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小原真史の「写真時評」【114】

占領と平和

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――過去から見る現在、写真による時事批評

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土門拳「臨終」1957〜1958年、東京工芸大学写大ギャラリー蔵

安倍元首相の国葬儀も終わり、旧統一教会についての報道もいくぶんか落ち着いてきた感があるが、そもそも冷戦期における日本の保守勢力と反共団体とのつながりや、岸信介や文鮮明と共に日本で国際勝共連合を創設した元A級戦犯容疑者(笹川良一、児玉誉士夫ら)の関係性が、今になって騒ぎ立てられることへの違和感をこの数カ月間感じてきた。ある時期までは自明のものだった事実が、近年見えにくくなっていたという意味では、旧統一教会の反社会性についても共通することだろう。

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東松照明「片岡津代さん」1961年、東京工芸大学写大ギャラリー蔵

この春、敗戦直後から昭和の終わりまでの日本写真をテーマにした展覧会「占領と平和」の準備のために東京工芸大学の写大ギャラリー・コレクションをまとめて見直す機会があったのだが、敗戦の記憶が生々しい時期には前景化されていたものが時間の経過と共に不可視化されていくという事態は、戦後の日本写真についても言えることかもしれない。

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