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写真時評~モンタージュ 現在×過去~

黒いヴィーナス

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1927年の米「ヴァニティ・フェア」誌に掲載された、寄り目のジョセフィン・ベイカーの写真。(写真:George Hoyningen-Huene/Condé Nast via Getty Images)

 特定の色をした人間にしか自由をくれない自由の女神像よりも、何も約束しないエッフェル塔のほうが好き。

「狂瀾の時代」と呼ばれた1920年代のパリで、ミュージックホールの女王となったダンサー、ジョセフィン・ベイカーの言葉だ。1906年、米セントルイスでユダヤ系スペイン人の父とアフリカ系アメリカ人の母との間に生まれたジョセフィンは、25年、アメリカでの差別や貧困から逃れるかのようにレヴュー団「ルヴュ・ネーグル(ニグロ・レヴュー)」の一員として19歳でパリに渡った。

 当時のパリでは、戦争が終わった後も帰国しない元兵士たちがあふれていただけでなく、世界各地から芸術家や文学者が流れ込み、新しく自由な価値観が模索されていた。アメリカのジャズやチャールストンというダンスが人気を博し、「メラノフィリア(黒い肌愛好)」現象が起きていた国際文化都市パリには、「黒いヴィーナス」と称されるスターが誕生する土壌が用意されていたように見える。

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