「米国債暴落」とコピーが打たれた、09年7月14日号「週刊エコノミスト」。
今回取り上げたいのは、近年最大のトンデモ記事、09年7月14日号「週刊エコノミスト」が特大号でブチ上げた「米国債暴落 ついに世界のドル売りが始まる」というシロモノ。果たして、どんな内容なのか?
09年7月当時のアメリカ経済の状況は、07年8月にサブプライムローン問題(住宅バブル崩壊)が発覚し大混乱。08年9月15日にはリーマン・ブラザーズ証券が破綻し、世界金融危機を引き起こした。そんな中で経済再建を託されたバラク・オバマが09年1月20日、第44代大統領に就任。経済状況は悪化の一途をたどり、アメリカ自動車産業の象徴「ゼネラル・モーターズ(GM)」が同年6月1日に経営破綻。オバマ大統領が陣頭指揮を執り、国有化による救済に乗り出している。
そんな世界経済情勢を背景に、「週刊エコノミスト」誌上では「史上最大の米国債大量発行 マーケットは『危うい』と見始めた」というタイトルの記事を掲載。大量国債を中央銀行であるFRBが買収したことを受け「中央銀行が買い続けることはできない。財政規律が失われると市場が読み出したら、危険だ」との警告で締めくくっているのだ。
確かに、当時の経済危機は世界を震撼させた。日本でも08年10月14日に、東京証券取引所で国債相場急落により2営業日連続でサーキットブレーカー(相場が大きく変動した時に、相場を安定させるための仕組み)が発動するなど、尋常ならざる状況が起こっていた。
少しでも世界経済を学んだ人間であれば常識なのだが、アメリカが経済的に破綻し、終わることはまずない。全世界の通貨は対ドルで回っており、世界各国がアメリカの国債を購入する。このアメリカ国債を大量保有する日本政府が売ることはもちろん、それを政治家が発言することも危険視されているのだ。10年時点でアメリカ国債の購入額は中国が1兆1601億ドル、日本が8823億ドルとされている。国債は国の借金であり利息もつくので、デフォルト(債務不履行)の危険度が高いほど利息も高くなるメカニズムだ。とどのつまり、アメリカがデフォルトする可能性はほぼゼロに等しいのだ。
当時のアメリカ国債(利回り10年 ※償還期間10年の国債の流通利回りのこと)は、09年1月1日には2・2%だったが、6月10日には3・9%にまで上昇。ちなみにだが、アメリカ国債(利回り10年)の今年3月27日時点での利回りは1・8%。空前の利回りに世の中が浮足立っていた背景がある。
経済誌たるもの、あくまでも冷静な視点での誌面作りを貫き、的確な結論を出す必要があるのではないだろうか?