サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > ビーイングが荒らした?タイアップが【アニソン】にもたらした功罪
第1特集
SMAPやGLAYも!アニソンとタイアップの蜜月関係【1】

ビーイング、エイベックスが”荒らした”? タイアップがアニソンにもたらした功と罪

+お気に入りに追加

──アニメソング(アニソン)というと、水木一郎や声優らが歌うオタク向けの楽曲というイメージがある。しかし、その歴史を鑑みれば、アニソンはかつてより多くのアーティストのタイアップの場として機能し、そこから人気を博したアーティストも少なくない。すなわちアニソンの歴史とは、タイアップソングの歴史であるともいえるのだ。その50年の変遷をつまびらかにしていく。

1308_anime_01.jpg
『THE BEST OF DETECTIVE CONAN ~名探偵コナン テーマ曲集~』(画像左)は、160万枚以上を売り上げ、アニメ系コンピレーション・アルバムとして『およげ!たいやきくん』を抜いて歴代1位となった。内容はビーイングの中堅歌手が勢揃いしている。『鋼の錬金術師 COMPLETE BEST』(画像右)は、アニメのコンピレーション・アルバムとして、オリコン史上初めて週間ランキング1位を獲得。こちらはソニー系アーティスト揃い。

 今年、2013年は、63年の日本初の国産テレビアニメ『鉄腕アトム』の放送開始からちょうど50年に当たる。そして、その歴史は同時に「アニメソングの歴史」でもある。“アニソン”というと、かつて『マジンガーZ』の水木一郎や『宇宙戦艦ヤマト』のささきいさおが歌っていたような、「アニメのタイトル」や「必殺技」を連呼する楽曲、出演声優がキャラクターの声で歌うキャラクターソングを指すことが多い。一方で、現在放送中のアニメを見ると、『銀の匙』のスキマスイッチや『名探偵コナン』のB’zといったアーティストやバンドが、露出の増加を目的に作品の主題歌を担当する「タイアップ」として歌っていることもままある。こうしたタイアップ曲に対しては、「アニメと関係ない歌手が歌っている」などの理由で、毛嫌いするアニメファンも少なくない。

 だが、歴史をひもとけば、アニソンはタイアップと共に発展してきたジャンルであることがわかるのだ。本稿ではテレビアニメ、劇場用アニメの主題歌となった曲を「アニソン」と定義し、“アニソンとタイアップ”という50年にわたる蜜月関係を、駆け足ながら明らかにしていく。

『鉄腕アトム』に始まる最初期のアニソンは、少年合唱団や男性ボーカルグループを起用した“子どものための唱歌”であり、タイアップという考えはほぼなかった。

 60年代後半から70年代初頭に入ると、もともと童謡部門が強かった日本コロムビアが本格的にアニソンのレコードビジネスを開始。『紅三四郎』でデビューした堀江美都子、今やアニソン界の重鎮とされる水木一郎ら、当時活躍していたアニソン歌手の多くが日本コロムビアに所属しており、「アニソンといえば日本コロムビア」という時代であった。

 一方、当時のアニソンは子ども向けの低ランクの仕事で、売れない俳優や歌手が糊口をしのぐために歌うモノという意識が強かった。アニソン業界関係者も「当時、アニソンを自分のコンサートで歌うことを嫌がる歌手も少なくなかったと聞きます」と語る。前出の水木一郎も、歌謡歌手としてヒットに恵まれない中でアニソンデビューを果たしている。

 そんな中、恐らくテレビアニメ史上初めて、アニソンが「新人アーティストのプロモーション」として活用されるという事件が起きる。デビュー直後のかぐや姫が、須藤リカとのユニットで『海のトリトン』(72年)のオープニングテーマを担当したところ、アニメ映像の制作の遅れを受け、オープニングの一部にアーティストたち本人の映像が差し込まれることとなったのだ。結果、本作はアーティスト自体のプロモーションに寄与した初めてのアニソンになったといえるだろう。

 70年代後半になると、『宇宙戦艦ヤマト』といったアニメファン向け劇場用アニメの出現で、人気アーティストによるアニソンが増え始める。前出の業界関係者は、この背景を「当時の映画業界には『アニメ映画』というカテゴリーが存在せず、実写映画を手がけるプロデューサーがアニメ作品も担当するという構造がありました。加えて、莫大な予算と公開規模に見合った集客力のある有名アーティストを起用する必要性があったのでは」と推測する。

 この時期のアニソンは、アニメの脚本管理などを受け持つ文芸担当スタッフが作詞を、アニメの作曲家がそのまま主題歌の作曲を手がけることも多く、大半がアニメの世界観に寄せた楽曲に仕上がっていた。そのため、有名アーティストの起用についても、「特に批判は見受けられなかった」とアニソンの歴史に詳しい評論家の日下三蔵氏は言う。こうして、アニソンはその裾野を徐々に広げていく。

『宇宙戦艦ヤマト』主題歌のレコード売り上げが200万枚以上を記録する大ヒットになったことなどを受け、80年代には、「アニメの音楽が売り物になる」という認識が音楽業界に定着。結果、ソニーやビクターら、多彩なアーティストを擁するさまざまなレコード会社がアニソンを積極的にリリースするようになった。こうした流れの中で、「テレビアニメでは、80年代前半から、歌謡曲のヒットメーカーがアニメの主題歌を作曲することが多くなりました。この時期が、アニソンのターニングポイントと言えるでしょう」と、水木一郎のバックを支えるコーラスグループ・ザ☆カインズのメンバーで、アニソンに造詣の深い斉藤淳一氏は語る。84年に、新人歌手・鮎川麻弥が歌った『重戦機エルガイム』の主題歌「風のノー・リプライ」は、作詞・売野雅勇、作曲・筒美京平という当時のヒットメーカーが手がけたことで、10万枚弱のスマッシュヒットを記録。同作の成功を受け、その後『機動戦士Zガンダム』の森口博子、『機甲戦記ドラグナー』の山瀬まみなど、デビュー直後のアイドルたちもアニソンを歌うようになっていった。

