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「汚い現実を濃縮した毒気がいっぱい!」【アートディレクター・若野桂】が魅了された"ひみつ道具"

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(絵/沖真秀)

若野桂(もしの・かつら)
1968年、岐阜県生まれ。アートディレクター。映像作家。01年に発売されたAIBOの工業デザインや、国際的なプロジェクトを多数手がける。

『のび太の恐竜』(80)に出てきた「桃太郎印のきびだんご」に憧れていました。恐竜を手なずけて、言うことを聞かせるあれです。僕、農家の育ちで、いろんな動物と遊んでたんですけど、いうことを聞かない動物もたくさんいて大変だった(笑)。これだったら深いコミュニケーションが取れるなって。

 アートの分野にも身を置く者としては、「悪運ダイヤ」が気になりますね。他人に自分の不幸をなすりつけることのできる恐ろしい道具ですが、「貴金属を欲しがる人はツイてない」という発想は面白い。見た目がきれいなものはつい欲しくなってしまうというのは、大人社会でよくあること。これ、完全に藤子F先生の毒ですよ。ダイヤモンドって、実際の生活では何の役にも立たないですしね。アートの収集にも通じるし、美の罪深さを象徴した道具です。

 そういった毒のある道具って、大人になってから政治を見ていると思い出しちゃうんですよ。例えば、押した人間が世界中でひとりぼっちになってしまう「どくさいスイッチ」、送り主の願いを無条件に聞かせる「Yロウ」、言った嘘がすべて本当になる「ソノウソホント」。夢いっぱいの道具も好きなんですけど、なぜか覚えてるのは、人間の欲に直結した、汚い現実を濃縮した道具ばかりで。

 つまり、童話や寓話で世相を風刺するように、大人が声高に言えないことをマンガで描いてるんですよね。「どくさいスイッチ」は、独裁が行きつくと自分に返ってくるという、救いのない教訓話ですし。ちなみに”賄賂” って言葉が新聞に出ると、僕は今だに「Yロウ」のシンボリックなY字型のロウソクを思い出します。

 あと「ソノウソホント」に関しては、今はやらかしちゃったあとに「嘘をほんと」にしようとする政治家が多いじゃないですか。カラ出張で号泣記者会見を開いた彼なんて、絶対使いたかったんじゃないかな(笑)。

「ドラえもん のび太の恐竜」
1980年公開の大長編第1作。原作のエピソードに加筆修正し、大長編第一作となった。06年に『ドラえもん のび太の恐竜2006』としてリメイク。

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