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第1特集
カラオケ番組と化した歌番組没落とテレビ局の打算【1】

かつての名番組はなぜ衰退したのか? 生かすも殺すも金次第歌番組が消えるワケ

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──かつてはゴールデンで放映され、安定した視聴率を獲得していた歌番組。だが、それも現在では深夜枠に追いやられている。この不毛なジャンルはどこに向かうのだろうか?

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 歌番組の凋落が止まらない――。1970~80年代は、『ザ・ベストテン』(TBS)、『夜のヒットスタジオ』(フジ)、『紅白歌のベストテン』(後の『ザ・トップテン』・日テレ)などの番組が、ゴールデンタイムを席巻していたことを記憶している読者も多いだろう。視聴率も『ザ・ベストテン』が全盛期の80年代初頭で平均18%、最高視聴率は40%超えを記録。そのほかの番組も平均12~18%を叩きだしていた。

 その後、冒頭に挙げた各番組は80年代後半に軒並み終了、一時、歌番組そのものが失速するものの、90年代に入るとバラエティ要素を強く持たせた『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(フジ)や『うたばん』(TBS)が登場。平均視聴率は15%強を誇っていたが、現在では、それらも消滅。先日、『HEY!HEY!HEY!~』が特番で復活したが、現存している有名ドコロの歌番組は『ミュージックステーション』(テレ朝)や『MUSIC JAPAN』(NHK)が挙げられる。だが、現在の歌番組の多くは深夜帯で放映されており、また、レーベルとの密接なつながりで辛うじて放映されているのが現状だという。

「歌番組では視聴率が取れない時代になり、今はどの番組も視聴率が一桁台。人気アイドルや売れているバンドが登場しても、良くて8%程度にしかならない」(テレビ関係者)

 さてここでは、こうした歌番組がなぜ凋落したのか、その裏面史と、歌番組の展望を見ていこう。

 まずは、歌手を中心にマネジメントする芸能プロダクション、いわゆる“歌プロ”の幹部は、聴き手の変化について次のように解説する。

「80年代後半、CDが世に出回った頃から、音楽コンテンツがジャンルごとに細分化され始めたようです。演歌、歌謡曲は還暦を過ぎた人達が聴く音楽、30~40代はJ‐POP、それ以下はアイドル……という、それまでなんとなく分けられていた業界のジャンルという不文律が確立された。こうした流れが加速すると、歌番組にも視聴者ターゲットに合った歌手だけを出演させる番組構成が求められるのですが、それではマス(= 大衆)を相手にした視聴率は取りづらい。そこで生まれたのが、幅広い視聴者を持つバラエティ番組と歌番組の融合です」

 こうした理由により、アイドルから演歌歌手までが登場する70~80年代の歌番組の視聴率が急降下し、『ベストテン』は89年に、『トップテン』は86年に、『ヒットスタジオ』は90年に打ち切られることになり、『HEY!HEY!HEY!~』などの新たな歌“バラエティ”番組が登場した格好だ。

 さて、この「新ジャンル」の誕生は、90年代からすでに始まっていた視聴者の“テレビ離れ”を阻止するための施策だった。これまで本誌でも再三指摘してきたが、この時期からのテレビ番組は、お笑いブームに便乗し、バラエティ化へとシフトしていった。さりとて、本来ならば視聴率の取れない歌番組をモデルチェンジさせてまで存続させる必要はないはずだが、舞台裏では「歌番組を残さなければいけない理由が明確にあった」と『ベストテン』など、多くの歌番組制作を手がけた元・河出映像センター長で映像評論家の清水浩氏は語る。

「存続理由は2つあり、まずは局としての“こだわり”。当時はテレビとはニュース、スポーツ、歌、ドラマ、娯楽から成り立つものという慣習が残っており、歌番組の視聴率が悪くても打ち切りまでは誰も考えておらず、『どうすれば生き残ることができるのか?』と吟味していた時代です。もうひとつは“政治力”。当時の音楽業界は、歌手の興行ビジネスによる収益の比率が大きく、『輝く! 日本レコード大賞』(TBS)や『NHK紅白歌合戦』に出場することがステータス。これら年末の大舞台を踏ませるためにも、一般視聴者に歌手や歌の存在を認識させる必要があったのです。そのために業界に多大な影響力を持つ大手芸能プロは、番組制作にプレッシャーをかけてきました」

 小泉今日子や郷ひろみといった当時の人気歌手を擁するバーニングプロダクションはテレビとの連携が強いことで有名だが、一方で、90年代はZARD、B'zらが所属するビーイングが台頭した時代。同プロ創業者である長戸大幸氏は「旧態依然としたプロモーションを嫌悪し、独自の世界観を確立し、テレビに頼らない売り出し方を探っていった」(前出・歌プロ幹部)という。マスコミへの露出を極端に控えたZARDのプロモーションは、業界ではいまだ語り草となっている。

 そんな歌番組もバラエティの融合を掲げ、一時は持ち直したかに見えたが、2010年前後からは視聴率が下げ止まらず、折からの不況で広告費も減少、70年代の歌番組同様、視聴者とスポンサー離れにより打ち切りへと進んでいった。

あの名物番組がBSで復活する?

