マル激 TALK ON DEMAND
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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第59回

野田政権が掲げるべき増税の対価と日本の未来像【中編】

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財政赤字と増税......現政権が示すべきビジョン

神保 野田政権について見ていく上で、まず増税の是非について議論したいと思います。日本の消費税は現在5%。それでも日本では国民皆保険があり、生活保護や老人医療保険など、いろいろ課題はあるにせよ、先進国としてはある程度の社会保障が備わっているといえるでしょう。一方で、この社会保障が、現在の財政を圧迫している最大の要因です。「小さな政府」が国是となっているアメリカよりも低い消費税で、社会保障は市場任せのアメリカよりも充実した公的社会保障を提供しているわけですが、前の菅首相が消費税について、つい「10%」を口にしたが最後、たちまち参院選で大敗してしまいました。日本ではこれまで増税をして支持率が下がらなかった政権はありません。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第59回

野田政権が掲げるべき増税の対価と日本の未来像【後編】

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失われた20年に対する「新しい成功への道」

神保 ただ、日本には一般の有権者が選挙か世論調査以外の方法で、政治に参加したり、自分たちの政治的意思を表明する場が極端に少ないですよね。まだ民主主義が未熟なのかもしれませんが、元々一般の市民は政治との接点が少なく、いわゆる民意を吸い上げるチャンネルが整備されていないと思う。さらにマスメディアの政治報道が政局一辺倒というひどい有様です。

宮台 以前、マル激で市民科学者について取り上げ、「民主の科学化」「科学の民主化」の両方必要という話になりました。「民主の科学化」とは、〈引き受けて考え〉た上で〈知識を尊重する〉ことです。〈任せて文句を言う〉だけに終わったり〈空気に縛られる〉ようじゃいけない。「科学の民主化」は、科学を理解可能な形で伝え、人々が科学的に思考できるようにすること。例えば内部被曝によるがん増加。「統計的に有意なデータはない」と言われますが、「数値が微妙すぎて」確たることは言えないのでなく、「サンプルが少なすぎて」母集団について推定しきれない。母集団の有意な推定が可能になるサンプル数が得られるのは物凄い大災害が起こった時。でも僕らが追求したいのは、大災害が起こる前に原発をどうするか決めること。「統計的に有意なデータがない」から何もしないのは、合理的じゃない。「民主の科学化」には「科学の民主化」が不可欠。そこではマスメディアが、社会心理学者ラザースフェルトの言うミドルマンを擁し、アカデミズムとピープルを媒介すべきです。ところが日本のメディアは、高い専門性を有したミドルマンを欠きます。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第58回

ブータンと水俣市に学ぶ震災後のあるべき日本の姿【後編】

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日本を幸福にする「地域の価値」の再評価

神保 日本とブータンの違いは、よくわかりました。それでは、日本はどうすればブータンのような幸せな国になれるのか、そのために今、我々がすべきことはなんなのかを考えていきたいと思います。それを考える上で、役に立つかもしれない事例として、日本にもブータンのように、「地域の価値」を作り出すことに成功している熊本県水俣市の事例を草郷さんはよく紹介されていますね。

草郷 水俣は、日本の経済発展によっていい思いをした時代もありましたが、それにより大きな十字架を背負った町だといえます。十字架とはもちろん、工場の誘致によってもたらされた水俣病のことです。

 14年間をかけた汚染土壌の処理プロジェクトが90年に完了した後、行政から「今後の水俣をどうしたらいいか考えよう」という動きが出てきました。市民の中にも自発的に地域の今後を考えるグループが生まれ、議論が活発化する中で、92年に水俣市は日本初の「環境モデル都市づくり宣言」を行いました。環境でダメージを受けた水俣だからこそ、環境モデル都市に生まれ変わらせよう、という宣言です。そして、後にくしくも政府が「環境モデル都市」制度を作り、08年に水俣は最初に選ばれた6つの都市に入りました。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第58回

ブータンと水俣市に学ぶ震災後のあるべき日本の姿【中編】

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なぜブータンの人々は幸福を感じるのか?

