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第1特集
なぜ企業はアートを支援するのか?【3】

約4000億円の行政文化予算はどこへ行く!? 癒着とずさんな基準で選ばれる助成金の是非

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――こちらの記事までは、企業がその経営理念の中でアートを支援する企業メセナについて見てきたが、ここではさらに視野を広げて、税金を使ってアート活動を支援する、公共団体による助成金について見て行きたい。

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『アーツ・マネジメント概論』(水曜社)

 文化庁から芸術団体に支給される補助金に対して、近年、不正請求事件が相次いでいる。2005年にはオペラ興行を行う関西芸術文化協会が2700万円を、10年にも日本オペラ連盟が6300万円を不正に受給していたことが発覚。また、11年には、東京室内歌劇場が2億1390万円を、浪曲協会が1180万円をそれぞれ不正に受給していることが明るみに出た。

 これらの事件は新聞などでも広く報道され、世間から、税金を使用した芸術文化活動への冷ややかな視線を集めることとなっている。

 文化庁の年間予算は1033億円(13年度)。このうち、「芸術文化の振興」に対する支出は34・6%を占める366億円。内訳を見ると、「芸術家等の人材育成」「舞台芸術・メディア芸術の振興等」「国立美術館運営費等」といった項目が並び、そこからそれぞれのジャンルに対して助成金が支払われている。また、都道府県や市町村などの地方自治体でも芸術文化推進への取り組みを行っており、その額は年間3000億円余りに上る。

 こうした公共機関による文化支援・推進環境の中で、多くのアーティストが直接恩恵を受けるのが、「芸術文化振興基金」による助成制度だ。90年に設立された同基金では、音楽、伝統芸能、映画、舞台芸術、美術などの芸術活動に対して年間45億円の予算を投じている。大阪府からの助成金打ち切り方針が報道された「大阪フィルハーモニー交響楽団」や、ケラリーノ・サンドロヴィッチ率いる「ナイロン100℃」、三宅裕司や小倉久寛が在籍する「スーパー・エキセントリック・シアター」、吉祥寺バウスシアターで開催される「爆音映画祭」や「東京フィルメックス」「山形国際ドキュメンタリー映画祭」といったイベントにも助成がなされている。

 こうした助成金の給付については基金が選んだ外部の有識者によって審査が行われる。しかし、審査基準として、同基金では「我が国の芸術水準向上の直接的な牽引力となることが期待できる」「公演の趣旨、目的等が明確であり、かつ企画内容が優れていること」などを掲げているが、客観的な指標は存在せず、採択理由も明らかにされていない。芸術文化振興基金の助成申請は、公募によって行われ、その採択は書類審査のみで可否が決定されている。はたして、このような選考のプロセスで適切な審査が可能なのだろうか?

「長い間活動を行っているというだけで、助成金を受けている団体、も少なくないはず。彼らの活動に対し『ご苦労さん』ということで、助成金を与えることもあるでしょうね」

 このように疑問の声を上げるのが、日本パフォーマンス/アート研究所の小沢康夫氏だ。確かに、そのラインナップを見ると、『文学座』(37年設立)や、『劇団俳優座』(44年設立)など、キャリアを重ねた芸術団体への支援が手厚い傾向がある。また、一説によれば大手芸能プロとのつながりが深い劇団が優遇されているという話もあるようだ。また、文化庁よりも規模が小さい地方自治体の助成金認定は、さらに基準が不明瞭のようだ。小沢氏は自身の経験を振り返り、審査員への不信を語る。

「某行政区の芸術文化支援制度は、『新しい表現活動を募集する』としてアートプランを公募しながら、その審査を行うのは、ほとんどが地元の商店街の人間や、新聞社をリタイヤした年配の方など。プレゼンテーションによる審査もあったのですが、質疑応答で聞かれる質問は、どれもとんちんかんなものでした。助成を受けることはできましたが、正直これでは審査員のレベルが低すぎる……という思いでした」

