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第1特集
スティーブ・ジョブズも犠牲に? マクロビに潜む落とし穴【1】

ストイックなマクロビ女子は生理が止まる!? オーガニックな食事法に潜む落とし穴

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――その意味は詳しく知らなくても、“マクロビ”という言葉自体は耳にしたことがあるだろう。あるいは、“ヴィーガン”や“ローフード”といったワードも聞いたことがあるかもしれない。それらの食事法はヘルシーなイメージで世間に浸透し、オーガニック志向の女子たちに受け入れられているように思えるが、悲惨な目に遭った実践者もいるという――。

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地方の某ゲストハウスで提供されているマクロビ・ランチ。これで2000円は高いのか安いのか……。

 2000年代半ば頃からメディアで取り上げられるようになったマクロビオティック(通称マクロビ)という食事法。オーガニック/ナチュラル・フードへの関心が高まるなか、今やマクロビを実践する人は少なくなく、それとは別の食事法であるヴィーガンやローフードといった言葉も耳にするようになった。だが、これらについて馴染みのない読者もいるだろう。そこで、まずは各特徴を簡単に整理しよう。

 マクロビの基本は、すべては陰と陽に分けられるという東洋的な考え方にある。主に陽性は「動きのあるもの、熱いもの」のことで、陰性は「冷たくて、水分の多いもの」に分類される。より平たくいえば、人間(や動物)は陽の属性を持ち、陰性の植物を摂ることで心身のバランスが取れる(中庸になる)ということ。これに基づき、肉や卵、牛乳などの動物性タンパク質は摂らず、穀物や根菜、豆類などを主に摂取する。

 また、ヴィーガンは肉や魚、乳製品や卵を食べないという点ではマクロビと同じだが、健康のためというよりも、「動物を殺して食べるのはダメ」という主義によるもの。さらにローフードは、加熱で失われる酵素やビタミンを効率よく摂るべく、食材を生の状態で極力摂取しようというものだ。

 これらは舶来モノと思いがちだが、マクロビに関しては日本発祥といわれる。明治時代の医師で玄米・食養の元祖である石塚左玄の理論をベースに、思想家・食文化研究家の桜沢如一が「玄米菜食」という自然に即した食事法を体系化し、提唱したことで始まったとされているのだ。

 その後、桜沢の弟子である久司道夫らの普及活動により、1950年代以降、アメリカを中心に海外にも広まり、いつしかハリウッド・セレブも実践する食事法に。日本で2000年代にブームとなったマクロビは、要するにそれが逆輸入されたものなのだ。

体重激減に無月経 マクロビの”副作用”

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マクロビの提唱者といわれる桜沢如一の著書『新食養療法』(日本CI協会)と、彼の弟子である久司道夫の著書『顔でもわかる健康チェック:クシマクロビオティック望診法』(日貿出版社)。

 こうして日本で周知されるようになったマクロビには、ヘルシーなイメージがあるだろう。だが、実態はそうでもないようだ。かつてマクロビを実践し、現在は「出張料理教室めざめ」を主宰する坂本ゆい氏はこう語る。

「雑誌で取り上げられるようになった時期に、アトピーが治ったという友だちの影響で始め、マクロビ教室にも通いました。いざ始めてみると、みるみる体重が減りましたね。さらに、3カ月目くらいで生理が止まってしまいました」

 東京にある松井病院食養内科部長の長岡由憲氏も、こう話す。

「マクロビをやりながら、全身性の筋肉痛と関節痛に悩む患者さんを診たことがあります。マクロビの塩分の多い食事が原因でしょう。また、マクロビをしているお母さんが、元気のないアトピー性皮膚炎の赤ちゃんを連れてきたことも。これは、動物性の食品をまったく摂らなかったためだと考えられる。マクロビは厳密に行うと、こうした理由でアレルギーが進行したり、成長期の子どもは栄養障害になったり、女性は月経が止まったりすることもあります」

 しかし、前出の坂本氏は、体調が悪化していくにもかかわらず、病院にも行かず、頑なにマクロビを続けた。なぜ彼女はその食事法をやめようとしなかったのか?

「マクロビ教室の講師に相談すると、『体重が下がるのは当たり前。そのうち下げ止まって、それが適正体重になる』とか、『生理が止まるのは、体の悪い物を出しているからで、いつか来るよ』と言われました。さらに、『望診』というマクロビ指導者による診断法がありますが、『あなたの食生活が正しくないから、顔が歪んでる』と言われたんです。その頃は指導者の言葉を信じ、マクロビから解決策を見つけようと必死でした」

 実は、あのスティーブ・ジョブズも患っていたがんをマクロビで治そうとしたものの、結果的にがんが進行して亡くなったのだ(こちらの記事参照)。では、なぜマクロビにそんなハマり方をしてしまうのか? 前出の長岡氏はこう述べる。

