サイゾーpremium  > ニュース  > 芸能  > 芸能プロの老舗・ワタナベプロの底力
ニュース
【premium限定連載】芸能ジャーナリスト・二田一比古の「週刊誌の世界」

<芸能プロ近代史2>日本の芸能界の礎を作った!老舗・ワタナベプロの底力

+お気に入りに追加
1808_mori.jpg『「森進一ベスト~歌手生活50周年記念盤~」』(ビクターエンタテインメント)

「まるで切れた凧」と揶揄されている剛力彩芽(25)。実業家・前澤友作(42)との恋はエスカレートする一方。剛力の所属事務所「オスカー」はタレントの危機管理能力を問われているが、既にお手上げの状態という。

「事務所が25歳まで恋愛禁止を掲げた結果、解禁になった途端、一気に恋に弾けてしまったのが剛力。恋愛はともかく、せめてSNSでの余計な発信をやめさせるべきですが、前澤は芸能界の人間ではないうえ、発信能力もある。ヘタに事務所が介入すれば、そのまま事務所の話を発信されてしまう危険を伴う」(芸能関係者)

 昨年は武井咲(24)がEXILEのTAKAHIRO(33)とデキ婚。一説には「結婚するにはデキ婚しかなかった」とまで言われている。今はタレントを縛れば逆に反発を買う恐れが生じ易い。そんな中、プロダクション経営の難しさを如述に垣間見せたのが剛力の恋愛騒動である。

 芸能プロの歴史は1960年に遡る。ジャズミュージシャンだった故・渡辺晋氏が、それまでタレントに仕事を斡旋し出演料の一部を取るだけだったプロダクションを変革。タレントの収入や福利厚生をしっかり確保して芸能人にも市民権をという目的で今のプロダクション形態が作られた。

 通称「ナベプロ」は歌手だけでなく作詞家、作曲家も傘下に収め、系列会社も設立。後に「ナベプロ王国」と呼ばれるまでの巨大事務所を作り上げた。クレージーキャッツ、ザ・ピーナッツを皮切りに今も現役で活躍する森進一、布施明、沢田研二らを輩出した。ナベプロ出身の中尾ミエにかつて話を聞いたことがある。

「福岡から上京してきた私に社長は自宅を寮のようにして居候させてくれた。家族の一員のように生活できたことは今でも感謝しています。給料の管理もしてもらい、将来の為に貯金してくれた。その貯金で家を建てることもできました。年頃になりボーイフレンドができると、外は危ないと社長の家がデート場でした」

 ナベプロはタレントだけでなく社員にも家を建てることを推奨。その為に土地を押さえるという財テクにも優れていた。土地を所有したことで思いがけない珍事に出くわしたことがある。ナベプロ所属のタレントの取材を巡って、住んでいた家の近くで聞き込みをしていた。近所の聞き込みは取材の基本。ところが、どこの家も「知りません」とにべもない。実は近所の家の大半はナベプロのタレントや幹部の家だった。

 取材は事務所に筒抜けだった。

 ナベプロの影響を受け、後発の大手プロも社長宅の居候だけでなく、マンションを借り上げて寮にしていた時代もあった。

 人気タレントを多く抱え、「ナベプロのタレントなくして番組はできない」と言われるまでに力を持ったナベプロは番組制作にも進出。日テレを中心に番組を制作し、テレビ界を牛耳るまでになった。現在に照らし合わせれば、「吉本興業」など大手事務所が番組制作に関わるようになった原点である。

 週刊誌などのメディアも最大の取材対象はナベプロ。全盛時のナベプロは有楽町の雑居ビルに部屋を借りていた。何度となく事務所を訪ねたことがある。雑然と並ぶ机。人息とタバコの煙が部屋中を循環している。片隅の机で取材していると、お客など構わず大声が飛ぶ。まるで喧嘩しているようだった。ナベプロ出身で後に巨乳軍団「イエローキャブ」を設立した野田義治氏からこんな話を聞いた。

「芸能界は声が大きいほうが勝ち。たとえ間違った意見でも大きい声のほうが正しくなる不思議な世界。大は小を兼ねるようなもの。自然にマネージャー連中は声が大きくなった。その癖が続いているから、タレントに対しても大声で怒ってしまう(笑)」

