――あの事件現場は、その後どうなってる?気になるから行ってみた。
芸能界は怖いと聞くが、さすがに一介の書店のマンガコーナーを消す力まではなかったようだ。
ない! マンガコーナーがない!!新宿の紀伊國屋書店本店を訪れて愕然とした。
乃木坂46・松村沙友理が、集英社の編集者に紀伊國屋のマンガコーナーでナンパされ、路上でチューしていたという報道を受けてやって来た私だが、見当たらないのだ。
すわ、事務所の力で消されたか!? 狼狽しながら店員に尋ねると、マンガコーナーは裏の別のビルに入っていると冷たく言い放たれた。その目は「アンタもナンパ目的? 松村の場合は相手がエリートだから上手くいったのよ。アンタみたいなその日暮らしの中年がオトせるわけないじゃない、このケツメド野郎」と言っているかのようだ。
言い分はごもっとも。だが少し違う。
今回、私は松村の報道を受け「可能性がある」と踏んだ若者たちがアイドル目的で店に大挙し、迷惑をかけているのではないかと思ったのだ。そんな若者たちに注意をしにきた次第である。あわよくば、強引なナンパに困っているアイドルを助け出し、好い仲になろうという下心も込みで。
そんなわけで向かったのであるが、考えが甘かった。そもそも私はマンガをまったく読まない。置いてあるのは知らない作品ばかり。
「がきデカ」は? 「のらくろ」はどこだ? 店内の空気感にもアテられた私は、早々にマンガコーナーを後にした。
気を取り直して文芸コーナーを張ってみたが、ナンパどころか、閉店ギリギリの時間のせいか女のお客さんが少ない。これなら普通に町中でナンパしていたほうが確率が高いというものだ。というわけで、若者よ、書を捨てよ、町へ出よう。
西国分寺哀(にしこくぶんじ・あい)
雑誌コーナーにサイゾー最新号がそこそこ残っているのを見て、少し心配になったその日暮らしの中年男性。