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大石始のマツリ・フューチャリズム【47】

新たなマツリが生まれてくる?――コロナ禍を糧とする意地

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――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!

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日本民踊・盆踊り「鳳蝶流」の鳳蝶美成氏がYouTube上で展開している“ウェブ盆踊り大会”。振り付けも丁寧に教えてくれるので、在宅が続くこんな時期だからこそ、動画でお祭りに参加するのも一興だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、8月12~15日に開催が予定されていた徳島県徳島市の阿波おどりが戦後初めて中止されることになった。同市の阿波おどりが中止されることは、そうあるものではない。なにせ徳島市の約62パーセントが焼失した、徳島大空襲があった昭和20年にこそ開催が取りやめられたものの、市民の間で阿波おどりに対する欲求が高まったことから昭和21年には、早くも再開に漕ぎ着けたという土地柄である。そんな徳島ですら阿波おどり開催を断念したというのだから、明らかな異常事態だ。

 同県のみならず、各主催団体はクラスター発生への警戒を高めており、青森県青森市のねぶた祭、高知県高知市のよさこい、秋田県秋田市の秋田竿燈まつりなど、全国的に知られる祭りが中止されたほか、博多祇園山笠(福岡県福岡市)や三社祭(東京都台東区)は見送ることを発表。京都府京都市の祇園祭は山鉾巡行や神輿渡御を取りやめ、神事のみ行われることになった。

 これら日本を代表する祭りが中止になったことによる経済的損失は莫大なものだ。いずれの祭りも各地の観光の目玉。京都や福岡のように経済的地盤がしっかりした都市ならともかく、祭りが吹き飛ぶことにより街の経済そのものが揺らぐところも出てくるはずだ。

 また、祭りは各地の人々にとってアイデンティティのひとつであり、単に「ひと夏のイベントがなくなった」という以上の意味も持つ。例えば、青森ではコロナの影響が深刻になる数カ月前からねぶたの制作が進められてきたが、制作はストップ。ねぶたの制作小屋も解体されてしまったという。青森に何度も足を運んできた筆者からすると、「ねぶた小屋のない夏の青森」というのはちょっと想像ができない。いわば通天閣のない新世界、浅草寺のない浅草のようなものである。

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