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第1特集
まとめサイトは違法行為なのか?【1】

巨大メディア「2ちゃんまとめサイト」が日本のオタクカルチャーを破壊する日

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――「転載禁止」問題で揺れに揺れてる2ちゃんまとめサイト。一般ニュースを幅広く扱う、月間数千万PVを稼ぐ有名サイトから、ある特定の分野に特化したまとめサイトまで、その数は知れない。風前のともしびなのか、どっこいまだまだ生き延びるのか? 「2ちゃんまとめサイト」の今後を占う!

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(絵/小笠原 徹)

諸悪の根源!?
2ちゃんねる

「ハッキング」から「今晩のおかず」までを網羅したネット社会のモンスター。現在、ひろゆきこと西村博之氏がどこまでかかわっているのか、実質の運営者は結局は誰なのか、今ひとつ不明である。まとめサイト台頭の影響もあってか、その広告収入は下がりつつある模様。14年2月に転載禁止令を発布。これが吉と出るか凶と出るか……!?

戦国時代はここでも続く
■アイドル系まとめサイト
女性アイドル系は、AKB48の社会現象化に端を発するアイドル戦国時代の盛り上がりと相まって、多数のサイトが誕生した。興味の対象(推しのアイドルグループ)が多く分散するためか数も多く、細分化されている。一方で、男性アイドル系のまとめサイトはいくつか存在はしているが、女性アイドル系ほどの盛り上がりはない。

若年層もみんな食いつく! 
■アニメ系まとめサイト
ゲーム同様に、このジャンルを扱った2ちゃんの板も書き込み数が多い。したがってそのまとめサイトも多く、若年層を中心としたアニメ人気の一般化も手伝ってアクセス数も多いようだ。実際、まとめサイトの中でもアクセス数上位に食い込む大手サイトもこのジャンルに存在。また、作品寄りではなく声優寄り、同人誌寄りなど、楽しみ方の違いで閲覧されるサイトも違ってくる。

「芸スポ」ながら形はさまざま続く
■スポーツ系まとめサイト
野球とサッカーは2大勢力を形成しているが、そのファンがすべて流入しているわけではない。ほかに競技ごとにいくつかのまとめサイトはあり、各サイトがそれぞれのあり方で展開されている。むしろ、スポーツネタは「芸スポ」というカテゴリーで存在し、芸能ニュースをミックスして扱われることが多い。

影響力は絶大!
■一般系まとめサイト
2ちゃんで最も多くの書き込み数があるとされる、ニュース系と雑談系の板の転載をメインとしたもの。運営者の趣味や戦略が反映されることもあるが、ジャンルを限定せず幅広いネタを扱う。一般的に、2ちゃんまとめサイトといえばこのタイプのサイトを指す場合が多い。スマホの普及と共に急速に一般化。その影響力は絶大だ。

人口過密の一大ジャンル
■ゲーム系まとめサイト
ネットカルチャーとの親和性の高さから、2ちゃんでもゲーム系の板には多数の書き込みがあり、そのためまとめサイトの数も多い。大手のサイトは、まとめサイト全体の中でもトップクラスのアクセス数を誇るといわれている。また、ゲーム系サイトから始まり、アクセス数増加を狙って一般のニュースを扱うようになったサイトも少なくない。

 ニュー速クオリティ、痛いニュース(ノ∀`)、アルファルファモザイク、ニュー速VIPブログ(`・ω・´)……。

 インターネットを日々チェックしているであろう本誌読者であれば、こうしたサイトを目にした経験は何度もあるだろう。これらはいずれも、「2ちゃんまとめサイト」と呼ばれるウェブサイト群だ。

 2ちゃんねる(以下、2ちゃん)をまとめたサイトは2000年頃から存在していたが、現在のような形を取って続々と誕生したのは、04~05年頃のこと。04年といえば 電車男 が話題になった年であり、すでに2ちゃんはネット社会のモンスターとして広く認知されていた。ただし2ちゃんには、特にネットのライトユーザーから拒絶反応を示される要素がいくつもあった。あまりに情報量が多く、気になる話題だけをチェックするのは至難の業であること、荒らし的なレスやエログロ画像などに頻繁に遭遇すること等々である。

 その点2ちゃんまとめサイト(「2ちゃんまとめブログ」「2ちゃん系ブログ」とも)は、こうしたマイナス面を補ってなお余りある魅力を備えていた。これを定義づけるとすれば、運営者が2ちゃんの中から注目度の高いスレッドのみを抽出し、次々に転載していくことで構成されたブログ形式のサイトといったところだろうか。

