サイゾーpremium  > 特集  > 本・マンガ  > 採算度外視の【自主雑誌】の甘美な世界
第1特集
活況を呈す自主出版の最前線【1】

マンガ同人誌、アート系ZINE…… 採算度外視の"自主雑誌"の甘美な世界

+お気に入りに追加

――出版社ではない個人や団体がインディペンデントで制作した雑誌にも見える冊子=自主出版が活況を呈していると聞く。同人誌、ミニコミ、ZINE……と呼び名は様々で、スカしたメディアはカフェや雑貨屋に置かれるものばかり取り上げるが、『岡崎京子の研究』などの著書で知られるばるぼら氏が、シーンのリアルな全像を浮上させる!

1402_minicomi_1.jpg
自主制作マンガ誌「ユースカ」【6】創刊号には、ネットレーベル〈Maltine Records〉から音源をリリースしているDJ/トラックメイカーのオカダダも寄稿している。

 出版不況という言葉も聞き飽き、毎年訪れる電子書籍元年にも慣れてきた編集者/デザイナー/ライターたちが、新たな活路として期待を寄せるのが「自主出版」の世界だ。まぎらわしいが、高いお金を出して自分の本を出版社に出してもらう「自費出版」とは違い、日販やトーハンのような大手出版取次を通さず、編集制作、取引、頒布などを自ら主体となって行うのが「自主」という言葉の意味である。

 自主出版には同人誌、ミニコミ、ファンジン、インディーマガジン、リトルプレス、ZINEなど呼び名がいくつもあり、歴史的背景や意味はそれぞれ違う。たとえば「同人誌」はマンガ同人誌とイコールに思われがちだが、本来は同じ志を持つ人々=同人が作る雑誌のことで、詩も小説も評論も幅広くある。とはいえ、正確に使い分ける人は少数なので問題にしない。重要なのは、なぜそれらが注目を集めているのかだ。

 当然それは、2000年代に入ってからも規模を拡大する同人誌即売会「コミックマーケット」が、一般流通網とは別の経済圏を確立していることの影響抜きには語れない。3日で50万人以上を集めるイベントは、日本中探してもコミケットのみ。その巨大化はシーン全体の活性化につながり(カッコ内はおよその来場者数)、オリジナル創作同人誌が主体の「コミティア」(約1万人)や、文章系同人誌/ミニコミが多い「文学フリマ」(約3400人)、音楽や映像作品など音系同人中心の「M3」(約9000人)、芸大生やアーティストが自作品を扱う「デザインフェスタ」(約6万人/2日)などの即売会も活況を呈している。

 さらに、自主出版物の常備店/ネット通販店の増加も一因だ。即売会に予定を合わせずに買える敷居の低さは、新規ユーザの増加を生んでいるはず。模索舎、タコシェといった老舗ミニコミ店のみならず、二次創作同人誌を中心に取り扱うとらのあな、ケイブックス、メロンブックスなどの同人ショップは、2000年代に入るまでに一般書店とは違う流通網として定着。コミックジンや恵文社バンビオ店のような品ぞろえに個性を出す店や、イレギュラー・リズム・アサイラム、リルマグ、フロットサムブックスをはじめZINEを取り扱う店も2000年代中頃から増える一方だ。こうした盛り上がりに触れた人々が、「これからはもう自分でやるしかない!」という考えに向かうのだろう。

 実際、一人で執筆、編集、デザイン、印刷所入稿まで済ませば、制作費はかなり安く抑えられる。ただ、コミケットが12年に発表した調査では、50冊未満しか売れていないサークルが32%、年間収支赤字のサークルが約66%との結果が出ており、そう簡単に売れるわけでも儲かるわけでもないことは釘を刺しておきたい。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2021年5月号

新タブー大全'21

新タブー大全'21
    • 【森発言は女性差別?】高齢者座談会
    • 広がる【陰謀論とGAFA】の対応
    • 【Qアノン】の主張
    • ビジネス的な【福音派】の布教
    • 【ザ・ボーイズ】が描く福音派
    • 【反ワクチン運動】の潮流
    • 取り沙汰されてきた【ワクチン4種】
    • 【メガIT企業】が触れたタブー
    • 【民間PCR検査】の歪な構造
    • 【NHK】に問われる真価
    • 【テレ東】が身中に抱えた爆弾
    • 【キム・カーダシアン】の(危)人生
    • 【仰天修羅場】傑作5選
    • 月収12万でアイドルが【パパ活】
    • 【パパ活】の背景にある雇用問題
    • 金融の民主化【ロビンフッド】の闇

「小川淳也」政治とコロナと与野党を語る

「小川淳也」政治とコロナと与野党を語る
    • 【小川淳也】政治とコロナと与野党を語る

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 【朝日ななみ】新人役者は“嫌われるほど悪い役”を目指す!
    • 【はるかりまあこ】新風を巻き起こす三人官女のサウンド
    • 【SILENT KILLA JOINT & dhrma】気鋭ラッパーとビート職人
    • 【松居大悟】自身の舞台劇をどのように映画化したのか?
    • 【BOCCHI。】“おひとりさま。”にやさしい新人7人組

連載

    • 【都丸紗也華】ボブ、マジ楽なんです。
    • 【アレンジレシピ】の世界
    • 【愛】という名のもとに
    • なぜ【AI×倫理】が必要なのか
    • 【萱野稔人】人間の知性と言葉の関係
    • 【スポンサー】ありきの密な祭り
    • 【地球に優しい】企業が誕生
    • 【丸屋九兵衛】メーガン妃を語る
    • 【町山智浩】「ノマドランド」ノマドの希望と絶望
    • 【総務省スキャンダル】と政府の放送免許付与
    • 【般若】が語った適当論
    • 【小原真史】の「写真時評」
    • 【田澤健一郎】“かなわぬ恋”に泣いた【ゲイのスプリンター】
    • 【笹 公人】「念力事報」呪われたオリンピック
    • 【澤田晃宏】鳥栖のベトナム人とネパール人
    • 【AmamiyaMaako】イメージは細かく具体的に!
    • 【稲田豊史】「大奥」SF大河が示した現実
    • 【辛酸なめ子】の「佳子様偏愛採取録」
    • 伝説のワイナリーの名を冠す【新文化発信地】
    • 【更科修一郎】幽霊、ラジオスターとイキリオタク。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』