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第1特集
【限定ロングver.】ノンフィクションの原点から選ぶスゴい本

青木理×森功 ノンフィクションの書き手が語る「今アツい本」と業界の不安

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──滅多に大きなヒット作は出ないノンフィクションの世界。だが「タブー破りの本」といえば、社会の裏側をえぐるこのジャンルを置いてほかにないだろう。いま脂の乗った書き手である森功氏と青木理氏を迎え、2人が選ぶ「今おもしろいノンフィクション」、そしてこのジャンルが抱える不安を聞いた。

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(写真/奥山智明)

 最近のノンフィクションだと、2012年の秋に出た蓮池薫さんの『拉致と決断』【1】はおもしろく読みました。内容も、少しずつ北朝鮮の実情の深い部分に踏み込んできている感じがする。まだ食い足りないところもありますが、驚きを持って読んだ箇所もあり、注目しています。

青木 朝鮮半島ということでいえば、東京新聞の城内康伸さんという記者が09年に出した『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男 「東声会」町井久之の戦後史』【2】をおもしろく読みました。もともとそんなにほかの人が書いたノンフィクションを読むほうではないんですけどね。おもしろいと悔しくて腹が立つし、つまらなくてもガッカリして腹が立つから(笑)。『ファンソ~』は、大物在日韓国人実業家だった町井久之【註1】の評伝です。城内さんは会社こそ違えど僕と同じ社会部出身で、2課担【贈収賄や詐欺、横領などの知能犯を扱う捜査2課担当】でした。そのあと韓国特派員になったから、朝鮮半島にも日本の裏社会の事情にも詳しく、その両面から町井を描くことができたベストな書き手だったでしょう。しかも町井については、メディア業界で仕事をする人の間ではよく知られている人物なのに、これまで真正面から取り組んだ評伝は出ていませんでしたから。

 あれは僕もおもしろいと思いました。町井の未亡人と接触するところから取材をスタートして、よく調べて話が展開されている。実は僕もその未亡人と会って話をして、「これを本にできないか」と言われたことがあったんですよ。最近は、そうした昭和の人物評伝が受けるじゃないですか。工藤美代子さんの『悪名の棺 笹川良一伝』【3】なんか、出てくる事件自体は手垢がついたような話と言ったら悪いけど、昔話なのにおもしろく読めるんですよ。書き方なんでしょうが、作家性のあるノンフィクションですね。

青木 僕は近年読んだノンフィクションの中で一番心を打たれたのは、元北海道新聞の高田昌幸さんが出した『真実 新聞が警察に跪いた日』【4】を挙げたいですね。北海道新聞が03年に北海道警の裏金問題を追求するキャンペーンを張り、結果的には道警が認めて謝罪するところまで追い込みました。しかし道警側が反撃に出て、道新はそれに屈してキャンペーンを担当したチームが皆飛ばされてしまうんですね。新聞協会賞という、新聞業界では一番権威のある賞まで獲った優秀な記者たちのチームだったのに、閑職に追い込まれたりほかの新聞社に移ったり、高田さん自身も道新を辞めて、散り散りになってしまう。その散っていく経緯や内情を描いた、一種の当事者ノンフィクションです。本の中で彼は、道新の元社長の家にまで夜回りに行くんですよ。ピンポンを鳴らして、最初は一見温かな対応を受けるんだけど、最後は一転して冷たくあしらわれ、けんもほろろに追い返されるんですね。そういうことまで取材して全部書いてしまっているあたり、いい記者根性だなぁと(笑)。

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