 もともと2ちゃんのスレタイ(スレッドのタイトル)は、煽り要素が強い半面、内輪受け的なノリも目立つ。一方でまとめサイトは、閲覧者が思わずクリックしたくなるようなものに、運営者によってアレンジされることも多い。例えば、大手マスコミのニュースサイトが「佐村河内氏、短髪姿で謝罪会見」という見出しで報じたニュースを受け、2ちゃんには「【手話不要】佐村河内守氏、まさかの逆ギレ会見【おすぎ似】」といったタイトルのスレッドが立つ。さらにこれが2ちゃんまとめサイトでは「佐村河内守氏が『別人すぎる』と話題に…『聞こえているのでは?』『手話を見てない』との声も」などといったタイトルがつけられる、といった次第である。

 さらにまとめサイトでは、本家2ちゃんのスレッド内の書き込みは編集され、重要と思われる部分は文字を大きくしたり着色したりして強調されるケースも多い。ただしそうやって編集される以上、そこには運営者の趣味、思想、思惑が反映される場合もある。さらにページのいちばん最後には通常、そのサイト独自のコメント欄がついている点も特徴のひとつだ。またサイトを運営しているのは、個人か、そうでなくともかなり少人数のグループだと思われる。

 ネットニュース編集者にして、『ネットのバカ』(新潮社)などの著書でも知られる論客・中川淳一郎氏に、その黎明期の動きについて補足してもらおう。

「まず、雑談系、ニュース系のまとめサイトが登場して、アクセス数を増やしていきました。そうした中、05年末にある大きな出来事が起こります。雑誌『ネットランナー』(ソフトバンクパブリッシング刊、現在は休刊)が記事化した、その年話題になったサイトに賞を贈る企画で、まとめサイトが大賞を獲ってしまうんです」

 大賞を獲ったそのサイト「【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´)」の開設は、05年2月。つまり、開設1年にも満たない時点での大賞受賞なのである。これほどまでにこの時期、まとめサイトのニーズが急激に高まったという見方もできよう。

「2ちゃん特有のネガティブ要素を見るのは無駄だと考えた人や、そこまで必死に2ちゃんを追いかけていなかった人たちにとっては、ある程度情報が精査されている2ちゃんまとめサイトは読みやすかったんでしょう」(ネット業界に精通するIT系エンジニアA氏)

 こうして、一般メディアでは見られない2ちゃん的なネタを手軽にチェックできるまとめサイトの利点は、多くのネットユーザーに歓迎された。その結果、ジャンルを特化したまとめサイトが続々と生まれ、ネットに親和性の高いオタク文化とまとめサイトとの蜜月関係が生まれる。特に2ちゃんの人気掲示板「ゲーム業界、ハードウェア@2ch掲示板」をまとめた「ゲハ系」と呼ばれるまとめサイトなどは、短期間でネット界の一大勢力となっていくのである。

 アニメもまた、まとめサイトとの相性がよく、「アニメ板」や「萌えニュース+板」を転載したサイトが無数に生まれた。さらに、00年代後半という時期が、俗にいう“アイドル戦国時代”とも重なったため、アイドル系まとめサイトも数多く発生していく。モノノフでもあるIT系企業の取締役B氏は、そのファン活動において、まとめサイトは欠かせないという。

「ももクロにハマった当時は、情報が欲しくて日々検索をしていました。すると、ももクロ系のまとめサイトをさらにまとめて、一覧化して閲覧することのできるアプリを見つけたんです。それからは、そのアプリで年中情報をチェックするようになりましたね」

 実際、まとめサイトが数多く存在するアニメ、ゲーム、アイドルなどのジャンルは、複数のまとめサイトから注目度の高いエントリーだけをまとめた まとめのまとめ 系サイト(アンテナサイト)も発展。B氏が語るように、専用アプリまで登場してくるのである。

 だが、こうしたオタク層のコアな盛り上がりは、2ちゃんまとめサイトの一面でしかない。まとめサイトが「2ちゃん的なカルチャーを手軽に楽しめるもの」だとするならば、その何よりの功績は、それを2ちゃんねらーとは比較にならないほど圧倒的多数の一般層に爆発的に浸透させたことにある。そこで大きな鍵を握るのが、スマホの普及である。

「11年上半期、携帯電話新規販売台数の約半数がスマートフォンとなります。これと前後して、それほどネットリテラシーの高くない層にもスマホが普及、それでネットを見る行為が一般化していきます。さらにこれと呼応するように、一般ニュース系のまとめサイトをまとめて閲覧するための『まとめサイトアプリ』が数多く登場、『AKBのCDが大量に捨てられたらしい』『キムタク主演ドラマの視聴率が悪いらしい』などといった2ちゃん的なニュースに一般層でも気軽に接することができるようになり、そうしたネタが学校や職場で気軽に消費されるようになっていくのです」(中川氏)

