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丸屋九兵衛の「バンギン・ホモ・サピエンス」【30】

【Drake】カナダからの絶対王者

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――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!

ドレイク

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(絵/濱口健)

08~09年はSZAと交際、09~16年はリアーナと付き合ったり別れたりを繰り返していたドレイク。「おとぎ話の“幸せに暮らしました”という展開にはならなかったよ」とは彼自身の弁。17年、フランス人芸術家女性との間に息子が生まれた。

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陰謀論系の某おっさんラッパー(日本人)がBTSのことを「ヒップホップではないティーンポップ」と断言していた頃のことだったと思う。あるファンがXで「BTSは世界でもっとも人気があるグループ」と主張したところ、それに対してこういう趣旨のリプライがあったのだ。「一番人気はドレイクでしょ」。

先のBTSファンが「グループ」という土俵で人気番付を語っているところに、あっさりソロラッパーを持ち込む読解力には恐れ入谷の鬼子母神だが、それでもこのやりとりは当方の虚を突くのに十分であった。かつて雑誌編集者だった頃に「カナダ産の不思議な才能」「等身大の恋愛がテーマの非主流派」「ヒップホップ界のマテリアリズムに抗う」という文脈で語られていたドレイクが、血の巡りが悪そうなSNS上の御仁にも「一番人気」と認められるほどビッグになったとは。それどころか、チャートの絶対王者となったがゆえにモス・デフから「ヒップホップというよりは商店街のBGM」と言われ、「ゴーストフェイス・キラーがもっとも憎むラッパー」番付ではクリス・ブラウンに次いで「オーブリー」として2位にランクインしたこともあり。さらに、いくつかの舌戦を経て、今年4月から5月にかけてついにケンドリック・ラマーとの濃密なディス合戦に至る(そしてスヌープ・ドッグに「2人ともリリックが素晴らしい」と誉められる)、と。これは、ドレイク自身にとっても実に長く遠大な旅路だったのではないかと思うのだ。

オーブリー・ドレイク・グレアムは1986年10月24日、カナダ最大の都市、オンタリオ州のトロントに生まれた。母は東欧ユダヤ系で学校教師、父は黒人。だが、カナダ黒人の典型と違って、ドレイクはジャマイカ系にあらず。なぜなら父デニス・グレアムはテネシー州メンフィス出身のアメリカ黒人ドラマーだから。たまたまトロントのコンサート会場で出会った女性と結婚し、ドレイクが生まれるのだ。このデニスは元スライ&ザ・ファミリー・ストーンのラリー・グレアムのハーフブラザーなので、つまりドレイクはラリー・グレアムの甥ということ。さらにアル・グリーンのソングライターであるティーニー・ホッジズはデニスの従兄弟であり、英語圏の感覚ではドレイクの「アンクル」となる。

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