サイゾーpremium  > 連載  > 小原真史の「写真時評 ~モンタージュ 過去×現在~」  > 小原真史の「写真時評」/「富士の写真家」(上)
連載
写真時評~モンタージュ 現在×過去~

「富士の写真家」(上)

+お気に入りに追加
1911_P122-125_01_520.jpg
「湖畔の春」(本栖湖)、1935年5月2日、岡田紅陽写真美術館蔵

 岡田紅陽(本名:岡田賢治郎)の名を知らずとも、現行1000円札の裏面に印刷された富士山を知らない人間は少ないだろう。これは紅陽が本栖湖畔で1935年に撮影した「湖畔の春」(本栖湖)【上画像】が原画になっており、旧5000円札の裏面にも同作品を元にした富士山が大きく印刷されていた。また、38年に発行された50銭政府紙幣にも「嶺は晴れゆく」(越前岳)が採用されていたように、彼の撮影した富士は戦前・戦後を通して広く人々の目に触れてきた。紙幣以外にも切手の原画になることもあり、今でも宿泊施設のロビーや会社の応接室などで紅陽の撮影した富士山に出会うことが少なくない。我々は、知らず知らずのうちに彼の写真に身近に接してきたのである。

 紅陽は、生涯にわたり富士山を撮影し続けた写真家で、14年から72年まで40万枚にも及ぶ富士写真を撮影したといわれている。富士山に取り憑かれたといっても過言ではないが、最初に撮影したのは、早稲田大学在学中に友人のカメラを借りて河口湖畔を訪れた際のことであった。湖面に写る逆さ富士と満開の桜のコントラストに目を奪われ、夢中で撮影したという。以後、新聞の懸賞などへの応募を繰り返しながら、写真の技術を磨いていった。20年には、その腕が認められ、東京府の専属写真家となり、各地の観光写真を撮影するようになる。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2020年3月号

バンクシー&現代(危)アート

バンクシー&現代(危)アート
    • 【バンクシー】の矛先と日本
    • バンクシーと【パルコ】の関係
    • 社会を斬る【次世代アーティスト】
    • 【石川真澄×くっきー!】異端美術対談
    • レン・ハン自殺後の【中国写真】
    • 【舐達麻】が吐くラップとタトゥー
    • 【刀剣乱舞】狂騒曲
    • 芸術なのか?【AIアート】の真贋
    • AI推進国【韓国】のAIアート
    • 【高山明×中島岳史】「不自由展」圧力と希望
    • あいトリをめぐる【政治家たち】
    • 【書肆ゲンシシャ】が選ぶ(奇)写真集
    • 【天皇肖像】の含意とアート群
    • 【美術展ビジネス】に群がる既得権益
    • 現代アートの今がわかる書籍群

池田ショコラ、甘くて苦いオトナグラビア

池田ショコラ、甘くて苦いオトナグラビア
    • 【池田ショコラ】大人に脱皮

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 表紙/都丸紗也華「このへんで跳ねたいんです」
    • 【ぴーぴる】天真爛漫娘の現代っ子放談
    • 必ず最後に【杏】は勝つ
    • 【ベビーテック】の伝道師が語る普及の道
    • 【萱野稔人】"殴り合い"はなぜ人間的なのか
    • 【イズム】が蘇る2020年の音頭
    • 米発【ミートテック】が狙う中国人の胃袋
    • 【丸屋九兵衛】アンバーを語る
    • 【町山智浩】「スキャンダル」TV局トップのセクハラを暴け!
    • 世界の左派が掲げる【反緊縮経済政策】
    • 小原真史の「写真時評」
    • 笹 公人「念力事報」/令和のマスク騒動
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/「So kakkoii 宇宙」小沢健二の鎮魂歌
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 震災をきっかけに浸透した「んだ」のビール
    • 更科修一郎/幽霊、雑誌もまた老いて死んでいく。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』