サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > ヒップホップと【NFT】の邂逅
第1特集
“アート”としての文化遺産の保存

スヌープがいち早く参入 ヒップホップとNFTの邂逅

+お気に入りに追加

――スヌープ・ドッグをはじめ、エミネムやジェイ・Z、メソッド・マンなど、一時代を築き上げたヒップホップ・アーティストたちが続々とNFTの分野へ参入している。今年、一気に耳にすることが増えたこの“NFT”のマーケットだが、本稿では相性がよいと言われているヒップホップに焦点を当て、その内情を探る。

2209_01_nft_200.jpg
今年からスタートした月刊サイゾー制作によるポッドキャスト「小林雅明のRap Bandit-R」。4月配信分の「ヒップホップにおけるNFTの需要と価値」では、複数のレコード会社から問い合わせがあった。

本誌から生まれたポッドキャスト「小林雅明のRap Bandit-R」で、今年4月の初旬に配信した「ヒップホップにおけるNFTの需要と価値」には、予想を上回る反響が寄せられた。そこではブロックチェーン云々の説明ではなく、ヒップホップ界隈での実際の活用例から、NFTとはいかなるものなのか紐解きつつ、未来像などについても語った。その内容を受けて、熱心な音楽ファンに加え、国内の有名IT関連企業やメジャーレーベルから編集部に直接リアクションがあったと聞いている。こうした反響の大きさにはそれなりの理由があるはずだ。そのひとつに、ポッドキャスト配信の約1カ月前の22年2月半ばのスヌープ・ドッグによる発言がある。自ら買収の手続きを終えたばかりの「デス・ロウ・レコードはNFT専門のレーベルになるだろう」というものだ。

スヌープをデビューさせ一躍人気者にしたのも、ストリートギャング文化をカジュアルなものとして打ち出し、90年代中盤までに商業的に莫大な成功を収めたのも、その後、所属の2パック銃撃事件を境にストリートギャングとの癒着が一気に表沙汰になり、スヌープ自身も逃げるように離脱したのも──このデス・ロウ・レコードだった。近年、レーベルの創設者であるシュグ・ナイトの悪行がたたり資金繰りに失敗し、所有者を転々としていたこのレーベルを、縁の深いスヌープが引き取っただけでも、かなりのニュースバリューがある。それをNFTレーベルとして、「刷新/更正」させるかのような発言をしたのだ。しかも、有言実行ということなのか、スヌープは新生デス・ロウからの第1弾アルバム『BODR (Bacc On Death Row)』の配信に加え、NFTでもリリースしたのだった。ちなみに、デス・ロウ・レコードも、昨年11月の時点で、レーベル創設30周年記念を機に、NFTに参入していた。

いずれにしても、この〈NFT〉って、いったいなんなの? そんな疑問や関心が、スヌープの発言を機に一気に表面化したのだった。

2209_02_nft_320.jpg
大麻ビジネスに料理本、本業の音楽もそつなくこなし、今やヒップホップとNFTの最先端を走るスヌープ・ドッグ。これぞヒップホップ的「先見のメイクマネー」。(写真/Stephen J. Cohen/Getty Images)

そんな我々一般大衆よりも、スヌープはずっと先を進んでいた。そこからさかのぼること約10カ月前、21年4月の時点ですでにNFTに参入していたのだ。しかし、その1年後から定期的にリリースされており、”NFTでしか聴くことのできない”ミックスシリーズ 『Death Row Session』が今のところ毎回発表後2日程度で売り切れているのとは対照的に、彼の初NFTは完売とはいかなかった。その肝心な内容はといえば、オリジナルのデジタルアートだった。「A Journey with the Dogg」と題され複数の商品からなる同コレクションには、ヒップホップとの出会いから現在に至るまでのキャリアの中から、印象に残った1場面を語る彼の“しゃべり”が、1点ずつ付随している。加えて1点のみ、しゃべりの代わりにタイトルもズバリ「NFT」なる新曲を聴くことができる。

2209_03_nft_320.jpg
邦題「おしゃべりカーティス」でもおなじみカーティス・ブロウ。ヒット曲「The Breaks」は彼の愛息の手によって、ヒップホップ初のNFT化となった。(写真/Siemoneit/ullstein bild via Getty Images)

これがNFT化されたラップ曲第1号かと思いきや、翌5月に公表されたカーティス・ブロウによる1980年のヒット「The Breaks」がヒップホップの楽曲として初めてNFT化される。ラップで初めてゴールドディスクを獲得したのも、ラッパーで初めてメジャーと契約したのも、初めてCMに出演したのも彼だったので、花を持たせたのかもしれない。このプロジェクトの発起人である(カーティスの息子)マイケル・ウォーカーは、メディアの取材で次のように語っている。


「自分の世代はオーセンティックなヒップホップの歴史をよくわからないでいる。一方、年上の世代は、NFTの世界に入り込めずにいる。こうしたギャップの橋渡しを、自分の父親を通じてやれるのは光栄だ」

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2026年11月号

ドーパミン時代の沼化するエンタメ業界

ドーパミン時代の沼化するエンタメ業界
    • 「沼化」するエンタメ業界
    • 膨らみ続けるグラビア市場
    • SNSがつくる「あなたの好み」
    • 映画界ハラスメントの実態
    • ゲーム実況者の高齢化問題
    • PS、ディスク販売廃止の衝撃
    • 私たちは「ドパガキ」なのか
    • AI時代の「生歌」の価値
    • 「ニコ生ホラー」とは何だったのか
    • テクノロジーが広げる学びの未来
    • AI時代のサイバー攻撃
    • リングを彩る美女たち
    • 〈Cosplay beauty〉もちむぎ

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 滝藤賢一、名バイプレイヤーの境地
    • 唯一無二の音楽家・水槽
    • 小八重葵美が得たもの

連載

    • [マルサの女]高橋凛
    • 神保哲生×宮台真司の「TALK ON DEMAND」
    • 萱野稔人と巡る「超・人間学」
    • ドクター苫米地に聞け!
    • 井川意高の天上夜想曲
    • 韮原祐介の匠たちの育成哲学
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • GROOVE SEQUENCE
    • 笹 公人×江森康之の「念力事報」
    • 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」
    • 花くまゆうさく『カストリ漫報』
サイゾーパブリシティ