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――昨年の「本」特集でも好評だった「EXILEと読書」企画の第2弾。今回は、読書家として書店イベントを開催するなど、EXILEのイメージから少々かけ離れた活動を積極的に行っている頭脳派パフォーマー・橘ケンチ氏にご登場いただき、その読書愛を語ってもらった。EXILEの精神を支える本って、どんな本なんですか? 教えて! ケンチさん!
本誌恒例の「本」企画に17年、泣く子も黙る国民的ダンスボーカルグループEXILEが登場したのを覚えておいでだろうか。ダンスを生業にした肉体派集団の中で、ひそかにハルキストをこじらせていた小林直己氏にインタビューを敢行したのは、ちょうど1年前。そして今年ご登場いただくのは、EXILEおよびEXILE THE SECONDのメンバーとして活躍しながら、俳優とLDH ASIA【注:LDHの世界展開の一環として、アジアで各種プロジェクトを展開するための子会社】の取締役も務める、頭脳派パフォーマー・橘ケンチ氏だ。彼は華々しい芸能活動の傍ら、自身の名字を冠した「たちばな書店」という書籍レコメンドサイトを運営し、自ら選書したブックフェアを書店で開催している。また、本好きが高じて、出版社キノブックスが主催する「ショートショート大賞」のアンバサダーも務めている。毎日3~4冊の本を持ち歩き、同時に10~15冊を並行して読み進めるという乱読家は、何を求めてそんなに読んでいるのか?
180センチの長身に彫りの深い端正な顔立ちと、穏やかな物腰。パフォーマーでありながらビジネスマンのようなまなざしで、読書愛を語っていただきました。
――今日はサイゾーの「本」特集で、EXILEきっての読書家であるケンチさん(以下、橘)にお話を伺おうと……。
橘: サイゾーさん、いつも読んでますよ。今日はありがとうございます。あ、名刺があるので交換させてください。
――(名刺交換をして)うわー、これがEXILEの名刺……! なんちゃってじゃない、ガチの名刺をお持ちなんですね。さすがLDH ASIA取締役です。さて、まず伺いたいのは、ケンチさんがやっていらっしゃる「たちばな書店」についてです。ウェブ上でファンと相互におすすめの本を紹介し合う企画で、派生として実店舗でもブックフェアなどを開催されています。「たちばな書店」の概要を教えていただけますか?
橘: 立ち上げたのは去年の6月頃です。もともと本を読むのが好きなので、本に関連した企画をやりたいと思っていたんです。本屋を作るのもアリかなと思ったんですが、僕が毎日いられるわけじゃないから、それもちょっと違うかな、と。ちょうどその時、EXILE THE SECOND(以下、セカンド)のアリーナツアーで全国を回っているタイミングだったんです。ドームと違ってアリーナだと、中都市に行ける。それで、さらにその先にある小さい街に、いかにして自分たちのエンターテインメントを届けるか、自分たちのことをもっと知ってもらうためにはどうしたらいいか、考えていました。その2つが組み合わさって、「じゃあネットで本屋を作ろう」と。ネットなら、離島の人でも見られますから。
――テレビなどのマス媒体にあれだけ出ているEXILEでも、「もっと自分たちを知ってもらいたい」と思っているんですね……。でも、自分がどんな本を読んでいるかを公開するのって、内面を露呈する行為じゃないですか。一般人としては、友人が自宅に来た時に本棚をじっくり見られるのも恥ずかしいです。「たちばな書店」はそれを大っぴらにやっているわけで、躊躇はなかったですか?
橘: アーティスト活動をさせていただく中で、自分の内面を表現していくことがいかに重要なのかが身に沁みてわかっていたので、あまり迷いはなかったですね。むしろ、本を通じて、自分がこういう人間なんだということをもっと知ってほしい気持ちが強かったと思います。
――「たちばな書店」をやってみて、ネガティブな反応はなかったですか? 「しょうもない本読んでるな」みたいな。
橘: いや、ないですね。今後あるのかもしれないけど、僕は本の専門家ではないし、書評を書けるわけでもないから、自分なりの思いでコメントを書いてるだけなので、そのあたりは割り切っています。
あ、そうだ、前に三省堂でたちばな書店のイベントを開催したときに(三省堂池袋本店/2017年12月)、お店の床と壁が赤だったんです。それにインスピレーションを受けて、お花とか女性的なイメージでアートを絡めて空間を作ろうと思って、選書した本も色ベースで並べたんですよ。そうしたら三省堂の書店員さんが「斬新……!」と言ってました(笑)。書店員さんは普通、ジャンルや関連性で並べるじゃないですか。僕はそういう概念がまったくないので、「ビジュアル的に、これがあったら雰囲気いいな」と思って並べてたんで、驚かれましたね。
――ケンチさんが「たちばな書店」で挙げられている本を見ると、ビジネス書や自己啓発系が多い印象があります。好きなジャンルはやはりそのあたりですか?
橘: 自己啓発系、チーム論、アート本、建築系、あとは、体を使う仕事なので、自分の体のパフォーマンスを上げるために、例えば深い睡眠を取るための本や食事についての本を読んでいます。それを実践してみて、自分で判断しています。
――あれだけ体を鍛えているEXILEなのに、さらに読書を通じて健康になろうとしているんですね。好きなジャンルとして「チーム論」も挙げられましたが、ケンチさんはセカンドのリーダーです。やはりそのあたりは意識して本を読まれているんですか?
橘: そうですね。いかにチームをまとめるか、すごく意識した時期がありました。それで結局、自分個人のプロデュース能力にかかってくると思ったんです。自分がしっかりしてたらチームに波及していくけど、ブレていたら説得力がなくなっちゃう。そういう意味で、自分の内面と向き合いながら、それをチームにも浸透させていくために、チーム論やリーダー本は一時期いろいろ読み漁っていました。
リーダーって、いろんなタイプがいると思っていて。HIROさんはメンバーをガンガン引っ張っていくカリスマ的なリーダーだし、NAOTOと直己(三代目J Soul Brothersのリーダー)も2人でそれぞれタイプが違う。僕もまた違う。グループの成り立ちやメンバーの年代、自分との関係値によって、役割が変わってくるんですよね。僕がもしも今GENERATIONSのような年下のグループに入ってリーダーになったら、若いグループを当然引っ張っていかないといけないですけど、セカンドはみんなリーダー資質もあるし個性も強いから、その個性を輝かせながら方向だけ同じ方を向こう、という意識でやっていました。それはセカンドだからこそ通じるチーム論なんですよね。
(小林)直己と村上春樹について語らうことも…