 スキャンダルの取材等で事務所ともめると、電話でも大きな声で怒鳴ってくるマネージャーもいた。声に圧倒され、聞くことも聞けずにいた苦い経験もある。

 大声はひとつの武器になった。タレントが増えればマネージャーらスタッフも増える。マネージャーはタレントを育てながら、自身の腕も磨く。タレントによってマネージャーを育てたのがナベプロだった。

 晋氏がやがて他界。奥さんの美佐夫人を中心に二人の娘が後を引き継いでいるが、ナベプロの凄さはそれだけではない。ナベプロで腕を磨いたマネージャーがそれぞれ独立。ドリフターズが所属する「井沢オフィス」。サザンや福山雅治のいる「アミューズ」ら現在の芸能界をリードする人物が独立して事務所を経営しているが、暖簾分けのように出身母体であるナベプロに対しての恩義は欠かさない。友好関係を続け、仕事の協力だけでなく、いざとなればナベプロのために一肌脱ぐ。ジャニーズから独立した元SMAPの3人と飯島三智氏は未だにジャニーズとは犬猿の仲。同じ釜の飯を食った仲間との絆を大事にするナベプロとは大きく違う。

 タレントの管理、育成法でもナベプロの伝統は今も生きている。

 次回はナベプログループのタレント管理と売り出し方を紹介する。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年9月号

戦争と平和

戦争と平和
    • 平和を願った【ジャニー喜多川】の戦後史
    • 【スピルバーグ映画】が訴える戦争
    • アメリカの【アトミック・カルチャー】
    • 【PTSDになった日本兵】の悲しき境遇
    • 【BTSDアメリカ兵】を描いた傑作映画
    • 米軍では反発も…【LGBT自衛隊員】の憂鬱
    • 戦争を金に!【トランプ】の魂胆
    • ドラッグ、殺人【米ラッパー】の司法戦争
    • アイドルが歌う【反戦歌】と音楽業界
    • 【激戦地区】の異文化と気候の地政学
    • 【映画監督・塚本晋也】ベトナム戦争映画のトラウマの意義
    • 【映画監督・想田和弘】GoProで撮影された映画で観客が失神
    • 【映画監督・宮崎大祐】戦争の記憶を掘り起こす異常な暴力映像
    • 【ラッパー・Kダブシャイン】禁断のアメリカ史を描いたフィルムメーカー
    • 【イスラーム映画祭主宰・藤本高之】中東紛争に肉薄した3作品
    • 卍とハーケンクロイツ【ナチスと仏教】の結びつき
    • 国防としての【サイバーセキュリティ】

竹内渉、究極の"美尻"撮

竹内渉、究極の
    • 【竹内渉】が魅せた色香と素顔

NEWS SOURCE

    • 【関ジャニ錦戸】退所報道の舞台裏
    • 【ソニー】音楽ビジネス大改革の裏側
    • 【秋元司・内閣府副大臣】の疑惑とは

インタビュー

    • 【上原実矩】──"年金"で女優業に目覚める !?
    • 【田川隼嗣】──18歳が月9の現場で武者震い
    • 【釈迦坊主】──元ホストラッパーの光と闇

連載

    • 【RaMu】二郎デビューしたんです。
    • 【川上愛】スパイに間違えられたモデル
    • 【菜々子】が一番大事
    • 【動画メディア】の未来と情報発信のあり方
    • 【萱野稔人】人間は"教育"によって生かされている(後)
    • 高須基仁の/【テレビ】はもう終わった
    • 盆踊りに【使徒】襲来
    • 中国大富豪たちの【ポッドキャスト】
    • 【RIZE】逮捕で考える薬物とロック
    • 町山智浩/【おしえて!ドクター・ルース】90歳のセックス・セラピスト
    • ポピュリズム政策【MMT】は日本経済の救世主か?
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 笹 公人「念力事報」/帝国の翳り
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/マンガ『1122』ソリューションとしての不倫
    • アッシュ・ハドソンの「アングラ見聞録」
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 伊賀の里でビールを仕込む【忍者ブルワー】見参!
    • 幽霊、新しい大衆はもう猿を見ない。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』