 では、現存している歌番組は、なぜ続けることができるのだろうか? それは制作費を削ることや、特定の芸能プロと強固な関係を持つこと、さらにはニッチなジャンルに特化することでターゲット視聴者を明確に絞ったことで可能となっているのだろう。

 だが、“それ以外”の理由で存続している番組もあるようだ。前出・歌プロ幹部の話。

「64年スタートの老舗番組である『ミュージックフェア』は番組スタートから『シオノギ製薬』の1社提供。今ではまったく視聴率が取れず形骸化してる番組ですが、シオノギ製薬社長の強い意向から『提供支援ができる限りは番組を続ける』方針だとか。フジとしても年間10億円以上のスポンサーフィーが入ってくるようで、視聴率は二の次だととらえる制作スタッフもいるようです」

 連結売り上げ約3000億円を誇る同社からしてみれば、10億円のスポンサードはそこまで影響しないのだろう。一方、『Mステ』の場合はスポンサーの意向ではなく、テレ朝社長の“威光”がチラつき、やめるにやめられない事情だという。

「この番組は、テレ朝の早河洋社長が、制作プロデューサー時代に手がけた番組。早河氏といえば、『川口浩探検隊』シリーズをはじめ、テレ朝の情報・バラエティ番組の祖を築いた人物。とはいえ、彼が担当した番組でいまだ残っているのは『Mステ』のみ。現在のテレ朝は年度視聴率二冠を達成するなど、絶好調ゆえ、とても編成から“打ち切り”など提案できません。提案した人間が“打ち切られ”ますよ(笑)」(テレ朝関係者)

 こういった番組はごくまれな例だが、視聴率やCMが期待できない番組は、今後どうなるのだろうか? 前出・清水氏は、ある問題点を指摘する。

「テレ朝の早河社長が『Mステ』については存続させることを決めているようですが、実はどの局も生放送の歌番組を復活させたいと幹部は思っているそうです。今は放送事故を嫌う風潮から、収録放送がほとんどで、テレビに“いい意味で”放送事故などのハプニングがなく、優等生番組ばかり。生放送の王道だった歌番組は『ベストテン』でしたが、それが打ち切られて四半世紀。そのため、もはや局の現場で生歌番組を作れるディレクターやプロデューサーが育っていない」

 タイムテーブルは存在するものの、生歌番組はオーケストラの準備、その日の楽曲のスピードなど、状況に応じて変化するものが多い。時間が読めない番組なのだ。

「かつて、TBSが生んだ名物番組『8時だョ!全員集合』において、エンディングの『いい湯だな』の曲のスピードを変えていた。時間が押しているときはオーケストラのスピードを最速にし、時間に余裕があるときはスローで何回も繰り返す。テレビマンからすると、瞬時に残り時間を計算してスピードを変える必要があるため、職人技ともいわれ、業界では伝説化しています。この手法は、同じくTBSの生歌番組『ザ・ベストテン』にも生かされており、番組の残り時間から逆算してエンドロールの時間と1位の歌手のコーラス数、スピードを調節していた」(テレビ制作関係者)

 そんな職人技を今後、BS放送で見ることができるという。オリコンチャートや売り上げ枚数などではなく、視聴者からのリクエストを中心とした、生歌番組が復活するというのだ。BSは有料放送、スポンサーもテレビ通販が年間CM枠を買っており、視聴率を気にしない番組編成が組める。

「BS放送の契約者の多くは40歳以上で、いわば生歌番組を見て育った世代。そんな彼らのニーズにこたえたようですが、再来年の放映で企画が進んでいるそうです。12年度決算では、BS局は全社黒字計上したといい、今後、この世代を狙った番組は増加していくでしょう」(前出・清水氏)

 前述した職人技を持つテレビマンは現在、還暦越え。もはやロートルの域に達しているが、地上波で消えた名物番組は成功するのだろうか? テレビというメディアはその文化から、とかく若者視点で語られがちだが、黄金期を支えた視聴者や制作スタッフの世代の視点から見るのも、また一興だろう。

(取材・文/一木昭克)

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