 そうしてこの時期から、まとめサイトによっては、そのPV数が小規模な一般メディアなど軽く凌駕するほどのものへと変貌を遂げていく。月間数千万PV、中には億に手が届こうかというまとめサイトまで登場してくるのだ(その代表格である「オレ的ゲーム速報」の管理人Jin115氏へのインタビューはこちらの記事を参照)。

「そうすると、PVが欲しいニュースサイトの側も、まとめサイトからの流入PVを意識するようになってくる。そうして『まとめサイトで取り上げられやすい話題』を流すようになり、しかも、それが大手ポータルサイトのトピックスなどを通じてライトユーザーの目に触れるようになった。結果としてニュースのあり方そのものを変えたわけで、これはかなり大きなことだと思います」(ネットライター・稲葉ほたて氏)

「昨日のテレビでタレントの誰々が爆弾発言をしてネットを騒がせた」などといった、事実報告に過ぎないようなニュースを一般メディアが自社サイトを通して頻繁に報じるようになったのには、こうした影響もあるだろう。

 さらに2ちゃんまとめサイトの魅力を倍増させた一因に、強力な「リンク機能」がある。

「ある程度のリテラシーと慣れがないと目的の情報にリーチできない2ちゃんと違って、まとめサイトはたいてい、そのネタの関連過去記事へのリンクがページ内に大量に用意されている。さらに、他のまとめサイトへのリンクも配置されていますから、短時間でその情報を深化させていくことが可能となります」(前出・A氏)

 一般層にとって刺激的な裏っぽい情報に簡単にリーチできる、そしてその情報を深めていくこともたやすい。しかも、どこでも閲覧可能なスマホによって。こうしてまとめサイトは、一般メディアをも脅かしかねない存在へと、急速に変貌を遂げていったのである。

転載禁止というもろ刃の剣

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ご存じ2ちゃんねるのトップページ。ページ下部には「現在、Racequeen inc と西村博之さん及び彼が所有するパケットモンスター社との間で、誤解が生じております。【中略】違法性があるとの西村博之さんの主張は、Raceqeen inc の名誉を著しく既存するものであり、法的対応を検討せざるをえません。」との文章が。「毀損」ではなく「既存」なのは2ちゃん流のギャグなのか。さらにその下には「2ちゃんねるのご利用は利用者各位のご判断にお任せしています」「無断複写●転載を禁じます」の文章が!

 2ちゃんまとめサイトのこうした状況を誰よりも苦々しく眺めていたのは、ほかならぬ2ちゃんねらーたちであった。それは主に、2ちゃんの書き込みを勝手に転載しているという著作権の問題と、そしてまとめサイトに設置してある広告バナーを閲覧者がクリックすることによってまとめサイト運営者が得ているであろう多額のアフィリエイト収入への反発からきていた。2ちゃんにおいて、まとめサイトで得られた報酬を揶揄する「嫌儲(けんちょ、けんもう)」という言葉が生まれたのは06年のこと。しかし、多くのまとめサイトからアフィリエイト狙いの匂いが消えることはなかった。

 アフィリエイト収入を得るには、「いかに多くのアクセスがあるか」が重要だ。万単位の人間が集まれば、広告をクリックする人間の数も当然増える。2ちゃんまとめサイトの場合にはそのために、より刺激的な展開のスレッドが2ちゃんに立つことが望ましいわけだ。

「2ちゃんで過激なコメントを残してスレッドを炎上させ、それを自ら運営するまとめサイトに転載する。そういった自作自演を積極的にやっているまとめサイト運営者は多いでしょうね。さらに、ステマ(企業から広告費をもらい、宣伝と気づかれないような形で特定の商品を持ち上げ、宣伝をすること)をやったり、クリック数を稼ぐために記事を捏造したりと、大手まとめサイトの一部が悪質化していくわけです」(中川氏)

 ジャンルに特化していたはずのアニメ系、ゲーム系などのまとめサイトが、いつの間にやら芸能ネタ、時事ネタ、はたまた嫌韓ネタまでも頻繁に取り上げるようになったのもちょうどこの頃。それはまさに、アクセス数を稼ぐための手段だったのだろう。

 しかし、単に2ちゃんを適当にコピペするだけで誰もが楽に儲けられるわけではない。まず、スレッド選びやタイトルのつけ方にセンスが問われる。大手ゲハ系まとめサイト「はちま起稿」の運営者であった清水鉄平氏の著書『はちま起稿 月間1億2000万回読まれるまとめブロガーの素顔とノウハウ』(SBクリエイティブ)によれば、同氏は一時、サイト更新のために毎日18時間を費やしていたという。それも365日間、休むことなく、だ。

