サイゾーpremium  > 特集  > 【リクルート】出身者本の読み解き方
第1特集
ノウハウなき元リク本【1】

高尚すぎて凡人には理解不可能? リクルートOB本の"福音"具合

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――東証一部上場に向けて注目を集め続けるリクルート。同社の創業者は『かもめが翔んだ日』や『リクルートのDNA』など、数々の名著を持つ江副浩正氏。その後を追うかのように、"リクルート卒業生"たちも続々と自著を発表し続けているが、その中身はなかなか"高度"なようで……。彼らの実態と、その読み解き方を検証していきたい。

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R25 つきぬけた男たち (日経ビジネス人文庫)

 これまで「ゼクシィ」や「とらばーゆ」「フロムA」「ホットペッパー」「R25」などなど、人材や情報、広告分野で革新的な手法を発揮してきたリクルート社。そのイケイケな社風と営業スタイルで業績を伸ばし続け、目下、東証一部上場に向けて邁進中である。そんな大企業なだけあって、同社から営業やマネージメントの手法を学ぼうとする営業マンやベンチャー経営者は多いようだ。事実、リクルート創業者・江副浩正氏の『リクルートのDNA』をはじめ、現役・OB/OGを問わず、リクルート関係者が書いたビジネス書は多く発刊され、売れ行きも好調。みんなが憧れる素敵な大企業リクルートが、我々悩める出来損ないに送るメソッド集は、きっとありがたい内容に違いない!ということで、いわゆるリクルート出身者本をリサーチしてみた。

 まずはその手法や営業の秘訣、回顧録など多岐にわたるリクルート出身者本の特徴とは何か。そこから探るべく、ビジネス書の出版プロデューサーであり『「ビジネス書」のトリセツ』【1】の著者・水野俊哉氏に話を聞いた。

「リクルート出身者の本は、とにかく著者のキャラ立ちがすごいですよね。たとえば、会社は潰れてしまいましたけど『千円札は拾うな。』【2】のワイキューブの安田佳生さんなんかが、その代表的な例でしょう。とにかく、一様にテンションが高い」
 なるほど、あのリクルート社員のイケイケのスタイルが、そのまま本に反映されているようだ。

「リクルートの方って、声の大きさとテンションで相手を圧倒してしまう、という印象があると思うんですけど、本にもそれがにじみ出ています。良い意味でも悪い意味でも、勢いがあるというか、やたらグイグイきたがるというか……。頼まれてもいないのに、みんな自分の個性を前面に出そうとしますよね。通常、ビジネス本というのは、読者が欲しいノウハウをまとめるものなんですが、彼らの本は、どちらかというと武勇伝自慢のエッセイ本として読んだほうが正しいかもしれません」(同)

 さらに、「同じくテンションの高い『リクルート流「最強の営業力」のすべて』【3】の大塚寿さんなんかは、『40代を後悔しない50のリスト 1万人の失敗談からわかった人生の法則』『30代を後悔しない〜』『結婚を後悔しない〜』(すべてダイヤモンド社)といった"後悔しないシリーズ"を累計40万部とも言われる大ヒットにさせました。それから、『僕たちはガンダムのジムである』が話題となった常見陽平さんのように、いろんなお仕事をされて、一見本職がわからないオールマイティな方が、リクルート流のグイグイいく”営業スタイル”をもって、売れる本を出している、というのも特徴でしょうか」と分析する。

 せっかくなので、その「本職がわからないオールマイティな方」で、9月に著書『リクルートという幻想』【4】を上梓予定のリクルートOB・常見陽平氏にも話を聞いてみた。

「ビジネス書寄りのリクルート本は、著者のセルフブランディング本なんですよ。リクルートOBのベンチャー社長にとっては名刺代わりにもなるし、取引先に送るために自分で買い取ったりもしますし、事業出版の本に近いと言えますね。その内容だって、リクルートで学んだ、自分たちにとっては当たり前にだったメソッドでも、世の中の人にとっては珍しいですしね。そこにリクルート時代のエピソードや武勇伝を挟めば、おもしろいということになる。しかし、ここで重要なのが『結局この人(著者)の何がすごいんだろう』を読み解く能力なんです」

 ここで常見氏が問題にしているのは、リクルートOBによる「あれオレ詐欺」である。「あれオレ詐欺」とは、「ゼクシィ」のようなリクルートのヒット商品を、「あれはオレが作った」と語る(騙る)功績誇張の手法である。この点に関しても、前出の水野氏は「今までに10人くらいは『ホットペッパーは自分が立ち上げました』と言う人に会ったことがあるんです。結局"言ったもん勝ち"になってしまっていて、読者にしてみれば、何が本当で何がすごいのかがわからないですよね」と苦笑いする。また、リクルートOBのA氏は「『「R25」のつくりかた』【5】の著者・藤井大輔さんは、同書の中で『リクルートって、サービスが成功すると”自分が立ち上げた!”と必ず手を挙げる人がたくさん出てくるんだよね』と『あれオレ』という人たちをバカにしてたのに、最新刊『逃げない・めげない カイシャ道』【6】はまさしく『あれオレ』と自慢するものでした。同書は、"『R25』を創刊した"彼が、そのノウハウ少しと自身の半生を披露……って内容ですからね。関係者の間では、『藤井さんもか』というシラケた空気が流れてましたよ。そもそも、誰に向けて書いている本なのかも、さっぱりわかりませんでした」と、ため息をつく。