「マクロビの実践者は、生活習慣病やアレルギー、うつなど、もともと何らかの問題を抱えている場合が多い。藁をもつかむ思いで、マクロビに飛びつくんです。たとえば、肥満の人は最初のうちは実際に痩せたりするから、効果がわかりやすく、よりハマってしまう。私も若い頃、すべてを陰陽で説明してしまう桜沢如一のもっともらしい理論に感動し、実際に玄米食を実践して体調が良くなった経験も。松井病院の食養内科を創設した故・日野厚医学博士も同様の経験をしたものの、そのうちマクロビによって逆に健康を害し、生態学的栄養学を提唱しました。それに基づき私は患者を治療していますが、マクロビで不健康になった患者を診ていると、桜沢の食療法は栄養の偏ったものであると実感します」

 坂本氏も自らのうつ症状を治すためにマクロビを始めたひとりだが、最終的には先述の「望診」に疑問を抱き、脱マクロビを決意。ところが、マクロビをやめるときも負担が大きかったという。

「マクロビ開始前の食事は体が受けつけなくなっているんです。それから、マクロビでは少食を勧めるので、意識的に食べる量を抑えていました。むしろ、ランナーズハイみたいに、食べないのが心地よいくらい。でも、ずっとあまり食べないでいると内臓は弱るもので、少し食べただけで具合が悪くなったことも。また、お肉を食べようとすると、どこからかマクロビ教室の講師の説教臭い声が聞こえてくるんです。マクロビ脳から脱するには、時間がかかりました」

マズい・高い・遅い マクロビ料理の現実

 そんなマクロビは、果たして今もトレンドなのか? グルメ雑誌のライターはこう話す。

「今は下火になっていますね。グルメ雑誌でも、マクロビの特集はなかなか組めません。その理由は、まずマクロビ料理は味気ない。ハンバーグやお菓子のような子どもがおいしいと思える料理に入っている糖分や脂質が少ないし、旨味成分は昆布やシイタケからしか摂れない。お魚の出汁も使ってはいけません。それに、マクロビ用の食材や調味料は専門店で揃えるのが一般的で、通常のものより高くつく。だから、経済的にも心理的にも、家族全員がマクロビ料理を継続するのは厳しいでしょう」

 ところで、マクロビもヴィーガンもローフードも疎い人間には同類の食事法に見えるが、それぞれの実践者はどう棲み分けているのか? 愛知県にあるヴィーガン・カフェのシェフはこう漏らす。

「調理法に包丁の使い方、食器の洗い方……マクロビにはいろいろ厳密なルールがあるので、マクロビ料理を作っていると仕事にならない(笑)。しかも、ストイックなイメージがあって、お客さんのウケが良くないため、ウチの店はマクロビとは絶対に謳いません」

 また、東京にあるヴィーガン・カフェの店主は、「マクロビの陰陽は、個人によって違いますよね。それに合わせていちいち違う料理を提供するのはビジネス的に難しいので、ウチはヴィーガンを打ち出しています」と話す。

 とはいえ、ヴィーガンにも問題がないわけではなく、肉や乳製品を摂らないため、動物性タンパク質やカルシウムの不足を指摘する声も。このカフェの店主は「大豆の植物性タンパク質を摂ればいい」と述べるが、現段階でその主張に科学的根拠はない。またローフードについては、「欧米の食生活で不足しがちな酵素を摂るための方法なので、みそや納豆など発酵食文化のある日本人にはあまり必要がない」(前出・グルメライター)ともいわれ、生食による食中毒のリスクが一般的な食事に比べて高いことも言うまでもない。

 マクロビに話を戻そう。最近では、ネット上でもマクロビ批判は散見され、「一時期マクロビを推奨していた料理研究家も、ことさらにマクロビと口にしないようにしています」(同)とも聞く。さらに、「今年刊行され、売れている『長生きしたけりゃ肉は食べるな』(幻冬舍)は、マクロビを打ち出した本ではありませんが、著者の若杉友子さんはマクロビの指導者」(前出・坂本氏)というようなことも。

 つまり、ブームは沈静化したものの、今後もマクロビの落とし穴にハマる人が現れる可能性は否定できないのだ。それを回避する方法について、長岡氏はこう語る。

「玄米食自体は否定しませんが、マクロビを絶対的なものだと信じてはいけない。粗食で栄養失調の人が、ごちそうを食べたら元気になりますよね。でも、ごちそうばかり食べれば病気になる。その逆もしかりで、大食漢が粗食を続ければいいというのも間違い。最近は“ゆるマクロビ”なんて言葉がはやっているようですが、ああいう形で融通を利かせながらマクロビを楽しむのは大丈夫でしょう」

 マクロビもヴィーガンもローフードも、大量生産された食品を消費する現代の食生活を批判的にとらえた、オルタナティヴな食事法であることは間違いない。が、それらを大マジメに実践することも、別の意味で危ういということだ。

(取材・文/影山裕樹)

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