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第1特集
なぜ日本人はオカルトが好きなのか?

ノーベル賞学者も傾倒――神の領域から合理性への対抗へ。学問としての心霊とオカルト

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――死刑執行によって、ひとつの区切りがついたオウム事件。神秘主義やオカルティズムと紐付けられた論調は当時、多く目にすることができた。こうしたオカルト的概念は、19世紀の欧米では学術的に研究されたことも事実である。そんな「学問としての心霊とオカルト」は何を生み出したのだろうか?

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『現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇』(筑摩書房)

 今回の特集で再三触れてきたオウム事件。ここで改めて触れるまでもないが、オウム真理教は80年代、ハルマゲドン、空中浮遊、超能力といった、オカルト的な要素によって当時の若者をひきつけ、拡大した宗教だ。それからおよそ30年、日本人は、いまだオカルトに興味を持ち続けているだろうか?

「“オカルトへの関心”という意味で見ると、オウム真理教のように教団という器を必要としていたのは、古い形態だったと言えます。今はむしろパワースポットめぐりに表れているように、どこの集団にも所属せず、個々人でスピリチュアルなものにつながろうとする動きのほうが主流ですよね」

 横浜国立大学教授で、日本文学を通じて心霊写真やオカルトについても研究している一柳廣孝氏は、このように語る。だが、そもそもオカルトとは何だろうか? その不合理な領域が、アカデミズムの世界できちんと検証されたことはあったのだろうか? オカルトという概念の変遷を、多方向から検証してみたい。

「オカルティズムというのはラテン語のoccultum(隠されたもの)という言葉が語源になっています。その背後にあるのは、宗教においては、通常明かされている公的な教えや儀礼の背後に、隠された領域があるという考え方なのです」

 こう解説するのは、『現代オカルトの根源』(ちくま新書)などの著書があり、埼玉大学で教鞭をとる大田俊寛氏。大田氏によると、隠された領域とはすなわち、隠された知識や神話、儀礼や修行法、あるいは力やエネルギーなどのことを指すという。

「近代以前の代表的なオカルティズムとしては、ギリシャのオルフェウス教、ユダヤ教のカバラ、キリスト教のグノーシス主義、エジプトの魔術、バビロニアの占星術などが挙げられます。一般にはこれらの宗教思想が相互に緊密につながっていたと見なされることもありますが、情報の流通が限られた古代のことですから、実状はかなり異なるでしょう。各地域、各時代の人々が、それぞれ自分の抱えている問題に向き合うことにより、多様なオカルト思想が生まれたと捉える方が正確なのでは」

 かつては渋澤龍彦や種村季弘の著作において、「隠された知の系譜」や「闇の精神史」が描き出されたが、その発想は眉唾ものだと、大田氏は言うのである。

「本来オカルトとは神秘主義のことでもあり、隠された儀式を持った宗教のことであったのはその通りです。キリスト教もそういう密儀宗教のひとつとして出てきましたが、特殊な隠された儀式ではなく、公開された儀式の中で神と対話する体系を作りました。そうすると、ほかの密儀宗教で一層隠されたものという性格が強まるわけで、オカルティズムには、キリスト教と対立する、という意味が付与されるようになったのです」

 こう話すのは、『オカルト「超」入門』(星海社新書)など、オカルト関係の数々の著作を持つ原田実氏である。

「キリスト教の考えでは、人間は自然に拘束されていますが、神の力だけは自然を乗り越えることができる。それが奇跡という現象ですが、この奇跡が神の力によらずして起こったらどうなるか。それはむしろ悪魔の仕業であり、オカルトの側に追いやられるのですね。ところが近代に入ると、さらに自然に対する理解が自然科学として支配的な考えになり、キリスト教では奇跡として分類されてきた現象も、オカルトとして受け入れられる。科学の原則に逆らう現象は、神の仕業ではなく超自然現象であるというわけですね。それまでキリスト教の世界観で説明しようとしたものを、自然科学の世界観で説明しなければならなくなったことから、心霊科学の発想などが生まれてくるわけです」(同)

 時は19世紀。各分野の科学者たちが、霊との交信といったオカルト的分野を真剣に研究した時代があった。前出の大田氏が解説する。

「近代になるとさまざまな分野の自然科学が急速に進歩しました。臨死学や脳科学の進歩もそうですが、特に電磁気学が進歩。見えない電磁波などが探求されれば、死者の声も聞こえるようになるのではと、当時の研究者は真剣に考えていました。その起爆剤になったのが、ニューヨーク州の小村ハイズビルで、フォックス姉妹という少女たちが、幽霊との交信に成功したとされたハイズビル事件です」

コナン・ドイルも参加した心霊研究協会

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