『THUNDERBOLT ~帰ってきたサンダーボルト~』
(販売元:エピックレコード)
RIZEが古巣エピックに戻って発表した17年のアルバムだが、案の定、Apple Musicから消滅。アルバムは05年の自主レーベル作『Spit & Yell』しかストリーミング不可の様子だ。なのに、『THUNDERBOLT』に収録されていた「NOTORIOUS」の(よりによって)石野卓球リミックスが生き残っていて苦笑を誘う。
京都市伏見区出身の私にとって、7月第3週の後半は酷かった。
木曜=伏見区にあるアニメ会社が放火された。
金曜=京都市長がそれをネタにする選挙応援スピーチをかました。
土曜=京都市に居を構える知人と東京在住の友人が逮捕されたことが発表された(逮捕劇自体は前日)。
ま、その京都在住の知人は、もともと下北沢の人であって京都出身ではない。でもブーツィ・コリンズの楽屋で知り合った仲なので、やはり浅からぬ縁だろう。つまり、大麻取締法違反容疑で逮捕された、RIZEのJESSEとKenKen(こちらはDragon Ashも掛け持ち)のことである。
「JESSEとKenKenには心底ガッカリした。SEX・ドラッグ・ロックンロールの時代は20世紀に終わってる。音楽だけで爆発するロックこそ今はカッコイイのだ。確かに、世界には大麻が合法化されている国はある。でも今の日本で大麻を所持・使用したらどうなるか、それは理解してるはず。こんなくだらないことで逮捕されてるのがめちゃくちゃダサい」
私がいささか驚いたのは、「音楽ファン」「ロック好き」と自称する人たちの中に、前述のような意見が少なくなかったことだ。SNSを見る限りは。
私は「SEX・ドラッグ・ロックンロールの時代」同様に、「マリファナをドラッグと見なすこと」も世界的に見ても20世紀に終わっている、と思うのだ。
確かに、日本は日本、他国は他国である。だが、「今の日本で大麻を所持・使用したらどうなるか?」は法律との折り合いであり、道徳上の欠点ではないと思う。酔いどれが許され、大麻愛好ロッカーが断罪されるのであれば、その違いは「嗜好品が合法か非合法か?」という差でしかない。それは道徳より処世術ではないか。世渡り下手なロッカーが責められるとしたら、どんなロック観なのだろう。
RIZEの2人がマリファナで捕まった直後にタイミングよく発表されたのが、映画『Jay and Silent Bob Reboot』の予告編。前作から18年、映画『パープル・レイン』を愛し、ザ・タイムを世界最高のバンドと崇める大麻コンビ「ジェイ」と「サイレント・ボブ」の物語である。自らも大麻映画『ハウ・ハイ』で主演したラッパーコンビ、メソッド・マン&レッドマンも出演。また、北米を代表する大麻伝説トミー・チョンも顔を出す。
続いて届いたのは「ニューヨーク州は娯楽目的でのマリファナ使用を非犯罪化」というニュース。これにより、少量の大麻所持は発見されても罰金刑、逮捕はなくなる。ただし、アンドリュー・クオモ州知事が目指していたのは大麻使用の合法化。だって、その売買を真っ当な経済活動と見なせば、税収源になるやんか。米国には完全合法化している州もあるし、カナダでも合法だ。
ここ日本でアルコールがOKで、大麻が不可なのはなぜだろう。あるいは、アルコールはOKだが、コカインが非合法なのは? その可不可は、常に移ろいゆく常識と法律とのせめぎ合いで決まるものだ。
ただし。ハッキリ言うと、人類の歴史はドラッグの歴史でもある。「コカインで声にダメージが出るとイヤだから、思い切って肛門から摂取してみた」と語ったのは、かのロッド・スチュワートだが、歴史的に見れば肛門摂取なんてことは常識の範囲内である。吸う、舐める、噛む、食べる、傷口から擦り込むなどなど、人はさまざまな手段でドラッグを摂取し、自分が知覚する世界を広げんとしてきた。それはヒューマン・ネイチャーなのだ、と思う。
それともうひとつ。「音楽だけで爆発するロックこそカッコイイ」という主張に、「音楽に政治を持ち込むな」と通じる匂いを感じて、私は不安になる。いつぞや見かけた「音楽に政治を持ち込むな」主義への反論が傑作だったことを思い出す。そこでは、ゆずの「ガイコクジンノトモダチ」が忌野清志郎の反戦歌各種と並ぶ偉業として語られていたのだ。オーマイガッ。
果たしてロックはどこに行くのだろうね。ロックを解さない私には他人事だが、隣人として心配している。
まるや・きゅうべえ
8月24日(土)は防弾少年団イベント「BTS Day Pt.3」開催。9月1日(日)は「八村塁に『外人やーん』と反応するレイシスト日本」と「大人のための恐竜講座」の2本立てトーク。ツイッター〈@QB_MARUYA〉