サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 【小林直己】ネトフリから世界進出への滑走

――巨匠・リドリー・スコットが製作総指揮を務めるNetflixオリジナル映画『アースクエイクバード』が11月に公開される。そこで謎めいた日本人カメラマン役を演じた小林直己(EXILE/三代目J SOUL BROTHERS)が、ネトフリの可能性や、作品をきっかけに見つめ直したグループ活動の今後について、余すところなく語り尽くす。

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↑画像をクリックすると拡大します。(写真/持田薫)

 2017年の夏、本誌に初めてLDHの男が登場した。EXILEのパフォーマーであり、三代目J SOUL BROTHERSのリーダーでもある小林直己氏だ。テーマは「村上春樹」。そこから始まり、自身の人生で追い求めるものや、LDHという組織において言葉をどう扱うかといった、深い次元にまで話は及んだ。それから2年以上がたったこの秋、同氏は、Netflix映画『アースクエイクバード』で俳優として世界デビューを果たす。ダンスに魅入られた青年が、なぜ世界で映画に出るのか――。その思索を問う。

――以前本誌に登場いただいてから、約2年がたっています(17年7月号)。直己さんは、今作への出演もそうですが、この2年の間に海外での活動が増えましたよね。

小林 表立って見えてはいなかったんですが、実はずっと海外での活動の準備はしていました。そうした流れの中で今回『アースクエイクバード』を撮影できて、公開に至れた。今作のオーディションがあったのは2年前なんです。17年の年末に受けて、18年の春頃に撮影していました。垣根のない活動範囲でエンターテインメントをつくるという目標に向かってまっすぐ突き進んではいますが、やはりこれくらいの時間はかかるんだな、という感覚ですね。

――やはり海外での活動は、勝手が違いますか?

小林 違いますね。日本だと芸能事務所が一括してマネジメントもPRもエージェント機能も果たしてくれますが、北米だと、エージェントもマネジメントも弁護士も税理士も自分で雇うのが普通です。僕自身も今は海外での活動のために、LDHとは別のマネジメント会社と契約してます。

――今作は、80年代末の日本を舞台に、2人の外国人女性と1人の日本人男性の関係から起こるミステリーです。直己さんが演じるのは、その日本人男性でカメラマンの禎司ですね。なぜこの作品のオーディションを受けられたのでしょうか?

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↑画像をクリックすると拡大します。(写真/持田薫)

小林 最初に脚本を読んだときから、禎司というキャラクターにすごくシンパシーを感じました。彼の言っていることも考えていることも、とてもよくわかる。もちろんこうしたインターナショナル作品において日本が舞台になっていて、その中でただ一人の日本人の役を演じることは役者として大きなキャリアになるという考えもありましたが、それだけじゃなく、個人的な思いとしてどうしてもやりたい、と。

 実際に、禎司がどんな場所でどういうふうに育ったのかを考え、そこを訪れたり、彼を深めることで今までにない体験をして、自分に立ち返っていくことも必要だと感じました。大人になっていく中で身につけてしまった社会性みたいなものとか、置かれた状況をうまく進めるために身につけた技術とか、そういったものを全部取り除いていって、「じゃあ自分は何が好きなんだっけ」「何が嫌いなんだっけ」と役作りの中で自分自身を再発見するような感覚がありましたね。

――撮影の現場は、どんな様子だったんですか?

小林 初となる英語主体での役ですし、アカデミー賞女優のアリシア・ヴィキャンデルとの共演はとても刺激的でした。また、インターナショナル作品ということで、撮影クルーは基本的にアメリカからやって来ているし、ウォッシュ・ウェストモアランド監督はイギリス人だし、プロダクションデザイナーは『スワロウテイル』や『キル・ビル』の種田陽平さんだし、メインのカメラマンは『オールド・ボーイ』や『お嬢さん』を撮ったチョン・ジョンフンで……と、それぞれ文化も出自も違う人々が集まっていました。

――なるほど、予告映像のトーンは、確かに『お嬢さん』の色味でしたね!