 また「R25」関連でいうと、またまた"「R25」の創刊者"で、『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』【7】を上梓した現LINE株式会社執行役員、田端信太郎氏についても、こんな話が漏れ聞こえてきた。

「彼がよく肩書に入れている通り、『R25』の構想を立ち上げたことは事実なのですが……制作についてはまったくの素人だったために、『雑誌(メディア)作りのあまちゃんが、何ぶってるんだ』と、(前述の)藤井さんに実制作業務は掌握されていたんです。そのためマネタイズを担当するも、電通雑誌局への出向で『リクルートの口だけ達者な若者』っぷりが災いして、いじめられていたらしくて。リクルートと電通の橋渡し的ポジションにいたものの、内では藤井さん、外では電通のプレッシャーに押しつぶされ、かなり疲弊していましたね。それで近鉄バファローズやフジテレビの買収でマスコミをにぎわせていた頃のライブドアに転職したんですが、リクルートの社内で行われた送別会も、かなり質素なものだったという話です」(リクルートOB・B氏)

 ライブドアへの転職後は、同社の粉飾決算が発覚。「当時の社長だった堀江貴文氏の逮捕後、彼は執行役員となり、ライブドアニュースの改訂など存続をかけて立ち回った功績を前面に出すようになりました。ツイッターでも、持論のメディア論を展開してフォロワーを伸ばしていったんですが……『R25』の立ち上げの経緯や、なぜ当たったかといったインサイダー的な話も多数漏らしていて、リクルートの社内からは相当反感を買ってましたね」(同)

江副浩正の本を読めばすべて書いてあること

 もうひとつ、我々凡庸の徒がリクルートメソッドを学ぶときには、その内容についてもよく吟味しなければいけないという。その点について、常見氏がこう指摘する。

「最近また、江副語録がすごい! と話題になりましたが、江副さんの言葉って、表現が違うだけで内容はドラッカーの受け売りだったりするんです。でも、日本のビジネスマンのおもしろいところは、それを読んで『江副さんはすごい! ドラッカーと同じことを言っている!』と感心してしまうところなんですよね」

 耳が痛い。権威に対しての免疫も対処法も持ち合わせていない我々ボンクラ社会人は、その手のご神託に弱く、つい千数百円を払ってありがたく頂戴してしまうのである。なんと、ちょろいことか! また、このドラッカーの預言に限らず、『「元・リクルート最強母」の仕事も家庭も100%の働き方』【8】に記されている著者・堂薗稚子氏が妊娠中に上司に言われた「え? 妊娠ってそんなに大変なの? 休むまで普通にやりきればいいじゃないか」という言葉で迷いが吹っ切れてやる気が出たというエピソードや、前出の『千円札は拾うな。』に登場する「(仮面ライダーの)本郷猛を鍛えてはいけない」「家を売ってワインを買っても人生は破綻しない」といったメソッドなどは、我々には高尚すぎて「ご説ごもっともですが、もうちょっと実用的なアドバイスないですかね?」と唸らざるを得ない。いやはや、我ながら仕事ができない人間の読解力のなさには辟易としてしまう。

 では、我々がリクルート本から何かを学ぼうとするとき、どんな本を選んだらよいのか。

「もちろん、大塚さんの『リクルート流〜』や、江副さんの本はよかったですよ。きちんとビジネスの"ノウハウ"が入ってましたから。ところが、2007〜08年に勝間和代さんらのブレイクによってビジネス本ブームが起き、『猫も杓子もビジネス本を出す』という流れのなかで、『とりあえず本を出してみようか!』というリクルート出身の人たちが増えてしまった。そんな人たちが書いてる内容って、自分語り以外は、結局江副さんの本を読めば全部書いてあることなんです(笑)。新しく改革された社内のシステムや内輪でしか通用しない用語と事例を並べられても、読者からしたら何がすごいのかわかんないですからね」(水野氏)

「リクルート周辺の人たちって、非常識ならぬ"異常識"なんですよ。みんな江副さんのことを、さも自分のことのように語ったりしますしね。どこが著者のオリジナルなのかをきちんと見極めるべきです。『あれオレ詐欺』に代表されるように、リクルート時代の業績って、あなたひとりでやったことじゃないでしょう? って突っ込みどころが満載ですから」(常見氏)

