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第1特集
マンガ番外地「エロ劇画」秘録【1】

業界は死の淵ゆえに超カオス! マンガ番外地「エロ劇画」秘録

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――「だいたいのマンガは読み尽くした」という読者諸君! だが、ちょっと待ってほしい。エロ劇画の存在を忘れてはいないだろうか? 前回のマンガ特集(12年12月号)でもお伝えした通り、瀕死のエロ劇画ではあるが、その楽しみ方を知れば、アナタの知らない濃厚な世界が待ち受けているに違いない。

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『制服美少女・屈辱の仕置き』(久保書店)

 エロ劇画とは、昭和の香り漂う写実的&肉感的な官能マンガを指す。70年代に誕生したエロ劇画誌は、80年代には100誌を超えたが、今や10誌以下。廃業する作家も相次ぎ、もはやマンガ界の絶滅危惧種といえる。

「ここ1、2年で『熟女ものがたり』【1】『漫画ダイナマイト』【2】といった有名どころも休刊しています。新創刊もなくはないですが、実験的に1~2号出しては人知れず消えていく。活性化は難しいです」

 そう語るのは、某エロ劇画誌ベテラン編集者A氏。エロ劇画誌衰退の背景には、ロリコン/美少女系エロマンガの台頭や、インターネットによる「エロの無料化」、主要販路である書店の減少などがあるが、そもそも絵柄が時流に合わなくなっていることが大きい。

「エロ劇画の読者層は50代以上が中心。マンガ家も、長年この業界を牽引してきたベテランばかり。新人はロリ系エロマンガに流れていますし、下山ギルコのような若手(といっても40代でデビュー)も伸びてきてはいるものの、レアケースです」(A氏)

 また、読者は、雑誌単位で気まぐれに消費する人が大半だという。よってエロ劇画は原則として1話完結であり、単行本としてアーカイブされることもほとんどない。

異形の作品が生まれるマンガ界のガラパゴス

 もはや死に体のエロ劇画だが、現在のマンガ文化の埒外にあるがゆえにガラパゴス的な進化を遂げた、異形の作品がゴロゴロしている。そんな「エクストリーム・エロ劇画」の伝道師が、前回のエロ劇画記事でもご登場いただいた、ブログ「なめくじ長屋奇考録」管理人・劇画狼氏だ。

「エロ劇画は世間的には一切無視され、ネット上の評判からも隔絶された中、おそらく編集者のダメ出しも受けずに、ひどく歪んだまま誌面に掲載されている。これは恐ろしいことです」(劇画狼氏)

 たとえば、エロ劇画界ではいまだに「秋のキノコ狩りに行ったら、近所の旦那さんのマツタケがご立派で」的なベタすぎるプロットが当たり前のように頻出するが、作中人物が使う携帯電話がスマホになっていたりして、ちぐはぐなおかしみが漂う。また、エロ劇画は往々にして「後半の性描写」への展開が強引だ。

「不妊治療に訪れた人妻に、医者が『骨盤を矯正するのです!』と言い放ったかと思えば、次の瞬間には『そうすれば感度が上がりますぞ!』と、なんの説明もなく不感症の治療にすり替わっていたりして、異次元すぎてめまいがします」(同)

 以下に、劇画狼氏オススメのエロ劇画誌を挙げてみよう。

「漫画ローレンス」【3】およびその別冊「漫画ローレンスR45」【4】は、人気作家が集う定番。「本当にあったみだらな話」【5】は、「漫画ダイナマイト」休刊後、エロ劇画の巨頭・古田一也作品が読める数少ない雑誌のひとつ。「漫画プラザ」【6】では、矢崎透の人妻怪盗モノ(そんなカテゴリーが存在するのか不明だが……)『仮面男爵』が連載中だ。

 エロ劇画界を俯瞰すると、衰退の一途をたどりながらも、その作風は実に自由だ。そこには「裸とセックスさえ出せば、あとは何を描いてもOK」という、70年代ポルノ映画的な空気が残っている。ゆえに、実は作家性が反映されやすい。そして、その作家性を炸裂させまくっているのが、現在「完熟ものがたり」【7】『人妻人形・アイⅡ』【8】を連載中の三条友美だ。

「まず熟女系エロ劇画誌に堂々とSFバトルマンガが連載されているという状況そのものが意味不明。殺し屋たちの奇想天外な能力バトルが物語の軸で、エロはオマケ程度です。三条先生は大の映画好きで、『ブレードランナー』などのSF映画をエロ劇画に落とし込んだのが『人妻人形・アイ』だとおっしゃっていましたが、なるほどなという感じ」(同)