 それでも、先述したような一般層の流入もあり、まとめサイトの数は加速度的に増加していった。

「まとめサイトを作るためのアプリが出現したりして、タイトルに惹かれて読んでみると数行で終わり……といった出来の悪いサイトが急増、飽和状態になりました。その中で、実際に月数十万円以上稼いでいたのは、上位1%にも満たないでしょうね」(中川氏)

 そして12年6月。その上位1%以下に対して、ある衝撃的な事件が起こる。2ちゃん運営側が、「はちま起稿」「やらおん!」「ハムスター速報」「オレ的ゲーム速報@刃」「ニュー速VIPブログ」という大手5サイトに、2ちゃんからの「転載禁止命令」を出したのだ。それらはいずれも、記事捏造やステマ疑惑などにより悪評の立っているサイトであった。

「目的は見せしめでしょうね。ところが、このとき難を逃れたまとめサイトの多くが自粛せず従来通りの運営を続けた。それがJimさん(現在の2ちゃん運営者とされるジム・ワトキンス氏)による今回の強制的な転載禁止令に繋がっていくのでしょう」(中川氏)

 最初の事件から約2年後の14年3月20日、2ちゃんのトップページ下部に「無断複写・転載を禁じます」の一文が追加される。同年2月より転載禁止の動きは徐々に広がりつつあったのだが、これが決定打となった。事実上の「全板転載禁止」である。

「まとめサイトが増えて、2ちゃん内のライトユーザーがそちらに流出しました。2ちゃん運営にとってみれば、『2ちゃんではなく2ちゃんまとめを見ればいいや』という層が拡大すれば2ちゃんのPVが減少し、広告収入の減少にも繋がりかねない。転載禁止は、情報が外部へ流れるのを遮断しユーザーを囲い込むことが目的なんだと思います。しかし、2ちゃんはまさに、転載されることによって知名度を上げたわけです。今回の措置は、2ちゃんにとってはもろ刃の剣でしょうね」(前出A氏)

 今回の件、ネットでニュースを発信する立場にある中川氏は複雑な思いだとか。

「2ちゃんへのタダ乗りで儲けてきたまとめサイト運営者には『ざまあみろ』と思う半面、2ちゃんに対しても『泥棒が何を言うか』という気持ちも強くある。そもそも2ちゃんはこれまで、一般ニュースメディアの記事をさんざん無断で転載、しかも運営側はそれを放置してきたわけですから」

 さて、この転載全面禁止令の発令後、各まとめサイトはどうなったのか? 確かに中には、3月のある時点をもって更新をストップしてしまったサイトもある。しかし、たくましく新展開を見せているサイトも多いのだ。もともと、12年の最初の転載禁止騒動後、一般ニュースメディアからの直接の転載に、あるいはツイッターからの転載に切り替えるなどの措置を取る、その上でコメント欄を充実させ閲覧者同士のコミュニケーションを図るなどし、「複合型ニュースまとめサイト」にシフトするところがあった。まずはこの例に倣うというのが、新展開のパターンのひとつである。

「いわば、『まとめサイトの2ちゃん化』ですよね。もともとそこに閲覧者同士のコミュニティが存在した大手まとめサイトは、それでも続けていけるでしょう。多くのユーザーからすれば、『なか卯』が牛丼の販売をやめたけど、だったら代わりに牛すき丼を食べればいいじゃん、程度のことだと思います」(中川氏)

 また、「ひろゆきになれなかった男」として知られる矢野さとる氏が12年6月に開設した「転載自由な2ちゃんねる風掲示板」をうたった掲示板群サイト「おーぷん2ちゃんねる」からの転載により、これまでと同じ体裁を保つ、というパターンもある。

 前出のB氏はこう指摘する。

「単に2ちゃんのコピペだけでやっていたようなところは厳しいでしょう。各2ちゃんまとめサイトがそれぞれの特色を出すことで、今後も伸びるところと潰れるところとに分かれる気がしますね」

 短期間に巨大化した2ちゃんまとめサイト、そしてその原動力となった本家2ちゃんのこの先の動向は、日本のネット業界の今後さえ左右しかねないだろう。さらに本稿締め切り直前には、ひろゆきこと西村博之氏による“新2ちゃんねる”なるふれこみの「2ch.sc」公開の発表というニュースも飛び込んできた。激動期にある2ちゃんまとめサイトから、しばらくは目が離せなさそうだ。

(文/ミゾロギ・ダイスケ)

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