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第1特集
排除アートの上で寝るつらさ=SMの快楽?

制作・鑑賞の倫理を問う排除アートのアート

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排除アートは本来「アート」の定義に含まれない存在だが、“排除アートを題材にしたアート作品”を制作したアーティストがいた。

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小寺創太「調教都市」展(Token Art Center、2022年)の会場風景。(撮影/松尾宇人)

“排除アートを題材にしたアート作品”を制作・展示したのは小寺創太氏。展示のタイトルは「調教都市」だ(2022年3月5日〜4月3日、Token Art Centerで開催)。

その内容は、新宿地下道や渋谷「ウェーブの広場」などの排除アートをモチーフとした台座(美術作家の吉野俊太郎氏に制作委託)に、SMの拘束具を身にまとった小寺氏本人が会期中ずっと横たわり続けるというもの。さらに展示スペース内には、小寺氏が町中の排除アート上に実際に横たわった写真(撮影/藤江龍之介)なども展示された。排除アートが身体に与える苦痛をSMの喜びに置き換えたアイロニカルな展示なのだ。この展示を実施した背景や鑑賞者の反応を小寺氏に伺った。

まず小寺氏が排除アートの存在を知ったのは、20年12月にウェブ版「美術手帖」に掲載された五十嵐氏の記事。小寺氏は当時ツイッターで「排除アートの上で寝るマゾい作品つくろうかな」とつぶやいていたように、展示のアイデアはまず「笑えるネタ」として思いついたものだった。

「その後はアイデアが浮かんだ理由を整理し、『以前から自身の身体を展示物にしてきた自分が排除アートに着目したのは、排除アートが作品の台座に見えたからだ』『普通の台座は作品を支え、受け入れるもの。でも排除アートはその上のものを排除する。であれば、上に乗るべきはマゾヒストだ』と考えました。また排除アートの記事を読んだときは『これは良くないものだな』と素朴に思いましたが、社会問題を正すようなアート作品を作ることには違和感がありました。そこで『社会問題を批判して英雄を気取っているアーティストの気持ちよさ』を上塗りしてみようと考えました」

その気持ちよさをマゾヒストの喜びと重ね合わせているわけだ。なお排除アートの台座の上に寝続けること(開場中の7時間ずっと!)は多大な苦痛で、トイレにも行かなかった小寺氏は展示中に何度か失禁したという。

その展示は一部のSM愛好家らから好評を得たり、新聞記者から「ホームレスにも取材したんですか?」と真っ当かつ真面目な質問を受けたりと、各種の予想外の反響も呼んだが、「ベタに社会問題批判として受け取る人が想像以上に多かった」と小寺氏は話す。

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