 このように税金が使われている割には、明確な基準に乏しく、審査員の采配ひとつのような感を受ける助成金の採択。芸術作品に対する価値判断が難しいことは言うまでもないが、審査過程の透明化など、改善の余地はあるはずだ。また、助成"後"の仕組みについても小沢氏は疑問をぶつける。

「行政は、その助成金が適切に使用されているかのチェックは厳しく、受給後の書類提出や経費の提出なども細く義務付けられています。ですが、助成した当の作品を芸術文化振興基金の人間が見に来ることはほとんどなかったと思います。審査員は観に来ているようですが、助成する公演の数が多いため、全てを見ていたら仕事にならないという事情もあるのでしょう。しかし、やはり作品の質を評価していかなければ、文化水準は上がらないと思います」

 数十万から数百万円の助成金が投じられているにもかかわらず、その作品がどんな作品に仕上がり、どんな客層に反響があったかなどの上演成果がチェックされることはほとんどないようだ。その成果に対して関心を示さないのであれば、いったい何のための助成制度なのだろうか? 

外部団体により公正な審査が期待

 13年5月に、自民党・下村博文文部科学大臣のもとで発表された「芸術文化立国中期プラン」は、20年までに芸術文化関連予算を倍増することで、強固な文化力の基盤形成を目標として盛り込んでいる。ここ10年間、文化庁の予算は10年前からほぼ横ばいで推移している。それが倍増となれば、文化行政にとって、画期的な試みであることは間違いない。ニッセイ基礎研究所の吉本光宏氏は、政府の立場に期待を寄せる。

「民主政権誕生直後には、事業仕分けによって、文化予算は『大幅な縮減』という結論になりました。しかし、パブリックコメントでこの決定に対する多数の反対意見が寄せられ、文化庁予算は微増となりました。安倍政権でも経済政策が軌道に乗れば、文化政策も動きだすのではないでしょうか」

 そもそも、日本の文化予算は諸外国に比較して少なすぎるといわれている。国家予算に占める文化予算の割合は、フランスの1・06%(4830億円)、韓国の0・81%(1253億円)、ドイツの0・36%(1380億円)を大きく下回り、0・11%というありさまだ(10年)。

「韓国では、日本よりも先にアーツカウンシルを作って文化立国を掲げ、映画などを中心とする文化産業に対して莫大な投資を行ってきました。彼らは文化を発信することが、自国の国際的なイメージを高めることをよく知っています。一方東京をみてみると、少ない予算にもかかわらず、似たような芸術関連のフェスティバルがあちこちで乱発されている。これを整理し、選択と集中をはかりながら、韓国のように戦略的に芸術活動を海外へと発信していくべきでしょう」(小沢氏)

 こうした声を受け、文化庁をはじめとする文化行政機関では、イギリスの「アーツカウンシル」を手本にした助成制度改革を進めているが、まだ改革の道は始まったばかりだ。

 そもそも、日本の芸術に対する助成制度は、劇団やオーケストラの「赤字補填」という意味合いをもって支給されてきていた。だが、助成金の本来の目的は、食えないアーティストの生活支援ではなく、国民それぞれの利益に還元されるべきものであるはず。「芸術文化立国中期プラン」は、「新『国風文化』を日本再生の柱とする」と記している。

 世界に誇る日本文化を発信するためには、魅力的なアーティストの活動を支援する制度へと、文化行政のあり方を変化させることが急がれる。

(文/萩原雄太)

2013年公共団体による助成金

[芸術文化振興基金]
● ナイロン100℃(730万円)
● 大阪フィルハーモニー交響楽団(5580万円)
● 落語芸術協会(4400万円) ● 漫才協会(1340万円)
● 日本フィルハーモニー交響楽団(5550万円)
● 爆音映画祭(190万円) ● 東京フィルメックス(1800万円)

[地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ事業](文化庁)
● 鳥取県・まんが王国発ソフトパワー事業(4350万円)
● 香川県・瀬戸内国際芸術祭推進事業(6450万円)
● 神戸市・神戸ビエンナーレ(1億3800万円)

[アーツカウンシル東京](東京都歴史文化財団)
● ROVO(上限400万円)
● マームとジプシー(上限400万円)

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