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第1特集
アーティストからレーベル、事務所まで――音楽関係者たちの本音を探る

2024年上半期を振り返る 音楽業界ニュース掘り起こし

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――アーティストのリリースは配信のみ、また音楽ストリーミングサービスが常態化してからは、より移り変わりが早くなった音楽業界。常にさまざまな変化を求められている業界だが、本稿では音楽を主戦場に、鋭い考察をしたためる文筆家のつやちゃんが上半期の音楽ニュースを総ざらい。

【NEWS1】
業界最大手が撤退から驚異のスピードで再契約へ
新しいサービスを暗中模索するもTikTokをスルーできない理由

今年1月31日、ユニバーサルミュージックグループ(以下UMG)がTikTokとの包括契約を終了したことを発表、業界に激震が走った。UMGは再生数に応じた「アーティストとソングライターへの適切な報酬」を主張したところ、双方の意見が噛み合わず、それに伴い、UMGに所属する全アーティストの楽曲がTikTok上で突如ミュートとなり、無音のシュールな動画がたくさん生まれるという事態に。新曲のプロモーションで国内のベテラン・アーティスト本人がダンスチャレンジに挑戦している動画もあった中、現場レベルではかなりの混乱を来したようだ。しかし、UMGは5月1日にTikTokと新たなライセンス契約を締結し、3カ月間の空白を経て、再び楽曲が使用可能となった。

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急成長のアプリ「Stationhead」は個人がラジオステーションを作り、世界へ放送を発信することができる。SpotifyやAppleとも提携しているので、著作権を侵害せずに配信できるのが魅力ともいえる。

その件について、メジャーレーベル勤務のA氏が語る。

「アメリカではTikTok規制法案が成立したこともあり、もう少し時間がかかるだろうと思われましたが、あっという間の再契約でした。正直、UMGが提示した条件にバイトダンス(TikTokの運営会社)側が合意しないという関係者の話も聞いていますが、バイトダンスもUMGが持つカタログの量を無視できなかったんでしょう」

両者ともに持ちつ持たれつ、といったところだろうか。音楽事務所社員B氏も「現状、TikTokを凌駕するサービスやツールが出てくるのは考えにくいです」としつつ、「業界内で最近話題になっている〈Stationhead(ステーションヘッド)〉というサービスに注目しています。インターネットラジオのアプリで、Number_iがミニアルバムのリスニングパーティを同サービスで行ったばかり。YouTubeでいうところのメンバーシップの機能に近く、なかなか不特定多数には届きにくいため、ファンダムで盛り上がるためのツールと捉えています」といったトピックについても語ってくれた。

昨今、ポッドキャストをはじめとして音声メディアが再び大きな盛り上がりを見せているのは周知の通り。目的に応じていくつかのメディアを使い分けることで、音楽を届けたい層に届けていくことが重要になってきている。

【NEWS2】
ストリーミングサービス収益化の仕組み
Spotifyが規約を改定 収益化はよりシビアに

大きな議論を呼んだニュースといえば、Spotify(以下、スポティファイ)の収益分配ルール変更も外せない。「年間再生数が1000回に満たない楽曲には支払いをしない」という内容で、それに該当する数はスポティファイで公開されている全曲の62%に当たるという。SNSでは「著名アーティストへの優遇措置だ」という声が相次いだ。

しかし、このルール改変自体は昨年の11月にすでに発表されていたもので、クリーンに稼働しているアーティストに適切に収益を分配するためという狙いがあった。同時にスポティファイ側は、フェイクストリームを取り締まる目的で、中身のない「ノイズトラック」(※主に不正再生で収益を得る楽曲)も大量に削除。プラットフォームとしての機能をコントロールするためにさまざまな手を打っている最中だ。

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Spotifyでもっとも再生された国内の楽曲はYOASOBIの「アイドル」で、史上最速の2億回再生を記録(現在は3億5000万回を突破)。Spotifyは1回再生あたりの収益が低すぎると言われているが、規約改定で変化は見られるだろうか。(写真:Dana Jacobs/Getty Images)

レーベル側はどのような反応だったのだろうか。メジャーレーベル勤務のC氏に聞いたところ、「業界的には特に驚きはない」との回答。というのも、昨年YouTube収益化の規約が刷新され、遅かれ早かれほかのストリーミングサービスも追随することを想定していたからだ。また、年間1000回再生に満たないアーティストへの支払いはゼロという件についても、「そもそもその再生回数で得られる利益は微々たるもの。むしろ、そうしたコンテンツの報酬をゼロにする代わりに、きちんと活動しているアーティストへの報酬額を増やすことは納得がいきます」と話す。

対してインディペンデント・アーティストは、最近はまずSoundCloudなどで曲を公開し、ヒットした段階で大手サブスクリプションサービスへ楽曲を移行するケースも多い。アーティスト活動のフェーズや規模感によって、いくつかのプラットフォームを使い分けるような方法が浸透しつつある中、収益ルールも刷新が必要なのかもしれない。また、C氏は異なる観点での問題を提起する。

「急激に再生回数が伸びた場合、いわゆる不正再生課徴金ルールで、スポティファイ側の判断によってアーティスト自身やレーベルへ課徴金請求が行われます。昨今はTikTokで火が付きストリーミングサービス上での再生回数が飛躍的に伸びることがあり、その実態が可視化されていれば不当な請求が行くことはないと思います。ただ、推し活の一環でインディペンデントのアーティストの再生回数が著しく伸びたり、敵視しているアーティストの楽曲をあえて再生しまくり課徴金対象にする、といった事例に対して、スポティファイがどのような判断を取るかは注視されています。すでにApple Musicはストリーミング改ざん再生に対しては措置を執っていますからね」

音楽を取り巻く状況は刻一刻と変化しており、アーティスト&レーベル、ストリーミングプラットフォーム、リスナーという三者が、常に変わり続ける状況に合わせて最適な形を模索していく必要がある。一方、実は最近の兆候として、ストリーミング一辺倒で語れないような動きも見えてきている。若年層が、CDに注目し始めているのだ。フィジカル盤を有線のイヤホンで聴くという光景は、Y2Kリバイバルが興っている昨今において“レトロで新しい”音楽への接し方。アナログ人気はすっかり定着したが、CDがリヴァイバルするのも時間の問題だろうか。

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