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第1特集
薄まらないヒップホップ濃度

WILYWNKAインタビュー 原点に立ち返り完成した己を鼓舞するための聖書

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――4作目となるアルバム『90's Baby』をリリースしたWILYWNKA。隆盛を極める昨今のヒップホップ・シーンにおいて、彼はどのようなスタンスで音楽と向き合ってきたのか。その本心を、探る。

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(写真/cherry chill will.)

「曲を作ってライブをがんばってるだけで、何もしてないですから」──これは本誌2020年4・5月合併号に掲載されたWILYWNKAがインタビューで残した言葉だ。それから4年、再度本誌のインタビューに応じた彼は、まったく変わらぬテンションで「曲を作ってレコーディングして、MVでかっこつけて、ライブで誰よりもヤバいショウを見せる。シンプルにこれだけ」と語った。言葉数こそ増えたが、根底にあるものは変わっていない。『EAZY EAZY』(20年)と『NOT FOR RADIO』(22年)の2枚のEP、間を挟んだ21年には変態紳士クラブの一員としてメジャーレーベルと契約を交わし、誰も真似することのできないこの快進撃は、サードアルバム『COUNTER』(22年)として実を結んだ。

それから2年、WILYWNKAが4枚目となるアルバム『90's Baby』を完成させた。「余計なこだわりはなくなった。工場長は品質のいいネジをいっぱい作るだけっす」と述べる彼は、快活に話し始めた。

WILYWNKA(以下、W) アルバムとしてのリリースは2年ぶりくらいですかね、久々だったんですよ。ファーストを発売したときの「人生が変わっていくんじゃないか?」というドキドキ感、セカンドを発売したときに、チケットが売れてツアーをこなしてきた自分──実は、こんな当たり前かもしれないことに違和感もあったんですよね。『COUNTER』を発売してツアーが終わって空っぽになったらどうしよう、燃え尽きてしまった感覚になったらどうしよう。そうなったら伸びしろがなくなったことなんじゃないか? っていう不安。でも実際は、「もっとやりたい! ああしたいこうしたい!」だったんで救われました。

まだ20代だし、尖っていきたいじゃないですか。良い尖り方と悪い尖り方、どっちもあると思うんですけど、とにかく自分としては外側を考えず、「ラップをする」だけ。『COUNTER』のリリースでラッパーとしての姿勢や意識はより明確になったし、原点に立ち返ることができたから『90's Baby』に辿り着くことができたと思います。

――原点に立ち返れたからこそのタイトルなんですね。

W シンプルに1997年生まれ。中1でスケボーとヒップホップに出会ったクソガキは、G・ユニットから聴き始め、高校になってエイサップ・ロッキーやタイラー・ザ・クリエイター、ジョーイ・バッドアスとかをリアルタイムで追っかけてきた。良きご縁もあって、面白い先輩たちにそのカルチャーをさらに深く植え付けてもらいました。そこでDJプレミアやジ・アルケミストといった先人たちを後追いし、聴いてもらったらわかると思うけど、僕の音楽性はそうした経験からできている。それをすべて含めて、僕のキャリアは「90's ベイビーだな」と。だからドリルやトラップといった今の10~20代が聴くようなメインストリームのヒップホップ中毒ヘッズたちからしたら古くさく感じられるかもしれんけど、「あれ、ちょっと待って……どっかで聴いたことない? あ、この曲って、あれサンプリングしてるんちゃう?」みたいな聴き方をしてもらってもいい。逆に30歳以上の昔ながらヒップホップOGの先輩たちには、「おお、懐かしいやんけ。これやこれや。ええやん」って感じてもらえたらうれしい。「ヒップホップミュージックは若者が牽引し、夢をつかむもの」──この言葉に間違いはないけど、ヒップホップミュージックそのものは若い者だけのもんじゃない。僕は自分の作品はすべての層に届いてほしいと思っているんで。

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(写真/cherry chill will.)

――今回のアルバムは、ヒップホップ文化と出会ったときの初期衝動を、現在進行形のWILYWNKAのセンスで最善の形に落とし込んだ作品、という印象を受けました。

W ファーストコンタクトのビリビリは今でも残ってますからね。音楽だけじゃなくグラフィティやダンスとか、いろんなものを好きになった。その感覚を今のキッズに感じさせたい。まあ、今の時代だったら「K-POP最高!」って10代も多いんだろうけど、やっぱラッパーとしては「ヒップホップかっこいい」って思わせたいですからね。

――楽曲を制作する上で、ビートはどのように選びましたか?

W 今回はDJ UPPERCUTさんとTaka Perryさんというデカい二本柱のプロデューサーを軸に、BLさん(BACHLOGIC)やENDRUN、Slow Jamz、Yung Nickにアルバムに足りない部分を補ってもらいました。Taka Perryさんには僕が持つポップでキャッチーな部分をいい感じに引き出してもらったんですが、それだけじゃいいアルバムにはならない。そこでUPPERCUTさんに僕の音楽的にコアな部分を抽出してもらった感じですかね。Taka Perryは間口を広くする横幅を広げ、UPPERCUTは深みや渋みの縦を担当、といった形です。

――具体的なトラックに対するリクエストは投げましたか?

W ありもののトラックじゃなく、リファレンスを出してほとんどイチから作ったものが多いんですよ。制作前にディスカッションをして、今の自分が出したいものを伝える作業。例えば、タイトル曲の「90's Baby」だったらトータル「No One Else」のリミックス、「Gorgeous」だったら現在大問題をお抱えになってるP・ディディ「I Need a Girl Part 2」をリファレンスとして出す。僕が生涯一番大好きな曲は50セントの「21 Questions」なんですけど、ひとつのリフのワンループでドラムとベースが際立ってるシンプルな作りのサウンドがホント好きなんですよ。余計なものがない作りなのに、クールでポップなムードを作ってる。僕がやりたかったことって、これやんと。年々ヒップホップも枠も幅も広がってきて、サウンドもだいぶ多彩になったじゃないですか。おいしいイタリアンもフレンチも、なんなら中華も食べたい。わあすごいゴージャス! でも、結局は白米。「Excuse Me」(※今作からのリード曲)は、まさに「21 Questions」の影響ですけど、僕の中ではこれぞ白米的な曲なんですよ。ちょうどこないだ友達と「死ぬ前に何を食べたいか?」って話になったんですよ。「寿司? 死ぬ前に冷たい米はイヤちゃう? やっぱ白米にみそ汁 feat. 焼き魚と納豆」で落ち着いたんです。その感覚に近い。難しいことは何もせず、シンプルに。

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(写真/cherry chill will.)

――なんでもやれてしまうからこそ、シンプルに戻りたくなる。

W セカンド(アルバム)くらいからですかね、「もっと複雑なことしたい! 頭ひとつ飛び抜けたことしたい!」って向上心のせいで器用貧乏になってたんですよ。そんなんばっか考えてると、どんどんシンプルから離れて、まったくミートできなくなっていく。自然体でバット振ったら球も当たるはずなのに、強振りしすぎてマン振りの空振り。いや、空振ってきてはないんだけど(笑)、今回は原点に返る意味合いから、呼び戻した。その作業は結構大変だったけど、今回で久々に自然体のWILYWNKAに戻れたと思ってます。

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