――若手女流詩人が読み解くアイドルたちのコトバ
所属事務所・SMエンタテインメントのイ・スマン会長の姪であることも有名。(写真は公式ブログより)
私たちの代わりに傷つかないで
――サニー(少女時代)
少女時代のニュースを追っていると、まるでファッション雑誌を眺めているようで飽きない。美しい脚を強調したダンスと、思わず真似したくなる洋服やメイク。K-POPの枠を超えて、女が憧れる「女の子」の見本帳を体現している。9名の大所帯だが、個々のキャラクターの違いが全体の存在感を生んだ。メンバーのジェシカが脱退し、今後は8名での活動になるようだ。サニーはメンバーで一番背が低く、親しみやすい顔立ち。ファンに向けた件の一言は、彼女が顔写真付きでSNSにアップしたもの。ファンはアイドルの悲しみにさえ同調し、自己を投影してしまう。だからアイドルは笑顔を貫くのかもしれない。傷ついたアイドルが再び立ち上がる、その瞬間にこそ強く惹かれるものがある。
〜わたしという名の少女〜
鏡の前に立つと、もうひとり
姉妹のように現れる影。
それは、わたしという名の少女。
鏡にほほえんでみせるのは
彼女の傷を癒すため。
鏡の奥に忘れてきた
小さな輝きを取り戻すため。
憧れをつのらせて少女は
クローゼットの隅に埋もれていたの。
夢も見ないで歩き出せるでしょうか。
生まれる時代を選べないなら
この足で切りひらけばいい、
誰よりかかとを高くして。
あなたが笑い、泣き出し、
思いどおりに駆ける自由を
この世で勝ち取ってみせる。
だから鏡の中の少女よ、
まっすぐに立つわたしを見ていて。
文月悠光(ふづき・ゆみ)
1991年生まれ。詩人。高3で発表した詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で中原中也賞を最年少受賞。「ミスiD2014」で"ポエドル"として話題に。ラジオ番組での詩の朗読、雑誌「ケトル」(太田出版)でのレビューなど広く活動中。