宮台 キーワードは"自信"です。亜細亜主義の嚆矢・岡倉天心とも親交が深いタゴールは、対華二十一箇条要求を悪しき西欧摸倣だと批判、中国の自信と日本の自信のなさを対比しました。亜細亜主義者には、タゴール同様に本気で欧米はアジアに劣ると考える者がいました。大川周明です。博覧強記な大川は日米開戦直後にNHKラジオで英米文化と英米外交史を講義、『米英東亜侵略史』として出版します。そこで彼は英米のアジア侵略史を語り、欧米列強の野蛮と劣等を言い切ります。背後にあるのは、イスラムを含めたアジア文明への絶対の自信。日本は戦後それを失いましたが、ブータンには今も根付いています。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第58回

ブータンと水俣市に学ぶ震災後のあるべき日本の姿【前編】

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ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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今月のゲスト
草郷孝好[関西大学社会学部教授]

──東日本大震災から半年がたった現在、わずかではあるが復興事業は前へ進みつつあるように思われる。だが、日本全体を覆う暗い陰は、いまだ晴れる様子はない。そんな中、「日本を本当に幸せな国に変えるには、ブータンと熊本県水俣市の取り組みを学ぶべきだ」と、関西大学社会学部の草郷孝好教授は語る。国民の生活水準だけを見ると、決して豊かとはいえないアジアの小国ブータンは、高い国民総幸福量を誇るが、水俣市は長い間、公害に悩まされてきた都市として知られている。お金や物資に頼らない"本当の幸せ"とは、どのようにもたらされるのだろうか? 震災後のあるべき日本の姿について、考えてみたい。

神保 東日本大震災を奇貨として、日本をより幸せな国にするために、我々は何をすればいいのか。今回はその一例として、ヒマラヤ山脈麓の小さな国・ブータンと、意外な共通点がある熊本県水俣市の取り組みを見ていきたいと思います。

 まず、ブータンといえばGNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)が有名ですが、宮台さんはどんなイメージを持っていますか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第57回

スマートグリッドが実現しない日本型民主主義の悪しき慣習【前編】

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ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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今月のゲスト
高橋 洋[富士通総研経済研究所主任研究員]

──通信と電力を融合させ、より効率的に電力を供給できるシステム----それがスマートグリッドだ。情報と通信技術を融合させ、世界各国へ網のように張り巡らせたワールドワイドウェブを例えに挙げられることも多いが、スマートグリッドとは「供給の分散化」「需要の自律化」「蓄電池の発達」を結ぶ網のことだと考えられている。だが、独占企業ともいえる日本の電力会社にとって、「スマートグリッド=電力の自由化」ととらえられているため、その見通しは決して明るくない。「原発は是か非か」という二元論に陥りがちなエネルギー問題を、また別の角度から考えてみたい。

神保 マル激では、原発や電力の自由化、再生可能エネルギーなど、電力に関するさまざまなテーマを取り上げてきました。その中で、日本はこれまで電気の発電も送電も何もかも電力会社10社にすべてを「おまかせ」してきたことがわかった。日本の電力は地域独占ゆえに送電網はしっかりしているし、停電も少ないが、その一方で、我々はその体制が多くのリスクを抱えていることに目を向けてきませんでした。結果として、電力会社に権益も権限も集中し、誰も抑えられないガリバー産業になってしまった。今回は、エネルギー政策に詳しい、富士通総研経済研究所主任研究員の高橋洋さんをゲストに迎え、原発問題が起きる前から注目を集めていた新たな電力配分システム「スマートグリッド」を取り上げながら、この先、日本のエネルギーをどう運営していくべきかを議論したいと思います。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第57回

スマートグリッドが実現しない日本型民主主義の悪しき慣習【中編】

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スマートグリッドはなぜ日本で浸透しない?

