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更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【43】

カルト的な信者を獲得することでしか売れないのか?――幽霊、紅衛兵たちのアニメ映画興行。

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――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

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映画は10年前だが、暗い青春伝奇が地方都市の少年に支持された最後のケースだった。これ以降、伝奇小説は選択肢を失った。

 過去にはマイナーなアニメ誌で企画編集を請け負っていた筆者だが、アニメに限らず、マニア向けジャンルの情報媒体は古株の編集者やジャンルライターが主導権を握っていて、若者向けの新しい作品には動きが鈍いという宿痾がある。

 今回の特集が「映画・動画」と聞いて思い出したのは、若者向けアニメ映画興行の成功例としての『空の境界』だ。マンガでも小説でも文化的商売のコツは、地方都市の少年に「俺は周囲の人間とは違う」という思い込みを与えることだが、この作品は単館公開の不利を逆手に取り、情報経路を絞って観客を囲い込むブランディング手法を確立した。当時、地方から高速バスで観に来た学生がいた話を聞いて「太い鉱脈を見つけたな」と思ったが、アニメ誌とは逆に日和見なウェブメディアやサブカル映画誌を上手く使うと効果が大きいこともわかった。この成功は後の『魔法少女まどか☆マギカ』など、アニプレックスのアニメ映画興行の基本戦略となり、映画化によるブランド化は『Fate/Grand Order』という巨大な集金システムの構築に繋がっている。

 一方で、オタクサブカルな中高年世代の動員で成立する興行も増えた。文化大革命スタイルというか。最近では『若おかみは小学生!』が好例だろう。児童文学原作の子ども向けテレビアニメが母体なので、当初はファミリー層向けのプロモーションだったが、9月第4週公開というタイミングの悪さから惨敗し、上映打ち切りが相次いだ。しかし、アニメ好きの古参兵たちがSNSなどで絶賛したことから急遽、中高年男性の「癒やし」路線へ方向転換、マニア層に強い映画館でのプロモーションを集中的に行い、前週興収比10倍以上の逆転劇となった。こうなると、ライムスター宇多丸などの流行映画評論家が取り上げて褒めだすので、マニアはそれを錦の御旗として、さらに布教へ勤しんでいく。このあたり、蓮實重彦のお言葉に一喜一憂していた80年代シネフィルの知的権威主義とよく似ているが、彼らが内ゲバ的マウンティングで疲弊したのとは違い、アニメ好き中高年の攻撃性はかつてオタク文化を否定した知的大衆層への復讐に向けられる。文化大革命と評したのはそういうことで、アニメやヴァーチャルアイドルを毛主席語録のように抱えた彼らは、知的大衆層のリベラリストやフェミニストを反革命分子として攻撃する紅衛兵となるのだ。

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