全面勝利です。ところがその後、風向きはどのように変わっていったのでしょうか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第61回

北海道警裏金問題から見える記者クラブの監視能力と疲弊【前編】

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ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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今月のゲスト
高田昌幸[ジャーナリスト]

──03年に発覚した、北海道の旭川中央警察署の裏金問題は、その後、北海道警察全体で行われていた組織ぐるみの問題へと発展した。当時、北海道新聞のエース記者であり、裏金問題報道チームの指揮を執っていた高田氏は、今年6月に退社、フリージャーナリストの道を選んだ。その裏には、道警と道新の癒着ともいえる、不健全な関係があったと高田氏は語る。さらに、昨今、メディアの既得権益だと批判される記者クラブには、一方で権力の監視機関として機能させることもできると続ける──。そんな同氏と共に、警察とメディアの関係について、深く考えてみたい。

神保 今回のテーマは「警察とメディア」です。裏金問題など、警察の腐敗が明らかになった時、普段、メディアが警察と持ちつ持たれつの関係にあることが、その追及にどう影響をするのか。この問題は、ジャーナリズムが生き残れるのか、という根本的な議論にもつながります。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第60回

貧困、会社人間、国家の罠......映画でわかるアメリカの暗部【後編】

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ハリウッドが手がけたウォール街批判映画の意味

神保 『フェア・ゲーム』のアメリカでの公開は、10年。ブッシュ政権とイラク戦争というテーマは、マイケル・ムーアなども取り上げてきましたが、ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン主演というメジャーな作品で描かれるのは初めてのこと。過去の話ではあるけれど、チェイニーなど、まだ隠然たる力を持っている人物も多数登場する。このタイミングで出てきたのは、何か背景があるのでしょうか?

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映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』

マル激 TALK ON DEMAND
神保哲生×宮台真司の
マル激 TALK ON DEMAND
『ゲストと共に“ワンテーマ”を掘下げるネット発の時事鼎談。』

宇野常寛の批評
宇野常寛の
批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』


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