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第1特集
SFマンガ家、海洋学者、プロダクトデザイナーが語るドラえもんの魅力【3】

【マンガ家・今井哲也】『のび太の恐竜2006』に見るリアリズムを追求した細部にわたる科学知識!

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(絵/沖真秀)

今井哲也(いまい・てつや)
1983年、千葉県生まれ。05年、「アフタヌーン四季賞」05冬の四季大賞を受賞しデビュー。第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞。

 ドラえもん映画で一番好きなのは『のび太の恐竜』【1】です。80年のオリジナルも、リメイク版の『のび太の恐竜2006』(06)も両方気に入ってるんですが、特にリメイク版が好きですね。

 正直、藤子F先生が亡くなってからのドラえもん映画にあんまり興味が持てなくなっていて。

 そんな中、05年にドラえもんの声優が一新。当時は、新しい声に違和感があるという意見がすごく出たんですけど、僕は当初から大賛成でした。なにより、先代と似た声優を使わない姿勢そのものが「これからは新しいドラえもんでいきます!」という制作側のメッセージじゃないですか。

 そんな心意気で挑んだ声優交代後、最初の映画が『のび太の恐竜2006』です。最新のアニメーション技術で表現を再構築しているのが素晴らしかった。タケコプターで空を飛ぶのはこんなにカッコいいんだと思わせてくれたり、ひみつ道具のデザインが絶妙にリファインされていたり。デフォルメのラインを崩さない範囲で、作画でここまでやるという挑戦。劇場で大興奮しましたね。

 リアリズムの追求も好きです。のび太たちは、卵から孵化したフタバスズキリュウのピー助を、白亜紀の北米から日本に運ぶわけですけど、その理由がすごい。「北米には異なる種類の恐竜がいるから、日本が生息圏のフタバスズキリュウは共存できない」。これ、今のクリエイターが泣ける邦画として作るんだったら、絶対に現地の恐竜と仲良くさせますよ。でも、藤子F先生は安易に「種族を超えた絆」を描かない。科学的な正しさを、そのまま描いているんです。

 ちなみにリメイク版では、『ジュラシック・パーク』(93)以降の学説を踏まえた恐竜の骨格を再現していたのも熱いですね。原作でゴジラみたいだったティラノサウルスのフォルムは、現代の定説通りに変更されている。原作の絵からは変えていますが、リアリズムを追求するというF先生の精神は、ちゃんと踏襲しているんです。

 ほかの大長編もそうです。『のび太とアニマル惑星(プラネット)』【2】(90)には、人間みたいな手を持って二足歩行するアニマル星の動物たちが登場しますが、彼らを見たドラえもんが興奮気味に、ものをつかめる手と二足歩行が可能な彼らの特異な骨格や身体的構造について説明します。のび太はポカーンとしていますが(笑)。

 最近のエンタメ業界って、この話は子どもにはわからないから入れない、みたいな風潮だと思うんですよ。『ドラえもん』のように、子ども相手だろうがごまかさないで語るのが大事なことなのに。

 あとマンガ家としては、もともと短編として描かれた『のび太の恐竜』を、あとから描き足して破綻のない長編にしたことが、とにかくすごいですね。あとから話を足して成立させた、という意味では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の2や3と同じですね。僕の中で『バック・トゥ〜』と『のび恐』は、80年代SFの最高傑作として並ぶ位置づけなんです!

 藤子F先生は自然や野生を人間の感情に寄り添わせて都合よく解釈したりはしません。だから大長編ののび太たちはよく自然の脅威に苦しめられますが、こんなふうに人間に対して非常にドライなのも、先生が生粋の「SFの人」だからでしょうね。

【1】「ドラえもん のび太の恐竜」
1980年公開の大長編第1作。原作のエピソードに加筆修正し、大長編第一作となった。06年に『ドラえもん のび太の恐竜2006』としてリメイク。

【2】「ドラえもん のび太とアニマル惑星」
1990年公開の大長編第11作。環境保護を強く押し出した一作。冒頭、ママが自然保護活動に参加するなど、ちょっと説教臭い。

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