サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 【現代アート業界】が抱えるマネーとタブー
第1特集
"タブー"と"カネ"と"思想"が交錯する日本の現代アート

美術展入場者数世界1位を誇れど、作品は売れない日本市場 現代アート業界が抱えるマネーとタブー

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──近頃、地方で開かれるアートイベントに関する報道やクチコミが増えた。都心で開催される美術展に関しても同様に、「今◯◯でやってる××展行った?」というような会話がネット上でも日々飛び交っている。これはもしかして、今日本でアートが盛り上がっているのではないか。というわけで、小誌初となるアート特集に挑んでみたい。

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(写真/田中まこと)
<撮影作品:瀬戸内国際芸術祭「時の廊下」西堀隆史>

<世界一美術展が大好きな日本人>
[一日あたり入場者数世界1位美術展(2012年)]…10573人

■フェルメール見たさに日に1万人が詰めかける
イギリスの美術館・博物館の専門月刊誌「The Art Newspaper」が毎年発表している「世界で最も人気のある展覧会・美術展」によれば、2012年に世界で一番入場者数(一日あたり)を集めたのは6月~9月に東京都美術館で開催された「マウリッツハイス美術館展 - オランダ・フランドル絵画の至宝 - 」とのこと。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」をはじめ、レンブラントやルーベンスら巨匠の作品が展示され、大盛況となった。

<町おこしの新形態か? 増え続ける地方芸術祭>
[瀬戸内国際芸術祭2013春会期来場者数]…26万人(のべ)

■風光明媚な島々にアート目当ての観光客が
瀬戸内海の島々で開かれる、現代美術の国際芸術祭。2010年に第一回が開催され、今年は第二回となる。7月~10月にかけて105日間にわたって開催された前回から変わって、今回は春・夏・秋にそれぞれ30~40日間開催される形式になった。3月20日~4月21日に開催された春会期では、閉幕までに26万人が訪れており、このペースでいくと今年の3会期を通じて前回を上回る100万人超の来場を達成しそうとのこと。現在、夏会期が開催中(9月1日まで)。

<中東・中国マネーが流入するアート市場>
[アートオークション史上最高落札総額]…508億円

■リーマンショックからの回復の兆しが見えてきた?
今年5月16日にニューヨークで開かれた大手オークション会社・クリスティーズによる現代アート作品のオークションで、落札総額が4億9502万1500ドル(約508億円)を叩き出した。これは総額としては史上最高となる。ジャクソン・ポロックの作品が5840万ドル(約60億円)、バスキアの作品が4880万ドル(約50億1000万円)で、この2つが数字を大きく押し上げた。近年は中国や中東の新興コレクターの流入もあり、再び現代アートの価格が上昇しつつあるともいわれている。

< 「アート」とはなんぞや? いまだ揺らぐ定義と価値>
[バンクシー作品オークション出品価格]…5億円(想定)

■“アート”に組み込まれたグラフィティが再び路上へ
今年2月、イギリス・ロンドンを中心に活動するグラフィティアーティスト、バンクシーの描いた壁画が、想定価格50万ドル(約5億円)でオークションに出品されると報じられ、話題になった。街角の商店の外壁に描かれたこの作品は、誰のものか? 80年代に勃興したグラフィティアートは、いまや現代アートのいちジャンルとなった。しかしいま再び、バンクシーの活動によってその境界が揺らいでいる。「アート」とそうでないものの境目が曖昧な現代アート、そこに内包される思想も時代と共に動き続けている。

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(写真/田中まこと)
<撮影作品:会田誠「哲学と美術#3存在と時間」>

 日本人は美術館が好きな国民である。イギリスの美術専門誌「The Art Newspaper」が毎年発表する「世界の展覧会・美術展動員数」ランキングをたどると、2005年以降毎年1位は日本で開かれた美術展だ。のみならず、毎年TOP10に3~5つは日本開催の美術展がランクインしている。

 ただしここで上位に入るのは、昨年ならばレンブラントやフェルメールが並ぶ「マウリッツハイス美術館展」、過去には「大回顧展モネ」(07年/国立新美術館)や「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」(06年/東京国立博物館)、といった古典のたぐい。いわゆる現代アートについては、いまいち動員が見込めないと考えられてきた。しかし近年、少しずつここにも新しい動きが生まれてきている。

 昨年3~5月に東京国立近代美術館で開催された「フランシス・ベーコン展」は入場者数が10万人を突破。同年2~5月に同館で開催された「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」も12万人を超える人が詰めかけた。また、こうした展示だけでなく、国内の現代アートを盛り立てているのが「越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟)や「横浜トリエンナーレ」(神奈川)、「瀬戸内国際芸術祭」(香川)といった地方のアートイベントの存在だ。アートを目的とした旅行客の獲得を目論む行政とアート界が手を組んで、ある種の“お祭り”として大規模なイベントは年々増加している。

 一方で、08年に村上隆のフィギュア作品が1500万ドル(16億円)で落札されたような、作品売買にまつわる景気のいい話は影を潜めている。08年9月のリーマン・ショック以降、アート市場は冷え込んだ。もとより「作品を個人が購入する文化が根づいていない」というのは日本のアート業界関係者が口を揃えるところ。アートをビジネスとして成長させることに村上隆がこだわるように、日本の市場はまだ十分に育っていない。

 そこにはやはり、「アート」という言葉にまつわる胡散臭さ、不定形さが影響していると言わざるを得ないだろう。サイン入り便器や街の落書きが意味と文脈を持った「アート」とされ、同時に少し絵をかじったタレントが「アーティストでござい」とすまし顔ができる、その曖昧さ。アートの世界はあまりに複雑怪奇なのだ。

 本特集では、そうした現代アートの最前線に立つアーティストたちの紹介から、カネと市場の動向、そして本流からは外れた異端のアートの研究まで、外側からはわかりづらいこの業界の裏側をつまびらかにしてみたい。

(文/編集部)

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