神保 ここからは世界に目を向けて、スマートグリッドの普及状況を見ていきたいと思います。アメリカやヨーロッパではスマートグリッドが日本より普及しているものの、まったく違う位置づけになっているそうですね。

高橋 アメリカでは、そもそも送電網自体の設備投資が遅れています。アメリカは人口が増加しており、需要が増えているのに供給力が追いつかないという状況です。そのため、消費者の側で電力消費をコントロールしてもらおう、という発想になっている。大規模な投資をして新たな発電所を造るよりも、メーターを置き換えて、需要者にインセンティブを与えたほうが設備投資も少なくて済むのではないかと考えているのです。オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策も絡み、09年から、スマートメーターの設置がかなり進んでいます。政府は電力会社にタックス・インセンティブや補助金を出しており、これには景気刺激策という側面もあります。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第57回

スマートグリッドが実現しない日本型民主主義の悪しき慣習【後編】

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悪しき民主主義に帰結するエネルギー問題の行く末

神保 最後に一点。国内に目を向けると、現在日本の首相は開き直ったように「再生可能エネルギー促進法が通らないのなら、解散も辞さないぞ」と言って、この問題に勝負を賭ける意思を見せています。しかし、原発事故が現在進行形で起きている日本で、首相がドイツから20年も遅れてエネルギー政策を転換すると主張しても、依然として反対意見が根強く残っている。実際、世論調査を見ても、日本では脱原発については支持・不支持に意見が割れてしまっている。世界の人々は、この結果を見て驚いていると思います。ほかの国が福島を見て原発から相次いで撤退している中、当の日本だけはなんとか原発を再開しようとしているわけですから。これは、どう理解すればいいのでしょうか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第56回

国後・択捉は日本の領土なのか? アメリカの去勢と歴史的歪曲【後編】

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ダミーはエネルギー政策をどこで見誤ったのか?

神保 日本が抱えている領土問題は、我々が理解していた話と明らかに違うことがわかりました。政府は北方領土関連で毎年億単位の広報予算を使い、国民に喧伝しています。その中で重要なのは教科書。学習指導要領の中では「領域の特色と変化については、北方領土など我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること」と定められていて、実際の運用としては、北方四島は日本本土と同一色で表示。僕らはその教科書を読んで育ってきたから騙されてしまったのだと思うけど、これも原発問題と共通点がある話です。

 更に言えば、これを伝えない記者クラブメディアの問題がある。新聞、テレビなどの記者クラブメデイアでは、領土問題は基本的に霞クラブと呼ばれる外務省記者クラブの管轄になります。外務省の記者クラブに入れてもらって、さまざまな便宜を受けているメディアが、こんな重要な問題で外務省、ひいては政府の方針に真っ向から反する報道ができるはずはない。しかも、大半の国民は長年の政治宣伝のおかげで、フィクションを心底信じているから、真実を報じなくても批判されることはない。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第56回

国後・択捉は日本の領土なのか? アメリカの去勢と歴史的歪曲【前編】

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ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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今月のゲスト
孫崎享[元外務省国際情報局長]

──昨秋、尖閣沖で起こった中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件後、ロシアのメドヴェージェフ大統領が北方領土を、そして今年に入っても韓国の国会議員3人が国後島を訪問した。ここに来て日本の領土問題が騒がしくなったが、「政府、メディア、アメリカのあり方」という点、日本の領土問題と原発問題は類似している、と本連載の司会・神保哲生氏は語る。またそれに同調した元外務省の孫崎享氏は、北方・尖閣をはじめとする領土問題はフィクションに踊らされたタブーが根底にあると指摘する。原発問題に揺れる今だからこそ見えてくる領土問題について、日本が抱える病巣とともに"真の問題点"を浮き彫りにする。

神保 東日本大震災の発生以来、マル激では防災や原発など震災関連のテーマを通して、日本のさまざまな問題点を見てきました。今回は思い切って、直接震災とは関係がないテーマ領土問題を取り上げます。ただし、これも中身を見てみると、政府の対応やメディアのあり方、そしてアメリカとの関係などで、震災、とりわけ原発問題と共通する構造的な問題がその根底にあるように思います。

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