 ページを繰ってみたら、我々の想像をはるかに超える難易度だったリクルート本。これらを読み解くには、著者のバックボーンや、一言で済むことを数ページにわたって書き連ねる、まるで錬金術のような文章から、肝心な一言をくみ取る能力が必要とされるのである。しかし、それができずに、本当の意図をくみ取れないまま、額面どおりに受け取ってわかった気になってしまうビジネスマンが量産されてしまってはいないだろうか。それとも、声がデカく、リクルートの精神論だけを体得する意識の高いビジネスマンを増やすことこそが、リクルート本の真の狙いなのだろうか……。「不景気になるとリクルート本が売れる」(同)というが、景気の上向きが期待される現在、今後リクルート本がどのような存在感を見せつけてくるのか、引き続き警戒……いや、注目していきたいものである。

結局ただの根性論っすよね?
1分でわかる! リクルート出身者本の3つの基本

リクルート出身者の本を読み解くと、やたら出てくる3つのキーワードがある。これを押さえれば、あなたもリクルートDNAをゲット!?

[その1]「テレクリ1000本ノック」で効率化
リクルートが有する膨大な企業データを元に、とにかく片っ端から「求人してませんか?」と電話をかけまくる行為のこと。実際に一軒一軒回るよりも、"効率がいい"とされている。テレフォンオペレーターよりも1日にかける電話回数が多いため、機械的な対応は得意になること間違いなし。

[その2]新規飛び込み営業名刺獲得キャンペーン
入社してすぐに新人に課せられる最初の難関こそ、このキャンペーン。とにかくビルの上から下まで、会社という会社を訪問しては名刺をせがむ。件の経沢香保子氏も、このキャンペーン期間中、5日で500枚の名刺をゲットしたことがウリになっている。

[その3]営業成績表彰制度によるトップ営業マン
社内の勝手な規定によって、ことあるごとに「ナンバー1営業マン」を表彰してくれるありがたい制度。「お祝儀出稿や、定期的に人材が必要な会社を顧客に持つなど、必ずしもその業績が自分の力ではないことが多い中、表彰されるとみんなこぞって"トップ営業マン"を名乗りたがる」(常見氏)のだという。

一言で言えば、"過労こそ美徳"なリクルートDNA。さあ、明日からバリバリ電話して、飛び込みまくってトップ営業マンを目指しましょう!

(文/水嶋利道)

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【1】『「ビジネス書」のトリセツ』
水野俊哉/徳間書店(09年)/1200円+税
ビジネス書の基礎知識やそれを読みこなすための読書術、著者の意図を見抜くための裏技、そして勝間和代や本田直之ら人気ビジネス書作家のデータ、さらにはビジネス書の書き方までを収録。


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【2】『千円札は拾うな。』
安田佳生/サンマーク出版(06年)/1200円+税
著者の経営哲学や人材育成に対する考え方を披露した同書。会社倒産後も『私、社長ではなくなりました。』を執筆し、彼の本を読めば起業から倒産までを学ぶことができる。


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【3】『リクルート流「最強の営業力」のすべて』
大塚 寿/PHP研究所(03年)/1300円+税
同書は、各界で活躍するOB/OGたちの本は、仕事に役立てようとするには論理不足であるということをいち早く指摘。リクルート出身者の成功ノウハウがわかる希少な1冊。


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【4】『リクルートという幻想』
常見陽平/中央公論新社(14年※9月10日発売予定)/800円+税
リクルートとは一体なんだったのか。同社の体質には"合っていなかった"という著者によって、同書の中でも「なぜリクルートOB・OGは本を出すのか?」という謎に触れている。


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【5】『「R25」の作り方』
藤井大輔/日本経済新聞出版社(09年)/850円+税
「R25」成功のノウハウを、創刊編集長の藤井氏が語り尽くしたもの。「本人は文章が苦手」(関係者・A氏)ということで、同じく元リクルートの上坂徹氏が聞き書きでまとめている。


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【6】『逃げない・めげないカイシャ道』
藤井大輔/ミシマ社(14年)/1500円+税
リクルートで19年間働き、「R25」を創刊させた編集長が、そのキャリア論、マネジメント術などをまとめた。本作については、自身で書き下ろしたものとのこと。


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【7】『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』
本田哲也、 田端信太郎 /ディスカヴァー・トゥエンティワン(14年)/1500円+税
『戦略PR』の著者・本田哲也氏との共著で、7月末に上梓されたばかりの同書。広告やマーケティングの"本質"を語ってくれるそう。


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【8】『「元・リクルート最強母」の仕事も家庭も100%の働き方』
堂薗稚子/KADOKAWA(14年)/1300円+税
「仕事も子育ても両立したい! 」という、ワーキングマザーの代表として、リクルート出身の著者が"ガツガツ働く"方法を伝授してくれる。


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