90年代ビーイングブームで花盛りとなるタイアップ

 こうして徐々にプロモーションとしての立ち位置を確立してきたアニソンタイアップは、90年代に花盛りを迎える。B’zやZARDなどを擁するビーイングは、ひとつのアニメ番組における音楽を一手に担うことで、そのアニメの主題歌や挿入歌をすべて自社所属のアーティストに歌わせるという戦略を展開。200万枚近くを売り上げた『ちびまる子ちゃん』の「おどるポンポコリン」(B・B・クイーンズ)のヒットを皮切りに、ZARDが『名探偵コナン』とのタイアップを行うなどして、多数のヒット曲を輩出した。90年代当時は、同社所属のTUBEやB’zのブレイクで、ビーイングブームの真っただ中。その一翼を、アニソンが担うという状況となった。

 また、アニプレックスの前身であるSPE・ビジュアルワークス製作の『るろうに剣心』(96年)では、ソニー系アーティストが主題歌を担当。ミリオンセラーとなったJUDY AND MARYの「そばかす」など、アニメの作風に合わない楽曲を次々と起用したことで、アニメファンの間で物議を醸した。主題歌が作品と乖離する傾向にあったこの時代を「悪しきタイアップの時代」と、前出の日下氏は語る。

 そのほか、94年前後には、後のビジュアル系バンドブームに先駆けてL’Arc~en~CielやGLAY、さらに当時、ブレイク前のSMAPやTOKIOなどもアニソンを歌っており、アニソンは、次世代アーティストの売り込みの場として大規模に展開されるようになる。もっともこの時代のタイアップ曲に関して、アニソンとしてヒットしていたのかという点には疑問が残る。当時のCDジャケットなどを見ても、アニメとのタイアップを前面に押し出したデザインでないものも多い【こちらの記事参照】。日下氏も、「シャ乱Qの『シングルベッド』など、爆発的にヒットした曲は、アニメとのタイアップがなくともヒットした可能性は高いです。ただ、毎週ゴールデンタイムに歌が流れ、メディアへの露出が増えることで、ヒットの後押しをしたという側面はあると思う」と分析する。

 そして、95年頃の『新世紀エヴァンゲリオン』ブーム以降、一年間に放送されるアニメの本数が、それまでの50~60本程度から100本前後にまで増加したことで、アニソンの需要も急増。以前にも増して多くの新人アーティストがアニソンを歌うようになるが、その多くはアニメの内容から離れた楽曲であった。

「その流れを変えたのが、00年代以降のエイベックス系アニソンでした。00年代以降のエイベックスは、90年代のタイアップ系アニソンに対する批判から学習したのでしょう。自社レーベルで音楽を受け持った『ヒカルの碁』の主題歌として、作品を彷彿とさせながらも普遍性の高い歌詞を盛り込んだdream(現Dream)の「Get over」を当てたように、アニメの世界観を感じさせる詞とJ-POPとしての音楽性を融合させたタイアップ曲を生み出していき、アニメファンから一定の評価を得るようになりました」(日下氏)

 中には、75万枚以上を売り上げ、01年の『日本レコード大賞』の大賞に輝いた浜崎あゆみの「Dearest」(『犬夜叉』の主題歌)のように、まったくアニメと合わない商業臭の強い楽曲もあったものの、この時期にエイベックスは、アニメファンにも受け入れられるタイアップ系アニソンの方法論を発見したといえるだろう。

 また、別の関係者によれば、02年頃、日本コロムビアでアニメ・特撮系を手がけていたプロデューサーがエイベックスへと移籍したこともあり、同社がアニメ業界とのパイプ作りに努めていたのでは、という話もある。

 日下氏は、「00年代は、エイベックスがJ-POPでありながらアニソンとしても成立する曲を生み出し、後に続くタイアップ曲の道程を切り開いた時代」と語る。冒頭に挙げたB’zも、『名探偵コナン』にマッチした楽曲「Q&A」を提供しているように、この方法論は今も有効に機能している。

 その後00年代後期には、アニメの主戦場が深夜帯へと移ったこともあり、一般層への露出は減少。現在のアニソンの潮流は、購買力の高いオタクファン相手に手堅い売り上げが見込める、出演声優を起用した楽曲へとシフトしているが、こうした状況下で、新たな動きが生まれているとして、アニメ業界関係者は以下のように話す。

「確かに、昔はアニメの製作側と音楽レーベルの力関係によって、アニメの内容に無関係な楽曲がねじ込まれることもあったようです。しかしかつてのタイアップと違い、今はアニメ作品と新進アーティストを一緒に育てるという意識が強くなっています。例えば『化物語』や『ギルティクラウン』などでアニメとの親和性を高め、固定ファンを増やしているsupercell。『魔法少女まどか☆マギカ』などを担当したClariSも当てはまるでしょう。そうやって、音楽不況の今でも売り上げが立つアーティストを作っているのです」

 これまで見てきたように、アニソンはタイアップ楽曲が牽引してきたジャンルといえる。タイアップを通じて、アーティストとアニメは歩み寄っていった。こうしたメソッドを踏襲し、再びみなが口ずさむアニソンが生まれる日も、そう遠くないかもしれない。

(文/有田 俊)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