――カメラマン・デザイナー、そして親日家としても知られるアッシュ・ハドソン。そんな彼が自らが体験した日本の“アングラ文化”を詳細にレポート。
先月号では俺のアパレル・ブランド「コナート」誕生から、90年代を代表するヒップホップ・アーティストとの交流について書いた。このブランドはB-BOY御用達のような印象を持たれることもあるが、実はロック・アーティストのツアーグッズを手がけたこともある。コナートはストリートファッションのブランドであると同時に、グラフィックデザイン会社でもあって、才能あるグラフィティ・アーティストを囲って、俺は彼らのアートディレクターのような立場で仕事をしてきた。要は、俺が思いつかないようなデザインのアイデアを、最終的に俺がディレクションする。それが結果的に良い作品を生む環境になっていたんだ。
ロック・アーティストのグッズを手がけたのは、ガンズ・アンド・ローゼズのTシャツが初めてだった。ご存じの通り、俺の兄貴はガンズのギタリスト、スラッシュで、彼から「コナートでツアーTを作ってほしい」というところから話はスタートした。
そもそも俺はヒップホップも大好きだけど、兄貴の影響でロックを聴いて育ってきたから、デザインに関するリクエストもなく、すべてを俺に一任してくれた。ガンズのTシャツの制作は、コナートに在籍するグラフィティ・アーティストが新たにスプレーで壁にペイントし、それをプロのカメラマンが撮影して、Tシャツに落とし込む手法を取った。
ガンズのTシャツが好評だったこともあってか、スラッシュのソロ・プロジェクト(スラッシュズ・スネイクピット)では、コナートが全面的にかかわることになった。1995年にリリースしたアルバム『It's Five O'Clock Somewhere』のアートワークに始まり、計5作のアルバムジャケットを手がけた。トップハットをかぶって、蛇になったスラッシュが骨に巻き付いているアートワークを覚えている読者もいるはずだ。あのアルバムジャケットも、実際の壁に描いたグラフィティで、高さにして4メートル近くまであった。それをさっき説明したように、プロのカメラマンに撮影してもらい、アルバムのジャケットに落とし込んだんだ。なかなか大変な作業だったね。
これらの仕事は、「スラッシュが兄弟だから」という枠を越えて、兄貴は俺が手がけるデザインには、絶大な信頼を置いてくれていたように思う。
ガンズのTシャツがどれだけ売れたか正確な数字はわからないけど、コナートが手がけた作品に至っては、今や人気のコレクター・アイテムになっている。つい先日、ロサンゼルスのセレクトショップでは、750ドルで売られていたらしいから、相当なものだろ?
(翻訳/松田敦子)
アッシュ・ハドソン
1972年、ロサンゼルス生まれ。ガンズ&ローゼズのギタリストであるスラッシュを実兄に持つ。幼少期からグラフィティ・アーティストとして活動を始め、自身のブランド〈コナート〉を立ち上げる。親日家として知られており、近年は新たなクロージングライン〈アッシュ・コレクション〉のデザイナーや、カメラマンとしても広く活躍している。インスタグラム〈@ashfoto〉