小林 色がやっぱりちょっと違いますよね。監督のウォッシュが「絶対彼に撮ってほしい」と彼に決めたそうですが、素晴らしかったです。そうしたプロフェッショナルが集まって、日本というユニークな、言葉を変えると特殊な文化を持つ場所で巻き起こった物語をつくるというのはすごく刺激的でした。自分もあらためて俯瞰で日本という社会やその文化、自分自身を振り返って、「当たり前だと思っていることが当たり前じゃないんだ」と思い返すきっかけになりました。

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↑画像をクリックすると拡大します。(写真/持田薫)

――今作はあまたのハリウッド映画を手がけてきたリドリー・スコット製作総指揮ですが、何かお話はされましたか?

小林 撮影が終わってから一度話しました。『ブラック・レイン』の監督ですから、松田優作さんの芝居に対する思いを話してくれたり、高倉健さんの話を聞いたりしました。そのほかにも映画のアイデアやドキュメンタリーの話をずっとしていて、81歳だけどすごく頭の回転が速く、かつエネルギッシュで。逆に、今の日本の状況について聞かれることもありました。日本の文化や景色みたいなものに、共感している部分があるのかな、と。そうやってお話をしていると、それこそ松田優作さんや高倉健さんのように、先人の方々が積み上げてきてくれたものの恩恵を今自分は受けているんだなと感じましたね。

――ちなみに、撮影において、Netflixという媒体ならではだな、という出来事はありましたか?

小林 撮影に入る前に、ハラスメント対策講座がありました。「こういったことがハラスメントになる」というのを、男女別にキャストもスタッフも一緒に説明を受けて。それとは別に、アメリカのクルーが撮影を担うので、SAG(Screen Actors Guid/米国俳優組合)の規定に基づいたルールがありました。「○時間撮影したら、次の撮影までは○時間空けないといけない」とか。僕は日本では映画の撮影経験はそう多くないですが、そこは国内とは違うな、と。

――多文化・多言語のスタッフやキャストが集まっているからこそ、そういうレクチャーが必要になるんですね。いずれも日本の現場でもやったほうがよさそうですが……。そして宣伝も、日本や北米、その他さまざまな地域で行われるわけですよね。

小林 LDHもこうしたインターナショナル作品のPR活動はしたことがないので、日本では僕が主導で動く形になっています。現地で知り合ったアメリカのPR会社と一緒にやっていて、そこでのプランのもと、日本でできることは僕からLDHに振ったりとか、逆にLDHを通して依頼をしたりとか。

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↑画像をクリックすると拡大します。(写真/持田薫)

――直己さん自身が間に入ってるんですね。タレントさんが自分で動くのは日本の芸能界ではまだ珍しいですが、芸能界も過渡期にありますし、今後はそういうケースも増えていきそうです。

小林 芸能界だけじゃなく、社会全体にそういう動きが起きてますよね。ソーシャル・ネットワーキングの隆盛やノマドワーカーの存在などもそうだし。紙媒体のようなフィジカルのメディアも、今後デジタルにどこまであらがっていくのか、新しい形をつくっていくのか。自分はどちらかというとその変化は素直に受け入れているほうだと思います。最終的には人と人だと思うので、それをいかに今のスピード感のあるシステムに落とし込んでいくのか。『アースクエイクバード』も世界同時配信なんですが、同時に世界中の人が手に取ることができる、目にすることができるのはオンライン系媒体の面白いところだと思います。別件でアメリカに行った際にも、「『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終回、観た!?」と共通の話題になった。ドメスティックな話題だと、例えば三代目のダンスが国内ではやっていても、まだ世界中は知らない。でも、その壁を超えることが環境的には可能になっているわけで、これはもう相当エキサイティングだなと思いました。

――確かに、「世界同時配信」ってすごいことですよね。ものによっては、劇場で公開される映画よりももっと広い国や地域に届いて、直己さんのことを知らない人たちが観るわけで。

小林 僕自身もインターナショナルフィルムを「洋画」として観て、影響を受けて育っています。そういうふうに、この作品が世界中のどこかの誰かに影響を与えられるんだとしたら、それはもう演者として冥利に尽きますね。同時に、やっぱり恐ろしいことでもありますよ。まったく知らない人のところまで届くのは。しかも日本が舞台で日本の精神性にもかかわっているところがある作品だから、そこに日本人のメインキャラクターとして出ている自分の責任もでかいと思いますし。「役だから」と切り離して考えることも必要なのかもしれないけど、僕はどっちかというとあまりそうはできないタイプなのかな、と今回思いました。

ダンスと芝居は地続き――小林直己の俳優宣言

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