 そんな斬新な試みをしているのが新人作家ではなく、マンガ家歴30年以上のベテラン作家なのだから驚きだ。前出のエロ劇画誌編集者A氏も、三条友美には注目している。

「三条さんは、読者層が高齢化する一方のエロ劇画界にあって、30代のファンが多い希有な存在。また、つい最近も『妻を家畜にしてください』【9】が刊行されたように、単行本で採算が取れる数少ない作家で、サブカル的な人気を集めていますね」

 劇画狼氏は、12年末に「雑誌掲載されたものの単行本化に至っていない作品を救済するプロジェクト」として、おおかみ書房(http://www.vvolfbooks.com)を立ち上げている。13年3月には三条友美のホラー集『寄生少女』【10】を発行し、わずか1カ月半で1000部を完売。11月30日には三条ホラー第2弾『アリスの家』【11】が発刊予定だ。この活動がシーンの活性化につながるか、それはまだわからないが、エロ劇画には、異形のマンガジャンルとして、絶滅を免れてほしいものだ。

(取材・文/須藤 輝)

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【1】「熟女ものがたり」
茜新社(休刊)/500円
三条友美、ケン月影、笠間しろう、冨田 茂など、エロ劇画界の巨匠が集結した熟女専門エロ劇画誌。03年に創刊され、熟女マンガブームを牽引したが、12年に惜しまれつつ休刊。


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【2】「漫画ダイナマイト」
辰巳出版(休刊)/420円
古田一也作品のほか、主人公の女占い師がイクときに「エロエロエッサイム~」と叫ぶ、茶坊の「セックス占いの館」シリーズなどで人気を博したが、11年にあえなく休刊。


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【3】「漫画ローレンス」
綜合図書(毎月28日発売)/480円
昨年創刊30年を迎えた老舗。青山一海、吉浜さかり、林 昌也、井河隆志という人気4作家の作品を押さえられる。局部の白消しも大きめで、エロ劇画初心者にもオススメ。


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【4】「漫画ローレンスR45」
富士美出版(毎月5日発売)/480円
R45=45歳以上の熟女に絞った別冊で、連載陣は本誌とかぶる。現在も故・沖 圭一郎のイラストが表紙を飾るなど、自分は本当に今を生きているのかを問い直す機会になる。


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【5】「本当にあったみだらな話」
一水社(毎月17日発売)/490円
どこかおかしい、というよりおかしくない点がひとつもない古田一也の狂った作風を拝めるだけでも価値ある雑誌。若松 智が描く、心まで小汚い肉体労働者もすばらしく不快。


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【6】「漫画プラザ」
蒼竜社(毎月8日発売)/480円
11年に人妻エロ雑誌に路線変更したが、今年、頼んでないのにエロ劇画誌として復活。ぶっとんだ設定の『仮面男爵』のほか、村田やすゆきのムダに可愛いおっさん描写も必見。


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【7】「完熟ものがたり」
茜新社(奇数月6日発売)/460円
「熟女ものがたり」の姉妹雑誌として「背徳の四十路&五十路妻」のキャッチコピーで創刊された。下山ギルコやセニョール大悦など、単行本化が待たれる気鋭の作家を輩出。


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【8】『人妻人形・アイⅡ』
三条友美/茜新社「完熟ものがたり」にて連載中
休刊した「熟女ものがたり」で連載されていたSFバトルエロ劇画『人妻人形・アイ』の続編。1話あたりのページ数も登場キャラクターも増え、バトルもエロもパワーアップ!


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【9】『妻を家畜にしてください』
三条友美/茜新社(13年)/1500円
三条友美ならではのマニアックな凌辱ワールドが展開する初単行本化作品集。色情狂のM奴隷に改造される若妻、母と娘の2穴同時調教、さらには禁断のスカトロまで……。


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【10】『寄生少女』
三条友美/おおかみ書房(13年)/1260円
ぶんか社「ホラーM」掲載作品のうち、あまりの過激さと加虐描写で単行本未収録となっていた作品24本から「蟲が出てくるモノ」を選んで収録したおおかみ書房第1弾作品。


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【11】『アリスの家』
三条友美/おおかみ書房(13年)/1375円
『寄生少女』に収録されなかった作品に描き下ろしを加えた封印ホラー集第2弾。しかしその実態はホラーの皮をかぶったSMマンガで、描かれているのは純粋な「少女への暴力」だ。

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